Loading

日本サントロペで勝利!SailGPフランス大会を振り返る

 9月12日、フランス・サントロペで開催されたフランスSailGP最終日、きらめくサントロペの海は何千人ものファンの興奮に包まれました。新たに導入された29メートルの巨大ウィングセールを搭載したF50による戦いは、微風コンディションの海上で快心の走りを見せたネイサン・アウタリッジ率いる日本チームが大きな勝利を手にしました。(レポート/日本SailGP)

不安定な風の中でおこなわれた決勝で日本は上マーク回航後に左海面を選択。ここで風を掴んだ日本はアメリカを追い抜き、差を広げて勝利を手にしました

 日本は、新たに開発された巨大ウイングの力を最大限引き出すことに成功しました。チームを今季2勝目に導いたアウタリッジは、今回も『風の使い』というニックネームにふさわしく、変化する風を巧みに見極め、適材適所に鋭いパフォーマンスを発揮しました。

 予選上位3艇による決勝レースは、日本に続き、ジミー・スピットル率いるアメリカが2位。3位にはフィル・ロバートソン率いるスペインが入り、それぞれ表彰台を飾りました。

フランス大会で今季2勝目をあげた日本。賞金100万ドルを掛けて戦う年間優勝に向けてジャンプアップしました

ネイサン・アウタリッジ
「結局、これはシーズン最後の本番に向けての序章にすぎませんが、100万ドルの賞金がかかるグランド・ファイナル進出圏内にいることは嬉しいですね。 …それにしても、海面はとてもトリッキーでした。決勝レースでは、ジミー(スピットル)が素晴らしいスタートを見せましたが、今回も終盤、彼を抜き去ることができました。今回の勝因は、トップマーク左右のどちらを回航するかの判断でした。それでも、最後フィニッシュまで気は抜けず、かなりストレスを感じました。私たちは他のチームに比べ、新ウイングに少し慣れていると思います。私自身ではなく、クリス(ドレイパー)はデンマーク大会3日前に新ウイングのテスト走行に携わっていたので、大きくて重いという点については理解していたと思います。大きい分確かにパワフルですが、艇をフォイリングさせるのは簡単ではありませんでした」

 この結果、日本チームは、トム・スリングスビー率いるオーストラリア・チームを抜いて、リーダーボードのトップに躍り出ました。

「これまで少し浮き沈みがありましたが、今回、二度目の優勝を手にし、総合でも数ポイント差をつけの首位はとても嬉しいです。欧州ツアーを良い形で終えたいと思っているので、次のスペイン大会カディスではトップ3に入ることが今のチームの目標です」(ネイサン・アウタリッジ)

日本のネイサン・アウタリッジ(右)、クリス・ドレイパー(中)、フランチェスコ・ブルーニ

◎予選トップながらも日本に敗れたアメリカ

 アメリカは、予選レースでトップに立ち、決勝レースで有力視されていましたが、勝負所での日本の圧倒的なパフォーマンスに立ちはだかれ、2位で大会を終えました。

ジミー・スピットル
「チームにとっては、素晴らしいレースであり、素晴らしい大会でした。ダイナミックなレースで、コース上にはまるで地雷がたくさんあるかのようでした。そんなコンディションの中、素晴らしいレースをした日本に敬意を表します。決勝も不安定な風のコンディションでレースが行われましたが、だれにとっても条件は同じです。いまのところ、風の変化が激しいコンディションでは、日本が少し優位に立っているようですね。全チームの中で、クリス・ドレイパー(日本チームのウイング・トリマー)が29メートルのウイングに最も多くの時間を費やしていますが、それが日本の勝利の理由だとは思いません。彼らは純粋に他チームよりも良いセーリングをしただけだと思います。チーム全体としては、メンバーの変更やCJ(ポール・キャンベル・ジェームズ)がケガから復帰したこともあり、その中で2位を獲得できたことはとても良い結果だと思います。また、今回の大会では、骨折や物への衝突、沈没などの事故が発生しなかった初めての大会となりました(笑)。残りの大会で少しずつ結果を残し、100万ドルを目指します!」

ジミー・スピットヒル率いるアメリカは2位。デンマーク大会で骨折したポール・キャンベル・ジェームズが復帰して挑みました

◎ハルを損傷しながらもスペインが3位を獲得

 フィル・ロバートソン率いるスペインは、第5レースでイギリス艇に衝突されながらも、表彰台に立つことができました。

フィル・ロバートソン
「第5レースのスタート前、私たちはスタートラインに対し有利な位置にいました。その時、ベン(エインズリー)は、後方風下側から勢いよく進入し、強引に割り込んできました。実際そのスペースはなく、イギリス艇は私たちのボートに接触。その結果、船体後部に大きな穴が開き、重大な損傷を受けました。ちょっと残念で悔しいし理想的ではなかった。決勝進出はできたけど、レース前の限られた時間内で応急処置をし、構造的に問題ないことを確認する必要があったため、レース前の十分な準備ができませんでした。結果は3位でしたが、決勝では負けて終わったので、あまりいい気分ではありませんね。決してうまくセーリングができたわけでもありませんし、タフなレースコースでした」

 残り1カ月となった今、スペインチームは10月9~10日にアンダルシア州カディスで開催されるホームイベントを心待ちにしていることでしょう。

 ロバートソンはこう付け加えます。「今回の大きな目標のひとつは、ホームイベントであるカディスに向けて勢いをつけること、そしてその勢いを持続させ、さらに発展させることでした。今回はそれができたと思います。しっかりとしたパフォーマンスができ、チームもいいリズムをつかんでいるので、次のカディスでは、表彰台の一番上に立てるよう思いっきり攻めていきます!」

第5レースのスタートでアクシデント。イギリス艇がスペイン艇へ接触したためハルが破損しました

◎スペインとの接触で決勝進出を逃したイギリス

 第5レースのスタート前、ベン・エインズリー率いるイギリスチームによるアグレッシブな行為にたいするペナルティーにより、レースも大きく順位を落とし最終的には決勝レース進出を逃してしまいました。

ベン・エインズリー
「第4レースはまずまずの結果で、3位以内をなんとか確保していましたが、第5レースでも少し攻めていく必要がありました。スタート前、ラインに向け隙間を狙ったのですが、残念ながら狙っていたスペイン艇とデンマーク艇の間のスペースが、最後に閉じてしまい、通り抜けることができませんでした。この時、スペインと衝突し、当然ながらペナルティを受けました。これでレースを失い、3位以内に入るチャンスを失いました。とはいえ、この大会から多くのことを学んだと思います。このようなコンディションで艇を走らせ、新しい29mのウイングを使用できたことは大成功でした。決勝レースを逃し悔しいですが、カディスに向けポジティブな要素がたくさんありました。総合順位も緊迫してきましたね、非常にエキサイティングです!」

GBRチームのヘルムスマンであり、アメリカズカップではイネオス・チームUKのスキッパーを務めるベン・エインズリー。会場にはイネオス会長のジム・ラットクリフ(右)も訪れていました

◎前大会優勝のオーストラリアは最下位に

 ニュージーランドは、随所に好成績を取り、決勝戦進出にとどく勢いでした。しかし、第5レースで最下位となり、1点差で4位。惜しくも表彰台を逃してしまいました。

 デンマークは、第4レースでトラブルに見舞われながらもを完走し、第5レースでトップフィニッシュする素晴らしいパフォーマンスを見せたましたが、最終5位となりました。

 開幕戦から勝利が遠のいているイギリスは6位。スペインとの接触で4点のペナルティが課せられ、総合ランキングも2位から4位に転落しています。

 ビリー・ベッソン率いるフランスは、地元開催にも関わらず最後まで勢いに乗れず、7位に終わりました。また、2大会連続で優勝し、ハットトリックを狙っていたトム・スリングスビー率いるオーストラリアは、意外にも今大会最下位となりました。

 SailGP第6戦は、10月9~10日にスペインのカディス・アンダルシアで開催されます。これが欧州ツアーの最終戦となり、第7戦、12月17~18日に開催されるシドニー大会で2021年を締めくくります。

SailGPシーズン2 総合成績(第5戦まで)

◎SailGP シーズン2スケジュール
第1戦 4月24、25日 バミューダ
第2戦 6月5、6日 ターラント・イタリア
第3戦 7月17、18日 プリマス・イギリス
第4戦 8月20、21日 オーフス・デンマーク
第5戦 9月11、12日 サントロペ・フランス
第6戦 10月9、10日 カディス・スペイン
第7戦 12月17、18日 オーストラリア・シドニー
第8戦 2022年1月29、30日 クライストチャーチ・ニュージーランド
第9戦 2022年3月26、27日 サンフランシスコ・アメリカ

CATEGORY:  FOILINGINSHORENEWSSailGP
TAG: