レッドブル・ユースアメリカズカップに挑戦する海神チームジャパン・インタビュー
6月13〜22日まで、バミューダで「第2回レッドブル・ユースアメリカズカップ」が開催されます。この大会は19歳から24歳までのユースイベントで、日本からは大学生を中心に構成された「海神チームジャパン」が参戦します。現地トレーニングを終えて一時帰国した宇佐美翔大選手、小泉維吹選手にバルクヘッドマガジン編集長が話を聞きました。(BHM編集部)
ユースアメリカズカップに挑戦する海神チームジャパンの宇佐美(左)、小泉選手。今冬はバミューダで猛練習しました。photo by Junichi Hirai
第2回レッドブルユースアメリカズカップ概要
開催日:6月13〜22日
公式練習日:5月28〜6月10日
場所:バミューダ
使用艇:AC45F
◎出場チーム:12チーム
Candidate Sailing Team, Austria
Team BDA, Bermuda
Youth Vikings Denmark, Denmark
Team France Jeune, France
SVB Team Germany, Germany
Land Rover BAR Academy, Great Britain
Kaijin Team Japan, Japan
NZL Sailing Team, New Zealand
Spanish Impulse Team, Spain
Artemis Youth Racing, Sweden
Team Tilt, Switzerland
Next Generation USA, USA
ユースアメリカズカップで採用されるフォイリング・カタマラン、AC45F。photo by Robert snow / Red Bull Content Pool
目指すはユースアメリカズカップ優勝!海神チーム・ジャパンの現状
BHM編集長:ついにユースアメリカズカップが近づいてきました。海神チームジャパンのトレーニングも大詰めですね。これまでバミューダで練習していたようですが、どんなトレーニングをしていたんですか?
宇佐美:4月上旬まで、実際にユースアメリカズカップで使用するAC45Fに乗って練習しました。AC45Fの練習には全チームが公平に乗れるようにルールがあり、「個別練習は4月9日まで各チーム7日間以内」となっています。ぼくたちは、アメリカズカップ・ワールドシリーズ福岡大会(昨年11月後半に福岡で開催された)の後、ソフトバンク・チームジャパンのボートを借りて3日間練習したので、残り4日間の練習をバミューダでおこないました。
小泉:バミューダには、ユースアメリカズカップに出場するほとんどのチームが来ていました。ぼくたちは、ソフトバンク・チームジャパンに船を借りて、ニュージーランドチームと交代して乗りました。ソフトバンクのクリス・ドレーパーさんやジェイソン・ウォーターハウスさん(リオ五輪ナクラ17級銀メダル)が一緒に乗ってくれ、細かいところまで指導してもらいました。貴重な練習ができたと思います。
編集長:チームのコンディションはどんな状態ですか?
小泉:バミューダでの練習量はいちばん多く、チームワークもかたまってきました。セーリングもかなりよくなっていて、予選突破、上位入賞も現実的だと感じるようになりました。
編集長:ユースアメリカズカップには12チームが出場します。どんなフォーマットでおこなわれるんですか?
宇佐美:予選は2グループ(6艇ずつ)に分かれます。フリートレースで、コースは正式発表されていませんが、アメリカズカップ形式(リーチングスタート〜アップウインド・ダウンウインドコース)になると思います。予選で4チームずつが勝ち上がり、合計8艇で決勝がおこなわれます。
編集長:バミューダで走り合わせやいっしょに練習してみて、どこのチームがライバルになると思いますか?
小泉:いっしょに走った感じでは、GC32サーキットに出場しているチームチルト(スイス)が速かった。彼らのようにGC32のサーキットやエクストリームセーリングに出場しているチームはフォイリングの経験があるし、オリンピック選手がいるスペインもセーリングスキルは高い。ただ、予選、決勝もコンディション次第のところはあります。キャプサイズしたら敗退するし、風が弱ければ大逆転もある。ぼくたちも油断できないし、逆に優勝のチャンスはあると考えています。
2回の国内選抜で選ばれた日本代表、海神チームジャパンのメンバー。前列左から、鈴木シモン、小泉維吹、宇佐美翔大、後列左から森嶋ティモシー、三瓶笙暉古(フェデリコ)、高橋 稜レナード、辻 幹哉。と、写真にはいない國米 創(アレックス)。photo by kaijin team japan
試行錯誤でフォイリングカタマランを操る大学生セーラー
編集長:小泉選手はヘルムスマンを担当します。具体的にはAC45Fでどんな作業をしているんですか?
小泉:ヘルムスマンは速く走らせることに専念しています。実際に乗ってみるとものすごく大変で、アップウインドではテルテールを見てセーリングに集中。ダウンウインドだと、片手はティラー、片手はダガーフォイルのアップ・ダウン用のボタン(ダガーが前後移動する)でフォイリングを調整しています。最高のスピードを維持するために細かく調整しています。
編集長:日本人でAC45FとGC32に乗ったセーラーはほとんどいません。この2つのボートの違いは?
小泉:個人的にはスピードはほとんど変わらない印象です。実際にGC32の最高速は34ノット(葉山沖で37.8ノット)、AC45Fは30ノットが最高です。レースだと風速のリミットもあるし、コースも狭いので(1レース30分程度で終了する)、それほどスピードが出ることがないかもしれません。
宇佐美:AC45Fは大きく重量もあるので落ち着いた走りです。GC32の方が小さく、あばれ馬のような印象です。
編集長:日本チームの課題、ポイントはどんなところでしょうか?
小泉:ひとつはスタート、それと動作です。アップウインドの走りは、他チームと走りあわせて、速いことがわかりました。かなりスピードはあると思います。でも、ダウンウインドのジャイブアクションで、追い抜かれることがあった。特にコードゼロをあげる風(10〜12ノット以下)だとクルーアクションが増えるので、練習がもっと必要だと感じています。
編集長:ユースアメリカズカップは、5月後半に公式練習があり、その後でレース本番になります。それまで、海神チームジャパンは、どんな活動をしますか?
宇佐美:バミューダに残るメンバーは現地でトレーニング。小泉、フェデリコは、GC32サーキットの〈マンマユート〉チームに合流、またレナード(高橋)は、エクストリームセーリングシリーズにニュージーランドチームと合流してセーリング経験を積みます。残り少ない期間で、経験できることを大切にしていきたいと思います。
ふつうの大学生ではできないことを経験している実感がある
編集長:海神チームジャパンのメンバーは大学生中心です。日本がユースアメリカズカップに挑戦するのははじめてだし、キャンペーンを自分たちでつくりあげるのもはじめて。何から何まで初めてのことばかりで大変なことだと思います。ユースアメリカズカップに挑戦する正直な気持ちは?
小泉:ぼくは、高校を卒業してから速い船に乗りたいと思っていました。早稲田大に進学して、ニュージーランドでトレーニングして、49er級で東京五輪を目指すなかで、ユースアメリカズカップへの挑戦は「速い船に乗る」という流れから普通のことと感じていました。
編集長:小泉選手は、レナード(高橋)選手と東京五輪を目指していて、ナショナルチームに所属しています。49erでは、レナードがヘルム、小泉がクルー。海神チームジャパンでは、小泉がヘルム、レナードがメインセール(兼タクティシャン)です。これからのセーリングの活動は、どんなことを考えていますか?
小泉:いまはユースアメリカズカップが目の前の大きな目標で、49erの活動はできていません。ユースアメリカズカップが終わったら、49erを再開するつもりです。
編集長:宇佐美選手は高校時代に柔道。大学に入学してからセーリングを知りました。また、海神チームジャパンでは、広報や活動資金まで考えるマネージャー業も兼務しています。いまの現状にどんな感想を持っていますか?
宇佐美:正直に言えば、大変なこともあります。でも、日本でだれもやったことのないことに挑戦するのは魅力的で、実際にたのしいです。ぼくは、和歌山で開催されたレッドブル・フォイリングジェネレーション(2015年4月)に参加して、それから江の島でレーザーに乗ったり、GC32の活動を手伝ったりしている流れから、ユースアメリカズカップに関わるようになりました。今年1年は、大学(東京大)を休学して専念するつもりです。とても貴重な体験をしていると感じています。
編集長:海神チームジャパンのみなさん、ぜひ優勝を勝ち取ってください。応援しています!
海神チームジャパン ウエブサイト
http://www.jsaf.or.jp/kaijin_japan/
Red Bull Youth America’s Cup
http://red-bull-youth.americascup.com/
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