東北大学医学部、3年ぶりの団体優勝!第60回東医体ヨット競技
8月2〜6日、江の島ヨットハーバーで「第60回東日本医科学生総合体育大会・ヨット競技」が開催されました。(レポート・写真提供/樋口遥水)
江の島で開催された東医体。医学部ヨット部の活動の集大成となるビッグイベントです
東日本医科学生総合体育大会・通称「東医体(とういたい)」とは、東日本の大学に所属する医学生がそれぞれの所属する運動部の競技で競い合う、いわば「医学生のインカレ」です。東医体は今年で60周年を迎える歴史の長い大会で、現在では37大学、15000人以上の医学生が参加。一般にはあまり知られていませんが、参加人数でみると国内では国民体育大会に次ぐ、非常に規模の大きい体育大会なのです。
23ある東医体競技種目のうちほとんどが夏季競技として毎年8月上旬に開催されますが、ヨット競技もその1つ。ヨット競技は3年前に葉山で開催されたことを除いて、江の島で開催されるのが通例となっています。
レガッタは470級で争われ、女子戦(1日・最大2レース)と本戦(3日間・最大8レース)という2つのシリーズがあります。レースはトライアングルコースで、上-サイド-下-上-下-上と、アップウィンドレグが3回もあるのが特徴。この大会を最後に現役引退という選手も多く、大会期間中の江の島には各校のOB・OGを始めとする応援の人々が集まってとても賑やかになります。
今回、新しい試みとして東医体ヨット競技のSNSページをつくり、大会に関する情報やレース速報、ライブ動画の発信を行いました。投稿した多くの動画は録画されていますので以下のページからご覧になれます。
第60回東医体ヨット競技
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Twitter:https://twitter.com/touitai470
東医体女子戦
大会期間初日である8月2日は東医体プレレース。選手・レース運営の練習として1レースのみ行うという位置づけのこの日は、風速平均5m/s、最大7m/sで風軸も比較的安定してレースに最適なコンディション。選手・運営ともに、本番直前の良い調整日となりました。
明日からの本番に備えた運営ミーティング。レース委員会艇には各校の6年生が「親」として乗ってレース運営にあたり、「子供」として乗る下級生が手伝います
翌日の8月3日は東医体ヨット競技開会式が行われた後、引き続いて女子戦の2レースが行われました。女子戦はヘルムスパーソンが女子の艇のみが参加できる艇対抗の個人戦で、今年は全18艇が参加。本戦のレースメンバーでもある選手から何回かティラーを握っただけの初級者まで、幅広いレベルの選手が参加するのが女子戦ならではです。
朝から北〜北東の良い風が吹き、第1レースは定刻通り10時30分にスタート。風向20度、5〜6m/sの風の中、1上からトップに立った太田/久保(横市)がリードを守り切ってトップフィニッシュ。同じく横市の中村/廣江は1上7位回航から徐々に順位を上げ、最後は3位でフィニッシュしました。
風は次第に弱くなりながら右へシフトし、第2レースは13時に風向80度、風速3〜4m/sでスタート。風の右振れと、右海面から左海面へ流れる潮流の影響があり、サイドマーク〜下マークのリーチングレグを上り切れない艇が続出しました。
1上を3位で回航した中村/廣江は、またも順位を上げてこのレーストップフィニッシュ。このレースを3位でフィニッシュした太田/久保と合計で同点となり、RRS付則A8に基づいて最終レースで前を走った中村/廣江が女子戦金メダル、太田/久保が銀メダル獲得。女子戦では横市がワンツーを決める結果になりました。銅メダルは第1レース4位・第2レース2位と4年生スキッパーながら安定した走りを見せた四釜/松野(東北)でした。
東医体、本戦がはじまる
8月4日からは、いよいよ3日間に渡る東医体ヨット競技・本戦の開幕です。本戦は個人戦の表彰もありますが、メインは大学対抗の団体戦です。各大学から最大3艇までのエントリーで、「レースごとに大学の上位2艇の得点を合計したものが大学のレース得点となる」という、特殊な得点方式を採用しています。
初日は北〜北東の順風の中で出艇。太平洋上の台風の影響で南からの大きなうねりがあり、艇のバランスを取るのが非常に難しいコンディションでした。
第1レースは10時15分にマーク軸25度でスタート。1上マークでは春原/宮本(東邦)がトップ回航、漆原/種村(東邦)が6位回航と良い出だしを見せましたが、その後1下までに後続の乙竹/川西(東北)、小森/坂本(東北)が順位を上げて東北がワンツーの位置に。東邦はその後徐々に順位を落としてしまいました。慈恵の岸本/塚原、小野/中村は1上3位・4位と良い位置につけ、その後も順位をほぼキープしました。
第1レース1上をトップ回航する春原/宮本(東邦)、続く乙竹/川西(東北)
1上を並んで3位・4位回航する慈恵の岸本/塚原、小野/中村。慈恵の黄色いスピンが並んで上がりました
2上レグ〜2下レグでは、それまで8位につけていた生嶋/辻本(千葉)が大きくジャンプアップ。特にランニングレグでは左海面に大きく出ることで東北2艇を抜き、2下トップ回航を果たします。しかし最終3上レグでは東北2艇が抜き返し、最後はワンツーフィニッシュ。生嶋/辻本は3位フィニッシュと非常にドラマティックなレースとなりました。
第1レース終了後、次のスタートシークエンスを始めようとしたところで風速が2m/s以下となってしまい、レースはしばらく延期に。一旦帰着しても再出艇に時間がかかるため14時まで海上で風待ちをすることになりましたが、待てど暮らせど海面は鏡のまま。結局2時間待った甲斐もなく、14時にAP+A掲揚となりました。暑い中の風待ちで選手・運営ともに体力気力を消耗した本戦初日は東北が暫定トップに。次に千葉、慈恵が続きます。
本戦2日目は、前日1レースしか行えなかったことを受けて最大レース数を増やし、短時間の風待ちの後にそよそよ吹いてきた南風の中で出艇。1日通して微軽風コンディションでしたが風軸は安定しており、使える風を全て使って何とか4レースを消化。第5レースでは途中風が落ちてレース継続が危うくなったため、2上マークでS旗掲揚しコースが短縮された場面もありました。
初日トップの東北は、2日目でさらにリードを広げて単独首位に。第3レース、第5レースでチーム内の1艇がリコールしてしまいますが、他の2艇がしっかりと前を走ってカバーし、団体得点で他大学を寄せ付けません。2日目終了時点で個人戦暫定1位、2位、3位を東北が独占するという圧倒的な速さを見せ、この時点で団体金メダルをほぼ確実としました。
千葉は第3レースでの遠藤/榎並、西川/篠原ワンツーフィニッシュなど随所で見せ場を作り、暫定2位。1上から順位を上げてフィニッシュする展開を多く見せて暫定3位に立った横市と、点差は13ポイントです。初日2位の慈恵は、微軽風コンディションで中位艇団から抜け出せずにこの日大きく順位を落としてしまいました。そして暫定4位の筑波と5位の東邦との間の点差は、この時点で僅か1ポイント。団体順位争いは最終日に持ち越されることになりました。
毎朝のスキッパーズミーティング。レース内容についての連絡はもちろん、熱中症防止のための呼び掛けも
そして迎えた本戦最終日。泣いても笑ってもこれが最後、短時間の風待ちの後に入ってきた良い南風の中、出艇する選手たちを送り出すスロープからの応援の声にも力が入ります。また、レース海面にはOBや応援の人々を満載した各校の観覧艇が数多く集結。青い海、青い空に入道雲が遠くにそびえ、これ以上ない最高の天気となった最終日は、180〜190度、3〜5m/sの風で3レースを実施しました。
各校の部旗を掲げた観覧艇(左下)からは、自大学のスピンが揚がるとOBの歓声が聞こえてきます
単独首位の東北は、最終日もまとまった走りを崩しませんでした。最終日トップフィニッシュはなかったものの、3艇ともスタート技術とスピードを生かした堅実なスコアリング。最終的に団体レース得点を全て10ポイント以下に抑える走りで他大学を圧倒、3年ぶりの団体優勝を手にしました。
以下の順位も前日から変わらず、千葉が団体銀、横市が団体銅を獲得。また団体4位は僅かな点差を守り切った筑波。東邦は惜しくも団体5位となりました。
最終日、注目が集まったのは個人戦上位の順位です。2日目終了時点で1位、2位、3位を東北が独占していましたが、4位につけていた遠藤/榎並・八木(千葉)が最終日初めの2レースで1-3と怒涛の追い上げを見せ、最終レースを前にして個人戦1〜4位が数ポイント差の中にひしめき合う展開に。団体優勝がほぼ確実な東北としては、チーム内で個人戦メダルを争うことになりました。
最終レースを終え、個人戦はシリーズ通して素晴らしい安定感を見せ最終レースもしっかりと3位を走った乙竹/川西(東北)が金メダル。最終レースでトップフィニッシュを決めた遠藤/榎並・八木(千葉)が逆転銀メダルを獲得。銅メダルは小森/坂本と川名/奥田(東北)、4位は佐藤/松前(東北)となりましたが、その差は僅か1ポイントでした。5位入賞は第7レースでトップフィニッシュした、女子戦銀メダルの太田/久保(横市)。また最終日にスコアを伸ばした西尾/鈴木(筑波)が6位入賞となりました。
乙竹/川西(東北)。トップフィニッシュは1回でしたが常に崩さない走りで、乙竹は4年生での優勝という快挙
今年度は東医体60周年記念大会として、団体戦のメダルは特別デザイン
表彰式、団体金の東北大学医学部。葉山開催だった3年前以来、2度目の優勝
毎年開催される東医体ヨット競技ですが、今年もけが人や事故なく無事に終えることができました。本戦初日に1レースしか行えなかったことで不安もありましたが、最終的には予定の8レースを全て消化することができレース委員会としてもほっとしました。東医体ヨット競技は学生が運営するということもあって、多方面の方々のご協力なくしては成立し得ない大会です。
近年はヨット部員が減少している大学が多く、特に今年は本戦参加校10校・全28艇と例年よりも参加人数が減ってしまったことが少し残念でした。それでも、レースではレベルの高い上位争いが繰り広げられ、大会期間には大勢の人々が江の島に集まったことをとてもうれしく思います。来年以降も、各校ともより参加者数が増え、そしてより高いレベルを目指して練習に励んで、東医体ヨット競技がこれまで以上に盛り上がって続いていくことを願っています。
江の島は、2020東京オリンピック・セーリング競技の開催予定地。素晴らしい環境をありがとうございました
第60回東日本医科学生総合体育大会ヨット競技 最終成績
女子戦
1. 中村/廣江(横市)3+3/4 pt
2. 太田/久保(横市)3+3/4 pt
3. 四釜/松野(東北)6 pt
本戦(団体戦)
1. 東北大学医学部 35+1/4 pt
2. 千葉大学医学部 65+1/4 pt
3. 横浜市立大学医学部 95+1/2 pt
4. 筑波大学医学群 144 pt
5. 東邦大学医学部 146 pt
6. 日本医科大学 171 pt
本戦(個人戦)
1. 乙竹/川西(東北)22+3/4 pt
2. 遠藤/榎並・八木(千葉)23+1/4 pt
3. 小森/坂本、川名/奥田(東北)23+3/4 pt
4. 佐藤/松前(東北)24+3/4 pt
5. 太田/久保(横市)48+3/4 pt
6. 西尾/鈴木(筑波)52 pt
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