冬の葉山で空中戦!モスウインターレガッタ後藤浩紀レポート
12月4、5日、毎年恒例の「モス級ウインターレガッタ」が、葉山港を舞台に開催された。エントリーは13艇と少し寂しいが、東京五輪代表の岡田奎樹を始め、東は仙台、西は熊本からのエントリーもあり、10月の全日本とそれほど見劣りしない顔ぶれといって差し支えないだろう。大会初日の朝は、そんなモス乗りたちを震い上がらせる、季節外れの南西20ノットで幕を開けた。(文/日本モスクラス協会会長 後藤浩紀)
フォイリング艇は風速よりも先に波高で限界にいたる。バーティカルフォイルの長さ(およそ1m)を超える波には、ハイト(水面からの高さ)の制御が追いつかないからだ。
正午を過ぎ、予報通りに風が落ち着くタイミングを見計らって出艇した。風は西から13〜4ノット、波高2mの中で第1レースがスタート。アップウインドはまだなんとか走れるが、ダウンウインドはロデオのように激しい乗りこなしが必要になり、ほぼ全艇がギブアップしてしまった。
あの岡田奎樹ですら「何度も海面に叩きつけられて心が折れた」とコメントするほどだ。2ラップ完走できたのは1レース目が3艇、2レース目は2艇のみであり、優勝争いは早くもこのトップ2艇に絞られてしまった。
一夜明けた2日目は朝から20ノットの北東が吹き、前日とは打って変わった平水面。フォイリングに最適な極上のコンディションで5レースを敢行した。結果からいえばこの日3回のトップを取った筆者が最終レースを待たずに優勝を決めた訳だが、実際のレースは成績以上に接戦であった。
若手のホープ、行則啓太が今年最新のビーカー(NZL製)を手に入れてから、ワールドにも参戦してメキメキと腕を上げ、既に直線スピードでは誰も敵わなくなっている。
また3位争いも熾烈で、ギャラリーから歓声が湧くほどの接戦も繰り広げられた。モス歴に一日の長がある勝元一也が、20代同士の熱いバトルを制して表彰台を確保した。
2日とも強風シリーズになって艇体トラブルやアクシデントが続出してしまい、普段にも増してアルファベットが多めの大会になってしまったが、それぞれが課題や教訓を得る良い機会になったのではないだろうか。年明けの清水ミッドウインターでの再会を誓って無事閉会となった。
つくづくモスは麻薬である。この魅力に取り憑かれてから、どれだけの金と時間を費やしたか分からないが、後悔も皆無だ。それだけ奥深い楽しさがあり、この沼はいくらのめり込んでも底が見えない。身体を鍛え、道具を磨き、技術を高めて、いつか来る王座陥落の日が一日でも先に延びるように精進を続けたい。
4度目の年男を迎えてもなお、これほど夢中になれるものがあるだけで幸せなことだと思う。我こそはという若武者たちの挑戦を待っている。