全日本女子インカレ展望と解説 470級
9月21〜23日、蒲郡で開催される全日本女子インカレ。今回の「展望と解説」は、緻密なデータと辛辣な評論でお馴染みの外道無量院氏と、現場のレースを詳細に取材している、なまちゃんの二人がお伝えします。じっくりお読みください。(BHM編集部)
例年の葉山ではなく、今年は4年ぶりに蒲郡で全日本女子インカレが開催されます。写真は昨年の葉山大会より。photo by M.Hada
『全日本女子インカレ展望と解説 470級』
全日本インカレシリーズ第2弾は全日本女子インカレ。先週開催された全日本個人戦に引き続き、4年ぶりに蒲郡・海陽ヨットハーバーで開催される。個人戦に引き続き、学生ヨットレースのご意見番、外道無量院氏に解説していただく(今回は私なまちゃんも参加します)。今年の女子学生日本一を掛けた戦いはいかに?(文/なまちゃん)
外道無量院:今年で22回目を迎える全日本女子インカレ。多くは葉山で開催されてきたが、今年は蒲郡で行われる。第1回大会以来、20年以上に渡ってスポンサーをしていただいている日建・レンタコムグループには女子学生セーラーは、感謝してもしきれないだろう。
さて、それでは優勝大学持ち回りの優勝旗・優勝杯(関山杯)と、選手個人取り切りの優勝者・入賞者に贈られるダイヤモンドのネックレス他を争奪する「女子イン」をクラス別に有力選手を紹介しながら、展望と解説をしていこう。
外道無量院:昨年を1艇上回る33艇のエントリーがある。昨年、3回目の出場で初めて女子王座に輝いた山口祥世(長崎工4年)/谷口柚香(長崎工4年)組(早稲田大)は、4年前のインターハイ・ソロ優勝のコンビ。今年は女子インカレ史上4度目の2連覇が掛かる。
過去にこのクラスで2連覇を達成したスキッパーは山下美香(法政大・第2〜3回大会)、近藤 愛(日本大・第10〜11回大会)、岩崎めぐみ(第一経済大・第14〜15回大会)と3名いるが、岩崎を除く2名はクルーも同じ「同一コンビ」であったのも心強いデータだ。
今年は、誰もが一目置く断然の大本命。微・軽風域なら男子のトップクラスも脅かすスピードとボートコントロール術は、女子選手間であれば群を抜いているので はないだろうか。
2番手以下は混戦模様だが、スキッパーだけの「格」から言えば、1年生の時から同志社大のレギュラースキッパーを不動のものとしてきた豊田華世(別府青山4年)/原あやみ(同志社女子3年)組(同志社大学)が上位。
昨年、同一コンビで7位。今年の全日本個選では女子スキッパーとしては唯一の入賞者となる5位。当然、今回はクルーが男子から女子の原に代わるが、彼女がこの1年でどこまで成長しているか?
ただ、過去の歴史において、同志社大はあまり女子インカレに熱心でなかったのが気になる材料だ。全日本インカレを前提にチーム作りを考えた場合、この女子インでネックになるのはどうしても「470の女子クルー」という事になる。
歴史が証明しているように、ス ナイプではクルーが代わってもスキッパーの力で押し切れる場合もあるが、470の場合はそう簡単には行かないからだ。
なまちゃんの見解はどうだ?
なまちゃん:外道さん、お久しぶりです。対談は昨年の全日本インカレ以来ですね。どうぞよろしくお願い致します。
私の考えも外道さんと変わらないですよ。山口と豊田の首位争いは仕方ないですよね。どちらが上位かといえば、山口の連覇は揺るがない。高校時代からの谷口とのコンビネーションを考えたら圧倒的に上ですよね。 個人戦は残念な結果に終わってしまったけど、2日目の連続トップフィニッシュはさすがです。
しかも、今回の女子インより6レース以上1カットが導入されたでしょう? 昨年までのシステムよりはスタートでのプレッシャーから解放されますからね〜。このようなことからも断然有利だと思われます。
この2艇を破る可能性があるのは、波田地、長堀くらいじゃないですかね? 特に波田地は注目したほうが良いでしょう、関東秋インで優勝できたのだから…。しかし課題はいつも最初のレースが良くないことでしょうね。そこをうまく乗り切れれば優勝できる可能性はあるんですが。
長堀も全日本女子関東予選で山口と遜色ない走りはしてましたからね。優勝できる可能性は大いにありえますよね。
順風域までなら若林ははずせないよね。あ、若林も名前が友世だわ〜。キーワードは世界の「世」なのかなぁ〜〜?(笑) 2020年オリンピックも東京に決まったことだし、なんとなく縁起がいいかな?
あと鹿屋勢は注目したほうがいいかも。昨年6位の平野真未(邑久3年)は上位進出ができるのでは? クルーは、ルーキーでインターハイ準優勝クルー仲山景(光1年)だが、軽量なので強風域になったら少々苦しいか?
さらにルーキー勢スキッパーも注目ですね。昨年七尾インターハイソロ1〜3位が勢ぞろいですから。インターハイを連覇した日本大の中山由佳(唐津西1年)、準優勝した鹿屋体育大の仲山好(光1年)、3位入賞した明海大の林優季(1年羽咋工業)、FJ世界選手権で3位入賞した中央大の平原みちる(別府青山1年)。この4艇もどこまで進出できるか注目。それぞれ、総合的に見たらほぼ互角だと思います。
外道無量院:しかし、男子選手を退けて有力正規チームのレギュラーを張る女子スキッパー/クルーは他にもたくさんいる。
終わったばかりの全日本個人選手権で、両クラスに優勝者を出し、秋の全日本インカレでも本命視されそうな立場になった関西学院大で、スキッパー/クルー共に堂々のレギュラーを張る松浦朋美(長崎工2年)/中川千晶(長崎工4年)。
昨年の女子インは、それぞれ別の相手と組んで松浦17位、中川は3位。特に中川は昨年、2連覇を狙った松下結のクルーとして出場し、最終の第8レース直前まで優勝した早稲田ペアとは2点差の大接戦を演じた。
最終レースで高校時代の同級生コンビに突き放されたリベンジに燃えている事だろう。全日本個人戦でも全レース女子コンビで戦った中では最上位の13位は進歩している証拠だ。
中川のクルーワークは男子選手比べても遜色ないレベルにあるのも強み。チーム全体のとしての「勢い」も加味すれば、争覇圏内か?
他にも長堀友香(青山学院2年)/玉田玲奈(慶應湘南藤沢3年)組(慶應義塾大)、若林友世(藤嶺鵠沼2年)/新谷つむぎ(横浜創学館1年)組(日本大)、波田地由佳(碧南4年)/澤田しおり(大島海洋国際2年)組(明海大)、成田有沙(捜真女4年)/井上真梨子(成城学園2年)組(明治大学)、加瀬澤千帆里(磯辺2年)/安部美希(別府青山4年)組(法政大学)、平原みちる(別府青山1年)/松本遥香(唐津西2年)組(中央大)、向山千尋(高岡4年)/横山友美(清水東3年)組(金沢大学)、後藤沙織(別府青山4年)/岡崎文音(四天王寺4年)組(関西大)、神木蘭(県芦屋4年)/奥田菜月(雲雀丘学園2年)(甲南大)らは、少なくともスキッパーは全日本インカレに出てきそうな正規チームのレギュラーだ。
一方で今年、評価が非常に難しいのが日本経済大勢と鹿屋体大勢。
九州水域は女子インとしての予選もなく、ジュニア・高校時代や男子混合の場合を含めて私が実際にセーリングシーンを見た事があるのは山本佑莉(邑久1年)/畑山絵里(星林3年)の畑山だけだ。
松田のどか(本荘1年)/牟田琴美(唐津西1年)は全くの未知数。力のある選手が揃ったチーム内で普段の練習では鍛えられているだろうから、そこそこには走ってくるだろうが、レース経験という事でハンデがあるのも事実。
同じ九州勢の鹿屋体大勢については、平野真末(邑久3年)/仲山景(光1年)、仲山好(光1年)/牟田絢美(唐津西4年)という組合わせに疑問がある。
勝負をかけるならなぜ、昨年6位のコンビを解消し、エース格スキッパー平野のクルーをエース格クルーの牟田からルーキーにわざわざ乗せ代えてきたのだろう?
それでは、まとめに入る。
山口祥/谷口柚の2連覇濃厚。対抗と単穴の評価は、近北と関西の水域女王の4年生スキッパーの「意地」に期待した。実力未知数・組合せ変更理由不明の九州勢含め、他のチームが何処まで肉薄できるか?
※外道無量院の予想
◎・・・・・山口祥/谷口柚組(早稲田大)
〇・・・・・豊田華/原組(同志社大)
▲・・・・・神木蘭/奥田組(甲南大)
△・・・・・松浦/中川組(関西学院大)
△・・・・・波田地/澤田組(明海大)
△・・・・・長堀/玉田組(慶應義塾大)
△・・・・・後藤/岡崎組(関西大)
△・・・・・若林/新谷組(日本大)
△・・・・・鹿屋体大勢
※なまちゃんの予想
◎・・・・・・・・・山口祥/谷口柚組 (早稲田大)
○・・・・・・・・・豊田華/原組 (同志社大)
▲・・・・・・・・・波田地/澤田組(明海大)
△・・・・・・・・・長堀/玉田組 (慶應義塾大)
△・・・・・・・・・若林/新谷組 (日本大)
△・・・・・・・・・平原/松本組 (中央大)
△・・・・・・・・・平野/仲山景組 (鹿屋体育大)
注・・・・・・・・・仲山好/牟田組(鹿屋体育大)
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