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世界初!15歳以下限定の国際バーチャルレガッタに約200人参加

 世界でコロナによる混乱が続いています。ヨットレースも同様にそれぞれの国で規制があり、特に国外の選手を受け入れる国際大会を開催するには高いハードルがあります。そのなかで注目が集まっているのは、バルクヘッドマガジンでも積極的に紹介しているe-sailing(バーチャルレガッタ)です。(BHM編集部)

Vianney Bourrut Lacouture選手(香港)のコメント。「世界の多くの都市でロックダウンしている中、大会が開催されてとてもうれしい。レースがキャンセルされても海外の選手たちと再会できるから。バーチャルレガッタはコースの選び方や風の変化の対処法を学ぶことができます」

 3月5〜16日まで開催されるオプティミスト級の「オプティ・オレンジ・バレンシア」は、バーチャルレガッタを使用した新しい試みで開催中止を乗り切ろうとしています。この大会は世界で初めておこなわれるジュニアセーラーに限定した仮想ヨットレースです。

 2018年にはじまった「オプティ・オレンジ・バレンシア」は、バレンシアヨットクラブ(スペイン)とサンクトペテルブルク・ヨットクラブ(ロシア)の共催でおこなわれているオプティミスト級のレースイベント。これまで3大会が開催され、前大会は27カ国/345選手が集まりました。

 しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で開催が困難なこともあり大会は中止(同時期にスペインで開催予定だったプリンセスソフィア杯は10月に延期されました)と思いきや、15歳以下のオプティセーラーを集めてバーチャルで競うことになりました。

 大会の趣旨は、可能な限り条件で戦略、戦術を駆使しておこなわれるバーチャルレガッタを用いてセーリングシーズン前のトレーニングを兼ねるというもの。国際大会から離れてしまっている選手は、ヨットレースの興奮と競争心を感じることができます。

 このヨットレースの運営方法は非常に興味深いものです。エントリー費は無料。賞品はプレステ5など子どもたちが喜びそうなものを揃えて参加を呼びかけたところ、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど世界30カ国から183選手が集まりました。

 主なレースフォーマットやバーチャル特有の取り決めは次のとおりです。
・艇種はレーザー級(バーチャルレガッタにオプティミスト級がないため)
・予選、準々決勝、準決勝、決勝方式
・スタートの待ち時間は2分、1レース10分程度、終了後3分で次レース開始
・選手は10のグループに振り分けられ、予選(5レース)を実施
・グループ間の連絡はアプリ(WhatsApp = 欧米で一般的なLINEのようなコミュニケーションアプリ)を使用
・選手数の約50%が次の上位戦へ進出
・決勝(10レース)は18人でおこなわれる
・選手交代は禁止(最終レースはZoomを使用)

予選グループは時差を考慮して分けられました。欧州以外だとアジア、オセアニア、中東諸国、ロシア(一部)で1グールプ、アメリカ、アルゼンチン、カナダ、イギリスが同じグループです

 大会はちょうど現在期間中のため、成功するのか、また不具合があるのかとても興味深く注目しています。編集長がおもしろさを感じているのはオンラインによるバーチャルレガッタなのに所々にアナログを感じるところです。

 エントリーフォームは、通常のヨットレースと同じように所蔵ヨットクラブ、OP級セール番号を記入する項目があったり、グループ分けやスケジュールをPDFで公式に発表したり、”実際のヨットレース感”を損なわないように手間を掛けています。

 バーチャルレガッタによる大会は今後増えてくるでしょう。先日、中止が発表された「フランス・オリンピック・ウィーク」でも予定されていた期間にバーチャルレガッタによるイベントを開催すると発表しているし、6月に日本で開催される「ワールド・イズ・ワン・江の島セーリングカップ」でもエキシビション種目に採用されています。

 いまのヨットレースは、新型コロナウイルスのために参加できる選手とできない選手がいます。それを仕方ないと考えるか、参加できない選手のために何かしてあげられることはないかと考えた場合、e-sailing(バーチャルレガッタ)は良いアイデアだと思います。これからのセーリングは、リアルとバーチャルのヨットレースが協力し合いながら発展していくのではないでしょうか。

オプティ・オレンジ・バレンシアのレースフォーマット
レーススケジュール。予選、準々決勝、準決勝、決勝ともに5レースおこなわれます
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