エスメラルダ優勝!関東ミドルボート選手権
5月3〜5日まで相模湾で「第26回ミドルボート選手権」が開催されました。この大会は全長26〜36フィート艇を基準にした日本独特のクラスで、国内のクルーザーレースで最も普及しているサイズであることから人気のヨットレースです。今年はIRCクラスに35艇が出場しました。(BHM編集部)
レースは大会初日から20ノットを越える絶好の風に恵まれて、ショートディスタンスを含む全6レースを消化。IRCクラスAは〈ESMERALDA〉(A35)、クラスBは〈Exotique〉(MAT1010)が優勝、また総合優勝は〈ESMERALDA〉が獲得しました。みなさん、おめでとうございます!
1年ぶりの相模湾レース活動となる〈ESMERALDA〉。Aクラス、総合優勝を決めました。photo by Junichi Hirai
新艇でBクラス優勝を飾った〈Exotique〉。photo by Junichi Hirai
——— 以下、渾身の自慢話が始まります ————
ありがとうございます。わたくしバルクヘッドマガジン編集長はエスメラルダチームのボートマネージャーでもあり、準備の苦労を知っているだけに優勝の喜びはひとしおです。
TP52からメルジェス32、最近ではSWAN42など艇がコロコロ変わるのがエスメラルダチームの特長で、昨年は練習もしないのにJ/24全日本選手権に出場したりしました。
おもしろそうなヨットレースがあれば節操無く出場してみる、がモットーのチームです。キャンペーンの流れは染み付いているので、それほど面倒はないのですが、今回だけは薄氷を履むキャンペーンとなってしまいました。レースがはじまる一週間前まで船がまったくできあがらなかったのです。
今年1月後半に中古ボートを購入し、植松オーナーを中心に綿密な改造計画を実行しました。最も重要視したのは、微風域のセーリングです。この辺は、アメリカのチーム関係者と話を詰め、セールエリアの拡大、スピネーカーシステムを完全排除してジェネカー仕様に、バウポールを最大に伸ばす、メイン、ジブのマテリアルを3Di(ノースセール社のカーボンセール素材で3DLの工法で作られる)で制作、コードゼロの制作、マストジャッキの取付などの改造計画ができあがりました。
問題はマストジャッキにありました。備え付いているマストのメーカー(仏)が同国で倒産していることが分かり、急遽アメリカのホールスパー社へ製作依頼。しかし、なかなか設計図を描いてきません。ようやく設計図を送ってきたかと思えば進行状況が伝えられず、3月中旬の完成を予定していたもののズルズルと遅れに遅れ4月後半に到着というハメに。
チームとしては、4月初旬に予定していたレースをキャンセル、テストセーリングを延期に次ぐ延期。編集長自身は、フランス出張を取りやめ、週末に入っていた数本の取材をキャンセルしてマストジャッキの到着を待っていたのです。ああ、腹立たしい。
ディンギーセーラーのためにマストジャッキを簡単に説明すると。通常マストのセッティングはサイドステイ、フォアステイのターニングブロックを伸縮することで調整しますが、その代わりにマストステップ部分に油圧ポンプを置いて(クルマのタイヤ交換で使うジャッキをスマートにしたもの)、マストの高さ調整でリギンテンションをコントロールするものです。ようするに微風、中風、強風のマストセッティングが楽チンになるわけです。
遅れに遅れたマストジャッキがようやく届いて、マストを真っ直ぐに立てたのがレースの一週間前。テストセーリングを1日、キャリブレーションに1日設けて本番へ挑みました。その前後、編集長は風邪で倒れたり、沖縄東海ヨットレースの取材で沖縄へ飛んだりとめまぐるしくドタバタしていたのです。
35艇がエントリーした関東ミドルボート選手権。フリートのスピンランは圧巻です。photo by Junichi Hirai
微風レースで秘密兵器コードゼロの効果絶大
ようやくマストが立ってレース開始です。今回のメンバーは、植松眞オーナーをリーダーに、昨年のNYYCインビテーショナルカップのチームメンバーだった浜崎栄一郎が舵を取り、久米敏がタクティシャン、吉田学トリマー、田口祐介ピット、辻寛基メイン、三島隆洋バウ、森銀二フローター、脇山弘マスト、平井淳一ピット、ソアでした。
セッティングが不完全なので、スタート前には試行錯誤しながら「具合の良い部分」を探りだしました。十分な時間はありませんが、できることは山ほどあります。スタート直前までマストジャッキとフォアステイをいじりながらベストなポイントを探し、後はセールトリムとボートコントロールでレースのなかで調整していきました。
走りだしてみると想像していた以上に船はがんばってくれました。実は、編集長が気になっていたのはIRCのレーティング数値で、セール面積の大幅な拡大とマストジャッキの取り付けにより、同型艇の中で世界で最も高いレーティング数値がはじきだされていたのです。数値が高ければ、それだけ早く走らなければならなりません。実際に走らせてみて、そこまでの効果があるのかどうか??? 特に微風、軽風域のアップウインドに不安を抱えていました。
しかし、ここは最終レース以外、中・強風レースとなったのが功を奏しました。メルジェス32やGP33といったスピードボートには敵いませんが、その次グループにしがみつき、上マークを回航し、スピンポール艇が有利とされる上下ソーセージコースのダウンウインドも走り負けせず(鈍足艇のジェネカーデザインはずいぶんと進化しているようです)2日目に首位へ。
最終日は得点が1.2倍となるディスタンスレースです。風は南東予報だったにも関わらず、朝から北西風、加えて雨。風はだんだん弱くなる傾向。北っけの風がいつまで残るのか、風が止まり南にまわるタイミングが勝負です。
スタート後、ライバルとなる〈Quetefeek〉(メルジェス32)は軽量+巨大ジェネカーを武器にガンガンと船足を伸ばして、城ヶ島沖の第1マークをトップ回航。〈ESMERALDA〉は、大幅に(10分)遅れて5、6番手でマークを回航しました。第1マークまでの時間は40分ほどです。この時点ではかなり〈Quetefeek〉にリードされていたことになります。
第2マークへ向かう途中に風はさらに弱くなり、全艇が風下オンデッキのアップウインドに。こうした風のない状況では軽量なボートが有利です。しかし、ここで〈ESMERALDA〉はコードゼロを展開。コードゼロは微風のタイトリーチングで用いる大きなジェノアでタックの取付ポイントによりジェネカーとして扱われるセールです。
これが最終レグの風に見事にマッチしました。他艇が1ノット程度で漂っている中を3ノットのスピードで猛追し、ずばずばと追い抜きに成功。トップの〈Quetefeek〉には届きませんでしたが、その差を急激に縮めて2着フィニッシュ。修正トップで優勝を飾ることができました。
今回“デキすぎ感”は否めませんが、国内でもっともハイレベルなクルーザーレースのひとつで優勝できたことは、とてもうれしいです。今年のエスメラルダチームはこの船でロングレースを中心に活動していきたいと思っています。また、海でお会いしましょう!
というわけで、必要以上に長々とした自慢話でした。みなさん、ご清聴ありがとうございました。
優勝カップを手に満足の編集長です。よく走ってくれました!今年のエスメラルダは葉山マリーナを拠点に活動します。HMYCのみなさん、新参者ですが、よろしくお願いします
わたしたちは走り続けるセーラーを応援します
BULKHEAD magazine supported by
ポール・スチュアート
ベストウインド
パフォーマンス セイルクラフト ジャパン
SAILFAST
ウルマンセイルスジャパン
丸玉運送
ノースセールジャパン
入船鋼材
フッドセイルメイカースジャパン
アビームコンサルティング
トーヨーアサノ
Velocitek
銚子マリーナ
コスモマリン
Gill Japan/フォーチュン
JIB
一点鐘
エイ・シー・ティー
ハーケンジャパン
ファクトリーゼロ