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浜名湖に飛ぶ風吹かず!モス全日本選手権

 10月25、26日、浜名湖ビーチスマリーナで「モス級全日本選手権」が開催されました。2016年5月に葉山で世界選手権が開催されることもあり、いま注目が集まっているフォイリングモス。日本でも急速に普及しつつあるクラスで、本大会には25人のモス乗りが集まりました。(BHM編集部)

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浜名湖で開催されたモス全日本。選手たちが何を見ているのかというとテストフライトに出艇した選手が飛べるかどうかを凝視しています。飛べる風でなければ出艇しません。当然レースもやりません。phtoo by Junichi Hirai

 昨年大会が19艇の参加だったことから国内の人気ぶりが分かるでしょう。今年は、松永鉄也、吉田雄悟、田畑和歌子といったオリンピアンの新規参戦もあり、大会前から大いに盛り上がりを見せました。

 五輪を目標に活動している彼らの目的はトレーニングにあります。2016年リオ五輪にはナクラ17級、49erFX級、49er級といったハイスピードボートの登場が決まり、また、2013年アメリカズカップではウイングセール+フォイリングカタマランが採用されました。この流れに同調するように世界のトップセーラーは、モスをトレーニングボートに選んでスキルを磨いています。

 オラクルUSAでは6艇、ルナロッサでは4艇のモスを導入し、日々トレーニングしていることでも、いまのセーリングのなかでキーワードとなっている船だと分かります。アメリカズカップのスキッパーは全員モス乗りです。現在、日本には45〜50艇のフォイリングモスがあり、葉山、江の島、稲毛、清水、蒲郡、浜名湖、琵琶湖等で乗られています。

風弱くノーレースとなった浜名湖全日本

 一般的にモスのフォイリング(水中翼で水面に浮く)のタイミングは、6〜7ノットからと言われています。しかし、この風が今年のモス全日本を苦しめることになりました。全国的に日本列島が高気圧に覆われ、浜名湖も同様に2日間ともに風弱く、フォイリングするには物足りません。

 ほかのディンギーならレースができそうな風が吹くこともありましたが、モスセーラーは「飛ばないならセーリングする意味がない」とばかりにジッと風を待ちました。風が吹いてくる気配があると、ここぞとばかりに数名が湖面に出て行きましたが、陸上からフォイリングできない姿を見るとため息…。これを繰り返し、大会は最終日午後へ。

 スコールのような雨が降った後に吹き込んできたブロー帯を見て、選手たちは一斉に出艇しました。ブローによってはフォイリングも可能な風です。すぐさまレース委員会はブイを設置してレースがスタートしました。

 しかし、スタートするとブローは過ぎ去り風が落ち、フォイリングできないローライドの風に。高橋洸志の1上トップ回航もまぼろしにノーレースとなり、ハーバーバックとなりました。

モス乗りの習性。このままでは終われない?

 1レースもおこなわれず消化不良に終わった2日間。しかし、閉会式では「このままでは終われない」とばかりに、選手から再レースの開催を求める声が上がりました。

 モス乗りの特徴は、よくいえば自由度が高く、フットワーク軽く、凝り固まった前例を吹き飛ばしてフレキシブルに物事を考えられるセーラーが集まっています。わがまま、自己中心的な行動・言動も多々見られますが、シンプルな思考回路を持った人種といえるでしょう。

 「飛べるなら行くよ」という単純な考えで再レースの提案は一同ほぼ賛成。それでは来週末はどうか、という気の早い意見もあり、日の暮れた会場で喧々諤々。選手たちは各々ホワイトボートに出場可能な日を書き込んで解散となりました。なんとも自由な気風です。

 というわけで、全日本選手権は再度開催したいという希望で終わったため、浜名湖大会は不成立となりましたが、もう一度全日本をやろうか? という未確定なまま閉会となりました。

 選手たちは2日間で数分間だけ飛べたことに満足して帰途へ。この辺も少し通常のセーラーとズレているのですが、それがモス乗りなのです。

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大会会場となったビーチスマリーナ。元五輪ナショナルチームの高橋幸吉ハーバーマスター夫妻、礼子、洸志、友海の高橋三姉弟、一家総出でサポートしてくれました。ビーチスマリーナは決して大きくありませんが、必要最低限のものはすべて用意されるセーラーにとって気持ちのよいマリーナです。photo by Junichi Hirai

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レース前に数分吹いた風でフォイリング。写真は田畑和歌子と高橋洸志です。photo by Junichi Hirai

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後藤浩紀デフェンディング・チャンピオン。飛べればそれで笑顔なのです。photo by Junichi Hirai

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現在、モスの型はマッハ2(MACH2)が主流ですが、一時世界を圧巻したブレイドライダーも健在。旧型スキフモスにフォイルをつけて出場する選手もいます。オーストラリアナショナルではスコウモスも現役で出場しています。写真は荒木選手。photo by Junichi Hirai

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470ワールド6位、スリーボンドの松永鉄也も出場。 実質練習3、4日にもかかわらず、軽々フォイリングする姿はさすが。photo by Junichi Hirai

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2日目午後まで待ってようやく始まった第1レースでは、スタート直前に風がまわり風も落ちてしまいました。photo by Junichi Hirai

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御年71歳でモスマスターの古谷元洋さんも出場しています(夜の宴会では一番元気でした)。最年少は21歳の勝元一也選手。その差50歳!photo by Junichi Hirai

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まっ暗の中、ホワイトボードに全日本開催再スケジュール希望日を書き込む選手たち。photo by Junichi Hirai


モス協会制作の大会初日ダイジェスト映像です。メルボルンから(この日のために)来日した梶本選手、1月豪ソレントワールドに出場する大西選手のインタビューもあります

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