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江の島の北風神経戦。2020ファイアーボール全日本選手権

 10月31日、11月1日に江の島で「ファイアーボール級全日本選手権」が開催されました。オリンピック開催に伴う艇の移動、また、新型コロナ禍によって選手たちは万全の準備をもってとはいかないものの、5艇の参加艇により開催されました。(レポート・写真提供/日本ファイアーボール協会)

江の島で開催された2020ファイアーボール級全日本選手権。2日間で6レース実施されました

 江の島で開催されたファイアーボール級全日本選手権は、初日、2日目ともに北風の強烈なシフトに悩まされながらも、全6レース行われました。

 第1レース、全日本選手権最多優勝を誇る石井/伊藤が第1上マークからトップ回航。さすがに地力を見せつけます。しかし、すぐ後ろから昨年購入したボートにて参戦の古川/増田、そして、加藤/鶴本が続きます。

 海外転勤から晴れて帰国し再び江の島の海に戻ってきたヘルムスマン加藤氏は4年のブランクを感じさせないさすがの走りを見せます。フリーで古川/増田を抜き、石井/伊藤を懸命に追いかけます。

「4年ぶりの全日本選手権で、出艇前は楽しく走れればと考えていたが、始まってみると勝ちたくなった」と語った通り、終始高いテンションでクルーを鼓舞する、4年前となんら変わらない姿を見せてくれます。

 しかし、石井/伊藤は急ごしらえのコンビにはない熟練の走りを見せ、このレースをトップでフィニッシュします。2位に加藤/鶴本、3位に古川/伊藤と続きます。

 続いて、第2レースは目の前でトップフィニッシュを見せつけられた加藤/鶴本がトップフィニッシュ。3レース目は再び石井/伊藤がトップを奪還。2位に加藤/鶴本。3位には古川/増田となり1日目を終えます。

 大きな振れを伴った4メートルから6メートルぐらいの順風が北から吹き続け、ファイアーボールにとって、特にクルーにとっては身体的な負荷が非常に高いコンディションだったため、「この1年分の運動を1日でした」、など着艇後の選手たちは疲労困憊のようでした。

 2日後はあいにくの微風予報。運営はまだ北寄りの風が残っている中で今日の予定3レースを消化できるよう着々と準備を進めます。

 第4レースは、石井/伊藤を抑えようと躍起の加藤/鶴本は痛恨のスタートミス。石井/伊藤もリコール解消に戻ることになり、大きく出遅れます。

 時折、全体的に大きく右に振れる風の中で、それをケアした多くの艇が右海面でレースを進める中、順位挽回のために左海面を選択するには大きなリスクも伴う展開。第1上マークをトップで回航したのは本日のみの参加となった中野/安藤。石井/伊藤、加藤/鶴本と続きます。

 フィニッシュに近づき、風はギリギリのレベルまで落ちていきますが、20度以上左右へ振れる風の中でも上りレグ、フリーレグと強さを見せた石井/伊藤がトップフィニッシュ。2位には中野/安藤。3位には古川/増田が入り、加藤/鶴本は4位と、かなり厳しい状況に立たされます。

 第5レース、後がない加藤/鶴本はアウター有利のライン設定に対して、大胆にポートスタートを選択。右海面で勝負を進めます。石井/伊藤はリコール解消のためにスタート後一度ラインまで戻ります。

 その後は、中央寄りにコースを展開する石井/伊藤、右海面を突き進む加藤/鶴本、左海面で展開する中野/安藤と三様に分かれますが、第1上マークはほぼ同じタイミングで回航。クローズホールドのボートスピードに勝る石井/伊藤が盤石な展開を再度作ります。

 最終的には、トップに石井/伊藤、最後のフリーレグで加藤/鶴本を抜いた古川/増田が22位でフィニッシュ。

 そして、この段階でさらに風が落ち、運営はしばらく風を待つこととなり、第6レースを延期。そのまま、風速があがることは期待できず、敢え無くレース終了を宣言。優勝は石井/伊藤となりました。

 最終的には全5レースの内4レースを1位、1レースを2位で固めた石井/伊藤が優勝。「初日の夜は19時には寝てしまった」とクルー伊藤が振り返るように、疲労困憊ながらもタフな2日間を制しました。準優勝は加藤/鶴本。

 第3位には古川/増田。470で学生時代を過ごしたクルー増田は、「2日目にはほとんど疲れは残っていなかった」と若さと体力から今後が期待されます。

 表彰式の後の恒例の打ち上げはコロナ禍のためリモートでの実施。疲労困憊の体をさすりながら、最高の酒の肴と共にディスプレイ越しに席を囲み、2日間に幕を閉じました。

2020ファイアーボール級全日本選手権成績
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