様変わりしたISAFセーリングワールドカップ
3月31日、パルマ・デ・マヨルカで第45回プリンセスソフィア杯、ISAFセーリングワールドカップ・マヨルカ大会が開幕しました。大会初日は朝から風弱く陸上待機で始まりましたが、昼前から吹き始めた海風で出艇。午後6時過ぎまで時間をたっぷり使ってレースをおこないました。ちなみにパルマの日没は午後8時近く。日没が遅いためヨットレースは日本より遅くまで行えます。(BHM編集部)
リオ五輪、東京五輪で採用が決まっている49erFX級。マッチレース、470などのクラスで活躍したトップ選手が転向しています。photo by Junichi Hirai
初日の成績は後記しますが、日本は順当な成績を取るチームがあれば、ワールドカップという大舞台に翻弄されるチームもありさまざま。そのなかで激戦を抜けだして快走したのは、暫定8位につける49erFX級の波多江慶/大熊典子(豊田自動織機)です。
日本初の49erFXセーラーとなる波多江/大熊は、昨春からスキフに乗りはじめた新生チーム。2013年は9月のプレISAFセーリングワールド、マルセイユの世界選手権に出場。国内では練習相手がいないという悩みがあるものの、自分たちで試行錯誤を重ね、今年から本格的に海外レースに挑戦します。
「他のチームに比べるとウエイトがある方なので、いまは軽風が課題です。でも、きょうはうまく走れました。スタートの失敗もカバーできたし、まわりを走っている顔ぶれが世界選手権の上位選手だったので驚きました。明日から風があがる予報なので、きょうとは違った展開になると思いますが、がんばります!」(波多江)
49erFX級は、リオ五輪に向けて新たに採用された女子ふたり乗りスキフです。マスト、セールをリサイズした49er級の小型版で、同じようにダブルトラピーズと巨大なジェネカーが特徴的なハイスピードボート&迫力あるセーリングが魅力です。
「日本でFXのようなスキフは一般的ではありません。今年1月、ニュージーランドで合宿していた時、現地のセーラーと話していて、わたしたちが「ずっと470に乗っていた。スキフには乗ったことないよ」と話したら、とても驚かれました。“スキフの経験もないのにFXを乗りこなす気なの?” ということのようです(笑)。ニュージーランドでは若い頃から29erに乗って、次のステップで49erやFXに乗るんだそうです。そうは言っても日本でスキフに乗る機会はなかなかないし、はじめる環境は大きく違っています」(大熊)
ニュージーランドの合宿は約1カ月に及び、その間にセールオークランド、ニュージーランドナショナルといった同国の大会に出場。また、2月の終わりには招待を受けて、シンガポールで開催されたエクストリームセーリングシリーズのエキシビジョンとしておこなわれた49erFXレースに出場し、優勝を飾りました。日本初の女子スキフチーム、波多江/大熊は、着実に成長しているようです。
波多江慶(左)/大熊典子。波多江は昨春に日本経済大を卒業後、豊田自動織機へ。大熊も昨春よりベネッセから移籍し、49erFX級で五輪出場を目標に活動しています。photo by Junichi Hirai
日本は世界から取り残されてしまった、のか?
バルクヘッドマガジン編集部は、プリンセスソフィア杯に来て大きな衝撃を受けました。前回、編集部がワールドカップを取材したのはロンドン五輪の前。つまり、正式種目に女子マッチレースとスター級があった頃です。この2種目は、リオ五輪から、49er級FX(女子スキフ)とナクラ17級(男女混合カタマラン)に変更されることになりました。
2年ぶりにワールドカップを取材して、まず驚いたのは、レース海面は、派手なメインセールとジェネカーがあちこちを飛び交い、アクションの激しいハイスピードボートが主役になっている、ということです。
この事実は、毎日のように海外ヨットレースの情報が入ってくる編集部は知っていたものの、自分の目で見て現実をまざまざと見せつけられました。その艇数の多さに「これからのセーリングはハイスピードボートが主役だぞ!」と断言された気分です。
このハイスピードボートとは、49er級、49erFX級、ナクラ17級で、プリンセスソフィア杯には、49er級が79艇、49erFX級は50艇、ナクラ17級は73艇(!)がエントリーしています。さらにウインドサーフィンのRS:X級があり、東京五輪で候補種目となっているカイトボーディングが入ったならば、「五輪=スピードセーリング」がキーワードになることは確かです。
東京五輪の種目が決まった時、わたしたちは、470級が残留したことをよろこびました。日本が得意とする種目が残ったことはうれしかったし、みなさんの気持ちも同じでしょう。リオ五輪、東京五輪へ向けて挑戦するには大きな価値のあることだと思います。
しかし、2年ぶりにワールドカップを観戦して「世界の流れは、こっちだよ」と頭を殴られたような感覚を覚えました。残念ながら日本は世界に遅れを取っています。それもかなりの差を広げられています。東京五輪を意識する時、わたしたちは「470級が残ってよかったね」と安堵するのではなく、「これからの五輪はスピードボートの時代になるから、その用意をしないといけない」と考えるのが正解のように思えます。
男女ミックスのナクラ17級。活動をはじめた日本チームはまだいません。photo by Junichi Hirai
大会初日、ダイジェスト映像。movie create by Kazushige Nakajima / Dailysailing.com
大会初日公式映像
プリンセスソフィア杯・大会初日暫定成績
470級男子 78艇参加
1. ARG Lucas CALABRESE / Juan de la FUENTE 4p
2. FRA Sofian BOUVET / Jeremie MION 4p
3. SWE Anton DAHLBERG / Fredrik BERGSTROM 4p
4. 松永鉄也/吉田雄悟 5p
39. 土居一斗/今村公彦 30p
44. 市野直毅/外薗潤平 33p
55. 飯束潮吹/八山慎司 41p
470級女子 47艇参加
1. UKR Anna KYSELOVA / Anastasiya KRASKO 1p
2. FRA Camille LECOINTRE / Helene DEFRANCE 1p
3. ITA Francesca KOMATAR / Sveva CARRARO 2p
13. 吉田 愛/吉岡美帆 8p
レーザーラジアル級 96艇参加
1. NED Marit BOUWMEESTER 2p
2. GBR Chloe MARTIN 3p
3. SWE Josefin OLSSON 3p
13. 土居愛実 11p
58. 冨部柚三子 46p
63. 蛭田香名子 50p
75. 田畑和歌子 67p
49er級 79艇参加
1. ESP Diego BOTIN / Pablo TURRADO 3p
2. FRA Mathieu FREI / Yann ROCHERIEUX 3p
3. GBR Dylan FLETCHER / Alain SIGN 5p
16. 牧野幸雄/高橋賢次 16p
49erFX級 50艇参加
1. GER Ann Kristin WEDEMEYER / Pia Sophie WEDEMEYER 3p
2. BRA Martine SOFFIATTI GRAEL / Kahena KUNZE 3p
3. DEN Jena Mai HANSEN / Katja SALSKOV-IVERSEN 4p
8. 波多江慶/大熊典子 6p
◎45 TROFEO S.A.R. PRINCESA SOFÍA
http://www.trofeoprincesasofia.org/
わたしたちは走り続けるセーラーを応援します
BULKHEAD magazine supported by
ベストウインド
パフォーマンス セイルクラフト ジャパン
SAILFAST
ウルマンセイルスジャパン
丸玉運送
ノースセールジャパン
入船鋼材
フッドセイルメイカースジャパン
アビームコンサルティング
トーヨーアサノ
銚子マリーナ
コスモマリン
Gill Japan/フォーチュン
JIB
一点鐘
エイ・シー・ティー
ハーケンジャパン
ファクトリーゼロ