決着迫る、日本代表最終選考デンマーク・オーフスの戦い
7月1日、リオ五輪日本代表選考・470ヨーロッパ選手権3日目。昨日までの予選が終わり、本日から3日間は上位・下位グループに分かれておこなう決勝シリーズが始まりました。決勝は6レース予定され、7月4日の最終日にはトップ10艇によるメダルレースがおこなわれます。(BHM編集部)
決勝2レース目でトップ回航する市野直毅/長谷川孝。クルーの長谷川(30歳)は中村三陽高時代の市野の先輩で福岡大時代はスナイプで活躍しました。いまは社会人セーラーとして福岡のクルーザーチーム〈バンビーノ〉で活動しています。今春から470級に乗り始め、有給休暇を使って海外遠征の連続。5月イタリアでおこなわれたザオリセール主催の多国籍合宿練習に参加するなどメキメキ力をつけています。photo by junichi Hirai
開催地デンマーク・オーフスはこれまでの寒さが嘘のように気温が上がり、日本の初夏のようなあたたかさです。日差しが気持ち良い北欧の夏ですが、わたしたちが期待する風はさらに落ちていってしまいました。これまでの西風(陸風)から南東風(海風)に変わったので、激しい振れのトリッキーコンディションから別の展開を予想しましたが、風は極めて不安定です。
決勝1レース目は、左に振れ、左に振れ、左に振れ続ける、という戦略泣かせの風の傾向で、スタート即タックで右海面を選んだ松永鉄也/吉田雄悟(スリーボンド)、女子の吉田 愛/吉岡美帆(ベネッセ)が、風の罠にハマってしまいました。
しかし、この予想できない風でもトップを走ったのは、山口祥世/畑山絵里(ノエビア)です。ダウンウインドでこそ抜かれてしまいましたが、ここまで好展開が続くのを見ていると、なぜこの風で何度も前を走れるのか「恐ろしさ」すら感じます。山口/畑山は、総合3位を保守しています。
男子は土居一斗/今村公彦(アビーム)があがってきました。「スタートから攻める」と出艇前に公言していたとおり、挑戦者らしく思い切って飛び出し、総合14位へ浮上しました。また、市野直毅/長谷川孝(和歌山セーリングクラブ・横浜ゴムMBジャパン)は決勝第2レースでトップ回航から最終2位。チャーターボードで挑んでいるにも関わらず、二度目の2位を取って23位へあがりました。
470級ヨーロッパ選手権 3日目 男子成績 参加60艇
ゴールドフリート
1. GER Ferdinand Gerz / Oliver Szymanski 5-1-(11)-5-7-1-5 24p
2. USA Stuart Mcnay / David Hughes 2-2-2-(31 BFD)-3-5-22 36p
3. RUS Pavel Sozykin / Denis Gribanov 1-14-1-2-7-12-(16) 37p
4. JPN 松永鉄也/吉田雄悟 11-4-2-8-2-(23)-11 38p
5. GBR Luke Patience / Elliot Willis 7-6-1-10-6-13-(17) 43p
6. GRE Panagiotis Mantis / Pavlos Kagialis 6-8-6-8-1-(27)-14 43p
14. JPN 土居一斗/今村公彦 9-11-(18)-13-10-7-10 60p
23. JPN 市野直毅/長谷川孝 13-(23)-21-2-17-21-2 76p
シルバーフリート
17. JPN 飯束潮吹/八山慎司 24-21-24-25-(31 BFD)-10-9 113p
470級ヨーロッパ選手権 3日目 女子成績 参加48艇
ゴールドフリート
1. NZL Jo Aleh / Polly Powrie 1-1-2-1-4-4-(5) 13p
2. FRA Camille Lecointre / Helene Defrance 3-8-5-2-6-1-(12) 25p
3. JPN 山口祥世/畑山絵里 7-9-2-2-2-5-(13) 27p
4. GER Nadine Boehm / Ann-Christin Goliass 4-(18)-6-9-2-6-1 28p
5. SLO Tina Mrak / Veronika Macarol 5-4-4-8-6-3-(25 DSQ) 30p
6. GER Annika Bochmann / Marlene Steinherr 6-5-4-8-5-(20)-6 34p
16. JPN 吉田 愛/吉岡美帆 11-5-8-12-1-(16)-11 48p
スリーボンドvsアビームの日本男子の戦い。先行するスリーボンドに残り2日間で逆転なるか?photo by Junichi Hirai
オーフスに高まる代表選考の緊張感。残り決勝2日間4レースが勝負
大会がはじまって3日間、バルクヘッドマガジン編集長がヨーロッパ選手権を見ていて感じるのは、トップセーラーがオーフス特有の癖のある風に翻弄されているということ。男子のオーストラリア、クロアチアといった実力チームが低迷しているのもそうだし、世界ランキング3位の吉田 愛/吉岡美帆も同様に風を掴みきれていません。強弱差が激しいパフとラル、振れ戻らず片振れする風など、リスクヘッジを考えたコースプランは時としてドツボにハマってしまう場面もあります。そのなかで、山口祥世/畑山絵里の「風の読み」は見ごとにオーフスの風にマッチしています。得意とする軽風域のスピードを武器に、前に前に船が滑って行くのが印象的でした。
男子は、松永鉄也/吉田雄悟を、土居一斗/今村公彦が追い上げる構図になりました。これは、第一次選考となったプリンセスソフィア杯(3月パルマ・デ・マヨルカ)と全く同じ展開です。第一次選考の土居/今村は大会4日目に20位から10位へ急浮上。メダル争いしていた松永/吉田に猛烈に追い上げて最終6位で終え、松永/吉田との得点差を最小限に第二次選考へ望みをつなげました。プリンセスソフィア杯と違うのは、土居/今村が松永/吉田に追い付くだけではダメだということです。日本代表になるには、得点(5点)を逆転する順位を取らなければなりません。
デンマーク・オーフスに緊張感が高まってきました。編集長は、明日4日目の内容が勝負の行方を大きく左右すると踏んでいます。明日は風が吹き上がる予報が出ています。男子は、土居/今村が逆転可能な位置まで上がっていけるのか? 女子の山口/畑山は吹いたコンディションでも順位を維持できたなら…。
リオ五輪日本代表最終選考「オーフスの戦い」がヒートアップしてきました。
◎470European Championship
http://2015europeans.470.org/en/default/races/race
◎バルクヘッドマガジン・フォトギャラリー
https://www.facebook.com/bulkheader
ベネッセ吉田/吉岡の前を走るノエビア山口/畑山。photo by Junichi Hirai
「微風軽風がこれまでも苦手ですが、振れる風は嫌いではありません。でも、片振れする風まで読めませんでした。本当にむずかしい…」と吉田愛。photo by Junichi Hirai
暫定3位が着る赤いビブスをまとった山口/畑山。ノエビアチームは昨秋結成した新チームです。山口は一昨年に早稲田大を卒業、畑山は今春、日本経済大を卒業しました。photo by Junichi Hirai
男女ともトップが入れ替わりました。女子はニュージーランド、男子はドイツ(写真)が暫定1位です。photo by Junichi Hirai
松永鉄也と土居一斗。海の上ではライバルですが、陸では普段通りで話もします。ふたりは日本セーリング史に名を残す2人に違いありません。このリオ五輪代表最終決戦をずっと見ていたい気もします。photo by Junichi Hirai
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