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ヨットレース繁盛記。たられば尽きず、初島ダブルハンドに挑戦!

 本州は梅雨ど真ん中となる6月27日、相模湾恒例の「初島ダブルハンドヨットレース」が開催されました。この大会は、逗子〜初島〜逗子の46マイルを、ふたりだけで走るヨットレースです。ヨットレース繁盛記の主役、ホビーホーク号のスミコ&マッキーは、いつものように妄想全開。「丸坊主作戦」なる新戦略を武器に、初島ダブルハンドに挑戦したのでした。(BHM編集部)

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折り返し地点の初島を回航するホビーホーク号です。photo by それもいいよね

連載ヨットレース繁盛記
初島ダブルハンドヨットレース2015

 今年もまた1年の折り返し地点になりました。この時期と言えば梅雨…ではなく、初島ダブルハンドヨットレースです。数日前まで各社バラバラだった風予報が、前日の夜、ついに4つの気象サイト全てで南西の強風予報になりました。違いはその風がいつ、どっちまわりで入って来るかだけ。わー!もう開き直り!なんでも来い!こうなったら目標はただ1つ。無事フィニッシュして美味しいビールを飲むこと! (文/石丸寿美子)

 あれこれと余計なことを考えると過呼吸で倒れそうになるので、ソワソワする気持ちを無理やり飲み込んで、午前6時、葉山マリーナをドックアウト。暑いのに、下カッパまではきました。わたし、ビビリなので。

 参加艇は98艇。スタートラインには21〜42フィートまで色々なフネが集まってきてとても賑やかです。ここ数年は小型艇の参加が増えてきているので、ホビーホークも全体では真ん中より大きい方です。

 どうやって2人でロスなくセールを上げ下げし、安全にタックジャイブをするのか。何をとって、何を捨てるのか。フルクルーで乗る時と同じようにはできないので、プライオリティーを決め、2人で考えて工夫しながら46マイルを走ります。

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朝7時、大混戦のスピンスタートです。photo by キワムの写真館

スタートは決めるよ!コードネーム「丸坊主作戦」

 スタート海面は、今のところ北寄りの軽風。240度の初島へはスターボーのスピンスタートになりそうです。女ふたりで80平米のスピンをどうやって手懐けるかがわたしとマッキーの永遠のテーマであるからして、うーん、靴下(スナッファー)がセットしてあるランナースピンを使うかどうかギリギリまで悩みます。前大会は大ブローチングからのチャイニーズジャイブをやらかしてしまい、スピンが巻きついたり、カーボンポールを壊したりと色々あったのでー(汗)。

 何度か風向と風速を確認し、右振れの風がチョロチョロ入ってくることを確認。風は弱いけど、東に振れたらジャイブもあるし、そのまま右回りに振れきる可能性もあるし。色々考え、靴下スピンを使うことに決定。

 その代わり、スタートは決めたいです。唯一アグレッシブにできるのはスタートくらいだし、普段からレースばっかりやっているんだから、ここは1つガンバリマス。コードネームは「丸坊主作戦」(あまり速そうな名前じゃないですけど)。

 丸坊主作戦とは、ヘッドセールをあげずに丸坊主でマニューバをし、スタートと同時にスピンをはらませて頭を出す作戦です。風が弱いのでラインから離れすぎないよう、ラインまでアビームで30秒の位置を行ったり来たりしながら陣取り、カミ側からプランどおりに第一線でロケットスタートを切りました。そして、周囲がジブを下ろしてゆっくり加速している間に頭を出して走り出すことができました。ヤッホゥ!98点。行ってきまーす!

 5分くらいたって、大きいフネにかぶせられ始め、ジワジワと後退。まあこれは仕方ありません。でも、走り始めてみると、思ったよりタイトリーチで、靴下付きスピンが上から潰れてしまい、ヒジョーに走らせにくいことに気づきます。

 同じようなことが2年前にもあって、それに懲りて昨年は靴下スピンを使わなかったのに、その苦しみを忘れてまた上げてしまいました。まあ、永遠のテーマなので仕方ないです。解決するにはスピンチェンジするしかないけど、安全第一!欲を出しすぎない!と自分に言い聞かせながら、修行だと思ってがんばることにします。

靴下スピンのせいなのか? それにしても恐ろしい遅さ…

 ぐわんぐわん潰れる靴下スピン。ピークにぶら下がっているヘルメットみたいなやつが憎たらしくてたまりません。大リーグ養成ギブスを装着してセーリングしているみたいな感じ。イライラして全く集中できません。なのに、チキンなわたしはどうしてもスピンチェンジの決断ができませんでした。

 10時くらいだったでしょうか、風が一段と弱くなり、北西から西に振れる風が入ってきました。ガクッ。そっちからでしたか。ここで、今までの負け負けな走りをちょっとでも挽回したくて、短い間だけでもいいからと、ジブトップを上げることにしました。

 で、少し気分よく走ってから前に回るのが希望だったのに、ヨットの神様は冷たくて、あっという間に左に振れきってしまいました。これでタックしたら左海面にいた艇団にごっそりやられてしまいました。

 南風がしっかり入ってきました。初島までポートのクローズでアプローチです。大リーグ養成ギブスを脱ぎ捨てたホビーホークは生き返ったみたいにスイスイ走り始めました。フルクルーだったらやっとハイクアウトできるくらいの風だけど、2人だと風速12ノットくらいでオーバーパワーとなり、メインセールをかなり逃がすようになってきました。

 薄日が差してきて、岸の景色もなんだかくっきり見えていて不気味な雰囲気。嵐の前の静けさ? いよいよ強風が来るのかー!? しばらくすると、トップ集団が初島の向こう側から折り返してきました。ジェネカーがあがりそうな角度のはずだけど、みんなジブ帆です。角度がキツイのか、それとも今にも来そうな強風を警戒してのことなのか?

 初島に近づくとみんなギュッと集まって来ました。同じクラスのフネもまわりにたくさんいます。前半はダメだったけれど、まだまだ悲観するような位置ではありません。12時、初島灯台をマグ0に見て回航。

 徐々にベアダウンして復路の60度に向けて走り始めると、風がじわじわと上がって来ました。やっぱり誰もスピンもジェネカーも揚げません。ホビーホークはまだオーバーラップのジェノアを上げているので、このままでは観音開きも難しく、ランまで落としにくいです。

 近くのフネが何度も切れ上がって蛇行しているのを見て、ちょっとビビります。そして、このあと予報どおりに吹き上がると信じて疑わなかったチキンな女子たちは、No.3をすっとばして、No.4へチェンジすることにします。

 直後に20ノットのガストが入りました。ギャー!ついに来た、ババ吹き第一陣。あとは当然サバイバルモードになって、ハーネス付けて頑張ってジブ帆で帰るつもりなので、30ノットいつでもかかって来いー!とターボ全開の鼻息でアゲアゲになっていました。

 なのに…。あり?風、落ちてきた気がします。1時間程走り、業を煮やしたメルジェス24が真っ先にジェネカーをあげると、周りのフネも「だよねー、あげるよねーやっぱりー」みたいな感じで徐々にスピンをあげ始めました。チキンな女たちも、まだ半信半疑ではあったけど、吹いてきたらすぐ靴下かぶせればいいからということでスピンアップ。

 でもしばらく走っても、一向に風があがる気配はありません。えーと、また、大リーグ養成ギブスになってしまいました…。

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スミコ&マッキー。今年も初島ダブルハンドに挑戦しました。photo by Hobbyhawk

マッキーのおでこにスナップシャックルが直撃する

 …やめます靴下。とほほ、もう我慢の限界です。まいりました。何かと理由を付けて靴下スピンを使ったのに、あまりの走らなさに憤死しそうになって、結局下ろす羽目になりました。そして、スピンチェンジのときに靴下スピンのお散歩ヒモ(上げ下げするヒモです)がぐわーんと弧を描いて戻ってきて、スナップシャックルがマッキーのおでこに直撃するという罰ゲーム付き。

 フィニッシュが近づくにつれどんどん風がおちてきました。風速6ノットを切るとガクっとスピードが落ちて途端に走らなくなります。集中力が切れて、後ろのフネが大きくなったような気がして焦り、また気を取り直して、ポールの高さ、メインセールの出し具合、アングルやスピード、うねりの処理も気を付けて走ります。そうするとまたちょっと盛り返したり。

 結局、この日、風はスカでした。あとになってわかったことだけど、大島灯台では30ノットの南西風が入り、風はすぐそこまで来ていたようです。午後になって入ってきた南からのうねりはこのせいだったのかな。ちょっとした具合で、相模湾の奥まで風は届かなかったようです。

 見慣れた景色の葉山沖に帰ってきました。朝からずっと待っていてくれた本部船も確認し、フィニッシュラインに向けてジャイブ。最後の最後にさらにベタってしまい、落としきれなくなります。もう一度ジャイブしたいところだけど、本部船の目の前でスピンが絡み付くシーンが妙にリアルに思い浮かんでしまったので、ジャイブはやめて、デッドランぎりぎりでアウターをなんとかかわします。這うように、ヨロヨロとフィニッシュ。ダサい。

 16時5分、無事完走し、9時間5分のレースを終えました。Dクラス13艇中6位。なんだか全体的に考えすぎてしまい、かなり中途半端なレースになってしまいました。ああすればよかった、こうすればよかったと、「たられば」が尽きませんが、最後まで一生懸命考えて、一生懸命走らせて、無事笑顔でフィニッシュできたのでヨシとします。

この日の夕焼け、すごかったね!

 早くフィニッシュしてビール飲んでいた人も、舫いをとってホッと一息ついていた人も、まだまだがんばって走っていた人も、みんなこの夕焼けを見たのではないでしょうか。こんな空を見てしまうと、いろんな事がちっぽけな事に思えてきました。

 今日走った人、みんなこの同じ空の下を2人で走ったと思うと、色々あったけど、楽しかったです。そして、今年が最後だと思ってやったのに、あまりに未熟な自分のせいで、やめられなくなったー。なんなら今週末にもう一度やりなおしたいくらいです。わはは。

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レース後に見た夕焼けに感激。photo by Hobbyhawk

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各クラス優勝したみなさん、おめでとう!photo by Hobbyhawk

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来年は優勝したいね!レース翌日の表彰式にて。photo by Hobbyhawk

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