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ヨットレース繁盛記・おんな二人旅 前編

 みなさん、お待たせしました。バルクヘッドマガジンの人気連載「ヨットレース繁盛記」です。今回のホビーホーク号は、たった2人で逗子〜初島〜逗子の48マイルを走る初島ダブルハンドヨットレースに出場しました。何を隠そうホビーホークは、出場95艇のなかで唯一の女子×女子コンビなのです。(BHM編集部)

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スミコ(左)&マッキー。今年も暴れるよ!photo by Hobbyhawk

連載ヨットレース繁盛記
初島ダブルハンドヨットレース・前編

 今年も初島ダブルハンドの季節がやってきました。一年の折り返しの地点です。梅雨前線の位置がちょっとずれるたびに毎日コロコロ変わる風予報を見て、「だとしたらコースはこんな感じで、ここらへんでジャイブがあるけど、この風だったらこのやり方で…」、などと例によって毎日妄想し、色々考え、考えて考えて考えすぎて、結局何も考えないのと同じなんじゃないかということに気づき、結構スッキリと当日を迎えました。今年も相棒マッキーとプチ冒険レースにチャレンジです!(文/石丸寿美子)

おれたちロケットスタートを決めるぜ!

 ドックアウト前、勝負ソックス(5本指)を履こうとしたら、両方とも左足を持ってきてしまったことが発覚しました。小指のところに親指は入らないので、どうしようかと若干狼狽していたところ、片方を裏返しにして履けばOKなことに気づきました!天才!今日のレースも冴えまくりかもしれません!

 ホビーホークの属するDクラスは、30から39フィートまで様々なタイプの船が集まっていて、それぞれコンディションによって得手不得手があります。サイズでは最小ながらトップレーティングのホビーホークは、とにかくロケットスタートを決めてスピンランでどれだけ逃げ切れるかがカギになりそうです。

 スタート海面は北東の風が6ノットほどで、小雨が降ったり止んだり。初島までのコース240度に対してほぼ真ランの風なのでスターボードのスピンスタートになりそうです。

 スタートはいいポジションでジャストで出ることができました!落ち着いてスピンアップ。華麗にパッと開いてロケットスタート!の予定でしたが、ここでいきなり提灯。ガーン!このスピンは使う予定がなかったため前日ちゃんとリパックしておかなかったのが原因です。自業自得…。

 ハリヤードを半分下ろし、ツイストドーナツみたいになったスピンのねじれを直し、またハリヤードを上げて、なーんてやっているうちにいいスタートの貯金はパァ。ロケットスタートとは程遠く、ごちゃごちゃの艇団に埋もれての走り出しとなってしまいました。そして、またしても序盤から同クラスの先行艇を追う展開になってしまいました。

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初島へ向かってスピンアップ。早朝7時、大艇団が初島に向かって走りだしました。photo by Junichi Hirai

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30フィート艇(YAMAHA30SN)を女子2人が操船するとこんなバランスです。それでは行ってきます!photo by Junichi Hirai

スタート失敗するもホイホイジャイブ4回成功!

 しばらく走ると先行艇が早くもジャイブ。雨雲の下に差し掛かると、こちらにも大きく後ろに振れる風が入ったので、これに合わせてジャイブします。今回は風が弱かったので、常連チームから教えてもらった「ホイホイジャイブ」で行くことにします。

 ホイホイジャイブとは…。メインを真ん中まで引き込んで固定し、股にティラー、両手にガイとシートを持ち、真ランをキープしながらクルー(ホビーホーク号ではマッキー)がポールを返します。ホイホイジャイブは楽々成功しました!

 その後も雨雲の下のパッチで東に振れ、落ち着くと北東に振れ戻るというパターンが続き、振れに合わせてジャイブ4回! 少しずつ挽回して順位をあげていきます。実は最後の1回のジャイブは12〜3ノットの中だったので、ちょっと危なっかしかったです。

 メインを中央に引き込んでも、どちらかに微妙に風がはらむと足に挟んだティラーが重くなり、わたしの鈍りきった内転筋では真ランをキープするのが厳しく…。もうちょっとでポールを担いだマッキーがタコ踊りしそうになっていました。教訓!ホイホイジャイブは風速10ノットまで。それ以上ではメインを先に返します。

 初島がぼんやり見えてきました。同クラスの艇は、かなり前方にトップ艇〈BASIC〉(SEAM31)、真横にいた〈Hayate〉(SEAM31)とは逆タックで走ります。ここで離されるわけにはいかないので、2艇の動きを見ながら初島のアプローチを考えました。

人生初のチャイニーズジャイブをしでかす

 この直後、真っ黒な低い雲の下に差し掛かり、16〜18ノットの風に突入。一気に加速しアゲアゲのスピンランで悦に入っていたところ、突然バイザリーの強烈なガストが入り、アンヒールしたまま一気にプレーニング!ヒャー!

 なんとかコントロールしようと踏ん張りますが、ローリングが収まらずそのまま大きくアンヒール沈。ブームが上から降ってきてドッカーン! あわわわ、人生初、チャイニーズジャイブ(いわゆるワイルドジャイブ)からの大ブローチング。やってしまいましたー。


編注:チャイニーズジャイブとはこんな状態です。みなさん、ボルボ艇をホビーホーク号に代えてご想像ください。それほど違いはありません

 すぐにマッキーの無事を確認。完全に横倒しだったので、ラダーはノーコン、膝まで水に浸かりながら、どこも壊れませんように…と祈りながらしばらく横倒しになっていました。まわりのフネには思いっきりキールを披露してしまったかも。

 すごーく長い時間に感じたけれど、ようやくフネが起きあがりはじめ、殺人的な勢いで戻ってくるブームを首を引っ込めてやりすごし、落ち着いて呼吸を整えます。

 スピンがフォアステイに絡み付いていたので、まずはスピンドロップ。マッキーが格闘してくれて無事回収できました。大きな破損はなく、スピンポールのブライダルが切れただけで済みました。

 今日のコンディションでまさかチャイニーズジャイブするなんて夢にも思いませんでした。周囲にいた何艇かも同じ突風でブローチングしたようですが、結局、強烈なガストは後にも先にもこれ1回きりでした。

※次回、初島ダブルハンド後編へ。ズンドコ進みます!

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初島ダブルハンドヨットレースのラムライン。今回は北東風なので初島まで真追っ手、初島から逗子までクローズの超ロング上下レースとなりました

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