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【コラム】レースフォーマットの改革が進むオリンピックセーリング

 5月5〜13日までの同時期、地中海沿岸で3クラスのヨーロッパ選手権が開催されました。RS:X級、フィン級の開催地は、フランス・マルセイユ、470はフランスとイタリアの間にあるモナコです。これは4月後半にフランスで開催されたワールドカップ・イエールから続けて遠征するのに都合良いスケジュールで、移動しやすく陸でつながるヨーロッパの利点をいかした開催となりました。(BHM編集部)

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マルセイユで開催されたRS:X級ヨーロッパ選手権。強風ミストラルから微風までのコンディションでおこなわれました。レースレポートはJSAFオリンピック強化委員会サイトに掲載されています。photo by Robert Hajduk / Shuttersail.com

 今年3月にスペインで開催された「プリンセスソフィア杯」でバルクヘッドマガジンがレポートしましたが、いま五輪種目は、レースフォーマットの改革がはじまっています。選手やコーチから出たアイデアをフォーマットに取り入れ、試行錯誤している状態で、正式決定すればワールドカップや各種目の世界選手権、その先には東京五輪でも考えられます。

 RS:X級ヨーロッパ選手権では、非常に興味深いフォーマットがアナウンスされました。まず「本大会でマラソンはおこなわない」と発表され(RS:Xクラスではシリーズにディスタンスレースを組み込むアイデアもあります)、予選、準々決勝、敗者復活戦、準決勝、決勝といったレースフォーマットでおこなわれました。

 第三者から見るとレースフォーマットは複雑に見え、図を参考にしてようやく理解できます。また、コースにも既存のオリンピックコース(トラペゾイド)のほか、ダウンウインドだけのコースや、アメリカズカップのようなアビームスタートコースも付け加えられました。

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RS:X級ヨーロッパ選手権のレースフォーマット

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RS:X級ヨーロッパ選手権コース図の一例。ダウンウインド(スラローム)コースやアビームスタートも採用されました(実際に行われたのかは分かりません)

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同時期にフランス・マルセイユで開催されたフィン級ヨーロッパ選手権。photo by Robert Deaves

東京オリンピック以降、セーリングが五輪から除外される危機感

 フィン級ヨーロッパ選手権でも、かつてのメダルレースではなく、予選、準決勝、決勝方式で、準決勝に10艇進出、決勝は5艇でおこなわれました。両クラスに共通しているのは、フリートヨットレースでスタンダードとされてきた「予選からの点数の持ち越し」がないために、最終レースでトップフィニッシュした選手が金メダルを獲得する、という「シンプル」な構図になっていることです。

 みなさん、こうしたレースフォーマットをどのように感じますか? 実際に現場で見てみないと分からないことも多いので判断できないでしょうが、編集部が国際大会の現場で感じているのは、共通認識として「東京以降、セーリングが五輪種目から除外される」ことに危機感を持っていること。つまり、五輪関係者はセーリングの魅力をどうやってアピールするかを真剣に悩んでいます。

 五輪種目のなかで、ナクラ17のように艇を改造してフォイリングに変更する種目があれば、RS:Xやフィンのようにフォーマット改革に積極的なクラスがあります。49er級でも昨年のジュニアワールド等で準決勝、決勝方式でおこなったり、北京五輪以降、時々おこなわれてきたレースコースの変更も考えられているようです。

 その点、日本で人気の470クラスは、他クラスと比べてはっきりしておらず、カーボンマスト案やカラープリント可といった、消極的にも思える改造・改革アイデアしか出していません(もしかしたら見えない所で進行しているのかもしれませんが、公式におこなわれたものはありません)。

 今回のモナコ470級ヨーロッパ選手権でもレースフォーマットは変更されず、これまでと同じ、オープニングシリーズ(予選・決勝)、上位10艇のメダルレースがおこなわれました。

 レースフォーマットは、これからおこなわれる五輪種目のヨーロッパ選手権、世界選手権でも変更されていくと思われます。そうなった場合、日本で開催が予定されているワールドカップやオリンピックでも変更されたフォーマットが採用される可能性が高い。わたしたちは、変更されることを前提に準備しておくべきでしょう。


フィン級ヨーロッパ選手権最終日(準決勝、決勝)ダイジェスト

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