白石康次郎、DMG MORIセーリングチームが日本で動き出した
世界一周ヴァンデ・グローブを完走した白石康次郎さんのIMOCA60 〈DMG Mori Global One〉が日本へやってきました。日本へ運ばれた船は横須賀市浦賀で組み立てられ、ただいま日本の海をセーリングしています。バルクヘッド編集長が、セールトレーニングしているDMG MORIセーリングチームを訪ねました。(BHM編集部)
編集長が〈DMG Mori Global One〉を見学するのは2度目になります。以前、フランス・ロリアンのチームベースを訪ねた際、進水したばかりの船を見せてもらったことがあります。
今回、横須賀で船をみて驚いたのは「年季が入ったなぁ。。。」ということ。マストやブーム、デッキの傷が長旅を物語っているし、ドジャーカバーなどところどころ雨風にさらされて色あせています。
そう話すと「そりゃ、世界一周してるからね。あの時は新艇だったんだから!」と白石さん。それでも、ハルやロゴはきれいに磨かれ、ウインチやハリヤードなど可動ギアはしっかりメンテされているのがわかります。
〈DMG Mori Global One〉は、サポートボート(RIB)が手伝いながら岸壁を離れて東京湾へ。この船のいちばんの問題は出入港です。左右にのびるフォイル/水中翼があるため、通常のセーリングクルーザーのようにさん橋に簡単につけるというわけにはいきません。
また、エンジンが小型のため機走は3〜5ノットほどしかスピードがでません。小回りも効きにくく、RIBのサポートがないと出入港はむずかしいのです。こうした不便さをみても、この船がファンセーリングを目的としない、世界一周レース専用マシンであることが分かります。
〈DMG Mori Global One〉のメインセールをあげるまで約30分。シングルハンド仕様になっているとはいえ、60フィートの巨大なセールをセットするには時間がかかります。これを大西洋の真ん中でひとりで修理までしたとは信じられません。
〈DMG Mori Global One〉は、メインセールにA3ジェネカーをあげて浦賀から城ヶ島方面へ。風は弱く、フォイルを差し込む(艇速10ノット以上)に至りませんが、それでも軽風でパワフルに快走していくさまが伝わってきます。その後、セールチェンジを繰り返しトレーニングが進んでいきました。
◎動き出したDMG MORIセーリングチームの新プロジェクト
今年3月、白石康次郎さんは3度目となるヴァンデ・グローブ挑戦、自身5度目となる世界一周挑戦を発表しました。それと同時にDMG MORIセーリングチームによる日本でのセーリング文化普及、若手スキッパー、エンジニアの育成などあたらしいプロジェクトも動き出しています。
今回、日本に到着した〈DMG Mori Global One〉は、芦屋、西宮、名古屋などいくつかの港への寄港、横浜フローティングヨットショーでの展示などが予定され、今秋ふたたびフランスへ戻る計画です。
IMOCA60を日本で見るチャンスはそうあるものではありません。秋までの滞在期間に見学する機会があれば、ぜひ〈DMG Mori Global One〉を訪ねてみてください。
また、若手スキッパー、エンジニアの育成も注目されます。現在、DMG MORIセーリングチームでは3艇のミニ6.5を準備しています。ミニ6.5はシングルハンド外洋ヨットレースの登竜門「ミニトランザット」で使用される全長6.5メートルの外洋専門の小型セールボートで、2019年大会で鈴木晶友(MILAI)が日本人2人目となる完走を果たしたことで話題になりました。
チームでは2艇の新型プロトタイプを建造中で、そのうち1艇を三瓶 笙暉古(フェデリコ)が乗り、もう1艇をヨーロッパ選手(選手未決定)が乗艇します。DMG MORIセーリングチームの三瓶選手は白石さんの世界一周をバックアップしてきた日本人チームのひとりで、フランスに在住して船の建造から関わってきました。
また3艇のうち1艇は中古艇(ミニ6.5)を購入し、近々葉山を拠点に活動を開始する予定。ミニに乗りたい、レースに挑戦したいという若者に向けて開放し、日本でシングルハンドや外洋ヨットレースについて学ぶことができます。
DMG MORIセーリングチームではあえて希望者を募集していませんが、興味のある方は積極的にチームの門を叩いてみるのも良いでしょう。DMG MORIセーリングチームは、これまで以上に日本のニュースを賑わせてくれそうです。
- 次回スタートは2024年11月。世界一周ヴァンデ・グローブ表彰式https://bulkhead.jp/2021/05/82946/
- 世界一周ヴァンデ・グローブ完走。白石康次郎インタビュー(1)https://bulkhead.jp/2021/03/81730/