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学生のためのオリンピック。フランス「大学セーリング世界選手権」に参加して

 9月1日から5日にかけてフランスのシェルブールで「World University Sailing Championship 2018」(大学セーリング世界選手権)が開催され、九州大学ヨット部OBで構成されるConneryチームの5人が、日本代表として出場しました。(レポート・写真提供/牧野碧依)


Conneryチーム。左から、髙﨑神風(ヘッドセール)、牧野碧依(ヘルム)、冨田大貴(ピット)、森俊介(バウ)、髙山達矢(タクティシャン)

 わたしたちは2018年3月に行われた「U25&大学対抗マッチレース」で優勝したことをきっかけに本大会へ出場する機会を得ました。大学世界選手権はFISU(国際大学スポーツ連盟)主催の国際大会で、全世界の学生たちが集まり、一般に「学生のためのオリンピック」と呼ばれています。

 本大会ではヨーロッパやアジア・オセアニアの地域を中心に10カ国、合計19チームが出場しました。いずれの参加者も多くの国際大会参加の経験を持つ力のあるセーラーばかりで、非常にレベルの高い戦いが繰り広げられました。

 2年前、4年前のFISU主催の同大会ではマッチレースが採用されていましたが、本大会はJ/80を用いたフリートレースが採用されました。1レース25分ほどのターゲットタイムで、上下2周のレースが毎日テンポよく行われ、予選シリーズでは合計21レース、決勝シリーズでは8レースが行われました。


ポンツーンには本大会に向けて用意されたJ/80が15艇ほど並び、その光景は圧巻でした。毎朝のブリーフィングでの船のドロー(抽選)に従って、船を乗り換えながらレースしました

 2018年大学セーリング世界選手権の最終結果は以下の通りです。
1. AUS GRIMES Thomas
2. FRA LETOUZE Pierrick
3. FRA BONAFOUS Elodie
4. JPN MAKINO Aoi
5. NED VAN BEEK Jelmer
6. AUS PIETRO-LOW Ethan
7. CHN ZHOU Chuancheng
8. SIN YEO Jonathan
9. ESP BASADRE LOPEZ Alberto
10. FRA BOUCHET Nicolas
11. NED BOS Kim
12. ITA GRAZZI Sebastiano
13. FRA RIOU Margot
14. ESP LORENZO ROMAN Jorge
15. SIN LIM Jian Yang Edwar
16. AUT PUXKANDL Matthias
17. KOR LEE Na Kyung
18. SIN GOH Kailing Jessica
19. KOR KIM Dongmin

World University Sailing Championship 2018
http://www.wuc-sailing2018.com/index.php/en/


レース中の日本代表チーム。photo by eventmedia

U25&大学対抗マッチレースがターニングポイント。
インカレからキールボート、マッチレースの世界へ

 わたしたちは予選シリーズを7位で通過してゴールドフリートに残り、決勝シリーズを経て4位という結果に終わりました。あとひとつでメダルという悔しい結果に終わりましたが、毎日チームの成長を感じる良いレガッタになりました。

 現役時代、インカレに向けて470級やスナイプ級に乗り、引退後はJ/24に乗ったりマッチレースに参戦したりして活動していましたが、やはり他国のチームと比べるとキールボートのフリートレースの経験は浅く、スタートの技術不足や、僕たちが正解だと信じていたタクティクスではずるずると順位を落としてしまう、という事態に直面しました。

 本大会で最も学んだことは、「ヨットの基本は全艇種において同じであるけれども、艇種が変わると戦い方は大きく異なる」ということです。

 インカレを目指して活動していたわたしたちは「他艇との不毛な争いを避ける」とか、「上マークレイラインでスターボードの列にミートしたらケースとブランケを避けるためにきちんとdipして(避けて)入る」などといったことを信じていましたが、実際にこれらを忠実にキールボートの世界で実行すると順位は悪くなりました。

 わたしたちはレースでの失敗の中から、「深いdipをするとかなりの高さを失うこと」や、「相手がされて困ることをすることの大事さ」、「上げ潮や惰性があるから、ルールの範囲内であれば多少ブランケだとしてもレイライン際でスターボード艇に下受けタックを打っても大丈夫」などといった数多くの発見をし、それを実行すると実際にどんどん順位が安定していきました。

 また、スタートではファーストタックのためにしっかりと上艇の下のルームを奪ってから出ることが大事でした。これには20秒〜10秒の振る舞いがとても大事で、マッチレースの経験がとてもよく活きました。しかし、その経験を実際のフリートレースに結び付けるのに少し時間がかかりました。

 本大会を通じて、私はヨットの力をつける上で、多くの艇種に乗ることはとても重要であると確信しました。またマッチレースはヨットの上達に必要な要素を多く含んでいることを再確認しました。

 「U25&大学対抗マッチレース」は学生セーラーにとって大きなターニングポイントになると思います。ヨットが好きなら出場するべきです。

 わたしたちはこの大会をきっかけにキールボートの魅力に取りつかれて、活動を続け、今回この舞台に立つことができました。一度キールボートに乗り、マッチレースに出るとヨットの世界がまだまだ広いことに気付くと思います。(わたしたちも、まだまだ勉強が必要ですが・・・)

 最後に、本大会出場にあたりJSAF、JYMAの皆様をはじめ、本当に多くの方々にご協賛、ご協力をいただきました。また大会期間中、多くの方にご声援をいただきました。みなさまのおかげでわたしたちは活動をすることができました。心よりお礼申し上げます。

 わたしたちはこれからもセーリング競技を続けていきます。本大会に出場して、またこのような国際大会に出場したいという思いが強くなりました。これからも応援していただければ幸いです。この度は誠にありがとうございました。


閉会式前の選手たち


2018大学セーリング世界選手権 ダイジェスト映像


2018大学セーリング世界選手権 最終成績

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