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和歌山NT選考終盤。女子たちの熾烈な戦い

 12月13日、朝に前線が通り過ぎ、冷たい北西の強風ではじまった和歌山ナショナルチーム選考。レース8日目は選考の舞台にふさわしく、弱者から順番に淘汰される厳しさを感じられる内容となりました。全種目3レースおこなわれ、全種目トップ選手は変わらず。しかし、レースの内容は後続がトップを凌駕する見応えのあるレースが繰り広げられました。(BHM編集部)

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25ノットオーバーの強風となった選考8日目。写真はレーザーラジアル級、土居愛実に迫る冨部柚三子。photo by Junichi Hirai

 470級男子は現在2位につける飯束/八山(SPN)が健闘しました。強風セーリングを武器とする土居/今村(チームアビーム)と走りは遜色なく、シフトに翻弄される土居/今村に対して安定してトップを狙う力を見せました、また第2レースでは市野/外薗(和歌山セーリングクラブ)がダントツの1位を走るなど、この3艇の戦いは見ごたえがあります。

 総合得点では土居/今村が抜け出していて、ナショナルチーム入り当確。しかし、これまで土居/今村が有利としていた強風セーリングは、この選考を見る限り、その差はかなり近くなっています。

 ほかの種目で暫定トップは変わりなく、470級女子は山口/畑山(ノエビア/日本経済大)、レーザー級は南里研二(アルバトロスヨットクラブ)、ラジアル級は土居愛実(慶應大)、RS:X級男子は板庇雄馬(立命館大)、RS:X級女子は須長由季(ミキハウス)が首位につけています。

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アビーム対SPN(左)。第2レース第4マーク回航時、至近距離となり双方からプロテスト(マークルームと接触の有無)が出され、帰着後審問に。結果、双方の抗議は却下となり成績に変わりありませんが、戦いは陸まで持ち越される一幕がありました。両チームの本気度がうかがわれます。photo by Junichi Hirai

手に汗握るレーザーラジアル級、RS:X級女子の勝負

 大会は終盤を迎え、2015年ナショナルチームの顔ぶれが見えてきました。本選考はナショナルチームを決定するのが目的ですが、選手たちの心情はそればかりではありません。当然、選考通過が第一目標に違いありませんが、「あのライバルだけには負けたくない」という競技者なら誰もが持っている強い気持ちが、後半戦になって顕著に見えてきています。

 レーザーラジアル級では、ナショナルチーム入りを確実とした土居愛実が大きく先行していますが、本日のレースでは冨部柚三子(グローバルコムサービス)が3-1-1位で土居(4-2-2位)を完全に抑える戦いを見せました。冨部は蛭田香名子(豊田自動織機)を逆転して総合2位に浮上しました。

 国枠を取れていないレーザーラジアル級は、来年のオマーン世界選手権で国枠を取り、日本のなかでいちばんになった選手が代表となります。もしナショナルチームに入れなかったとしても、日本レーザー協会に例年与えられるワールド枠で出場できる可能性もあり、五輪出場の夢が完全に絶たれるとは限りません。

「でも、ナショナルチームに入るのと入らないのでは、気持ちの上で全然違ってきます。ナショナルチームにしっかり入って来年の活動につなげていきたいです。この1年で(セーリングに専念して)成長したと思います。きょうはいい感覚で走れました」(冨部)

 また、現在4位の長谷川哲子(豊田自動織機)も、成績に凹凸があるものの常に上位グループに入り、逆転NT入りを狙っています。イチ抜けの土居をのぞいた3艇は、海上で観戦していてもピリピリ感が伝わってくるほどです。ラジアル級の最終日3レース(予定)に注目しましょう。

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スタート直後の蛭田(手前)と長谷川。photo by Junichi Hirai

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暫定2位となった冨部柚三子。ラジアル級のNT枠は2つ。最終日は最高潮に緊迫した戦いが予想されます。photo by Junichi Hirai

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「きょうは集中力が切れてしまい切り替えることができなかった。わたしの悪いところが出た1日でした」(土居)。photo by Junichi Hirai

 同じく女子の戦いが繰り広げられているRS:X級女子も、熱い戦いがおこなわれています。現在1位は須長由季、2位は大西富士子(ホマレ電池)。強風を得意とする須長がトップを快走しているのは、コンディションを考えれば予想された結果といえます。

 しかし、今年9月のスペイン・サンタンデールISAFワールドで須長は失速。理由はワールド予選が須長の苦手とする軽風シリーズとなったからです。その結果、須長は予選落ち(シルバーフリート)に。サンタンデールでは小嶺恵美(ジェイウィルパートナーズ)と大西がゴールドフリートに進みました。

 この選考では、軽風時に風向が定まらずレースがおこなわれていないので、結果として強風シリーズになっています。しかし、もし風が落ちたら、結果は違ってくる可能性もあります。風域による実力差があるのが、RS:X級女子の現時点の実力といえます。

 さあ、明日14日はナショナルチーム選考最終日です。レーザー級、ラジアル級は最大3レース、470級男女は2レース、RS:X級男女は1レースが予定されています。

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今秋から職場が決まり仕事と五輪活動を両立できる環境となった大西富士子。photo by Junichi Hirai

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11月オマーン世界選手権で国枠を取るのがRS:X級女子の目標です。写真はRS:X女子でベテラン格となった須長由季。photo by Junichi Hirai

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現在3位の伊勢田愛(ビワコマリンスポーツクラブ)。RS:X級女子のナショナルチーム枠は2つです。photo by Junichi Hirai


ナショナルチーム選考8日目ダイジェスト。映像提供:デイリーセーリング

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12月13日、470級男子(NT枠3艇)、470級女子成績(NT枠1艇)
※五輪国枠を獲得した男子・松永/吉田(スリーボンド)、女子・吉田/吉岡(ベネッセ)はNT認定済のため不参加

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12月13日、レーザー級(NT枠2艇)、レーザーラジアル級成績(NT枠2艇)

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12月13日、RS:X級男子(NT枠1艇)、RS:X級女子成績(NT枠2艇)
※五輪国枠を獲得した富澤(トヨタ自動車東日本)はNT認定済のため不参加

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