エスプリvsマウピティ。勝因は大島への渡り
5月25、26日、相模湾で第63回大島レースが開催されました。「花の大島レース」の別名を持つこの大会は、相模湾を代表する初夏の島まわりヨットレース。葉山沖から熱海沖の初島、伊豆大島をまわり葉山まで戻る85マイルのロングレースです。(BHM編集部)
成績は既報の通り、大型艇の〈エスプリ〉(NYYC CLUB SWAN42)が、2着の〈マウピティ〉(COOKSON12m)に5時間の差をつけてラインオナー、総合優勝を勝ち取りました。
初島へ向けて22艇がスタート。ピンエンドマーク周辺は大混雑しました。photo by Junichi Hirai
艇団は三浦半島組と江の島・平塚組に分かれる
北東の風が弱まりつつある葉山沖で、大島レースがスタートしました。やや長のスタートラインは、初島方向に向けて直角位置(240度)に設定され、ランニング・スタートとなりました。
ほぼ全艇が団子状態になって、押し出されるようにスタートしましたが、全艇の最後尾からジャイブセットで三浦半島狙いを決めたのが〈エスプリ〉です(上写真)。その後、艇団は、各艇の戦略から三浦半島方面と江の島・平塚方面とにセパレートしました。
三浦半島組は、北東風の残り、さらに右回りでシフトする沖からの風を狙った作戦ですが、佐島方面まで伸ばしてもいまひとつ。江の島・平塚方面からジャイブを返してきた艇が先行します。
江の島・平塚方面に向かった〈マウピティ〉は、一気にフリートのトップへ。初島が近くなり、遠くに見えた〈マウピティ〉の白スピンを前方に見た〈エスプリ〉は、「まさか」と驚きを隠せなかったと言います。初島までのレグでは、文句なく〈マウピティ〉のコースが大正解でした。(詳しくは、後日発表される「どこでもヨット」の航跡図を楽しみに待ちましょう)。
2艇の戦いは、初島から大島までの「渡り」レグで勝敗が決まりました。初島回航後、伊豆半島寄りを攻めて、潮流と伊豆半島岸ベタの風をつかもうとした〈マウピティ〉に対し、相手艇をケアしながら、左に位置して大島ダイレクトへ向けた〈エスプリ〉。この周辺は、大島へ向かうレーンが一段違うだけで、走りが大きく変わる大島レースの重要ポイントです。
葉山から初島までは、岸寄りの風を掴んで走った〈マウピティ〉がトップ回航。敬意を表して本年度の「初島番長」の称号を授与いたします。初島番長とは、大島レースで初島までベストコースを引いた艇に与えられるバルクヘッドマガジン独自の名誉賞です。同艇のコースは本当に見事でした。photo by Junichi Hirai
東へ振れる風を〈エスプリ〉がつかむ
この分岐点となった初島回航後の大島への渡り。風は〈エスプリ〉から先に入りました。徐々に左へ風が振れて、〈エスプリ〉が〈マウピティ〉を引き離して行きます。夕方には大島元町沖へたどり着いた〈エスプリ〉は、カームに捕まることなく島裏の波浮沖へ。〈エスプリ〉の大島南側・竜王崎回航のロールコールは20時30分でした。〈エスプリ〉はそのまま南東の風を受けて、相模湾へ。深夜2時30分に葉山沖のフィニッシュラインを切りました。
「今回の大島レースは早かったね。波浮を過ぎてから風が止まって、しばらくのたうちまわったけど、それがなければ、まったく止まることのないレースでした。気持ちのいいセーリングができました」
とフィニッシュ直後、終始ご機嫌の〈エスプリ〉河本オーナーでした。4月後半の神戸横濱レースに続いてロングレースが続く〈エスプリ〉は、次回パールレース出場を予定しています。
さて、一歩前の風をつかんで独走した〈エスプリ〉に対し、後続艇団は大島周辺で大きな凪に捕まってしまいます。この無風地帯は、かなり長時間だったようで、選手の疲労はマックスに。レースは、ここで再スタートとなりました。
2位の〈マウピティ〉のフィニッシュタイムは7時29分、3位〈テティス4〉(FIRST40.7)が10時45分ですから、ずいぶんと差が開いたことになります。しかし、気温が上がった相模湾は、昼前から南風が入りだし、11時から午後1時すぎまでに続々と葉山へフィニッシュ。長い、長い、第63回大島レースの幕が閉じました。
◎大島レース実行委員会
http://blog.goo.ne.jp/oshima-rc
IRC Bクラス優勝の〈DEVATA2〉。photo by Junichi Hirai
参加艇のロールコールを受けて、深夜マリーナ内で本部船が準備をはじめました。photo by Junichi Hirai
徹夜で待機するレース本部にはこんな姿も。二交代制で参加艇からの連絡を待ちます。photo by Junichi Hirai
大島レースでは、大きな手書き表を作って、各艇の位置情報を書き込み、運営スタッフ全員が情報を共有できるように工夫しています。photo by Junichi Hirai
レース本部となった葉山マリーナヨットクラブ。photo by Junichi Hirai
深夜にフィニッシュした〈エスプリ〉。夜は満月。幻想的な景色が選手を魅了しました。photo by Junichi Hirai
わたしたちは走り続けるセーラーを応援します
BULKHEAD magazine supported by
パフォーマンス セイルクラフト ジャパン
SAILFAST
ウルマンセイルスジャパン
丸玉運送
ノースセールジャパン
フッドセイルメイカースジャパン
アビームコンサルティング
トーヨーアサノ
コスモマリン
Gill Japan/フォーチュン
JIB
一点鐘
VELOCITEK
エイ・シー・ティー
ハーケンジャパン
ファクトリーゼロ