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世界の危険地帯を走る、海の超人

※サンケイビジネスアイ紙で連載していたコラムを紹介します。記事は2012年1月時点のニュースをもとに書いたものです。


深夜シンガポール海峡を通過。遠くに町の明かりが見えるが立ち寄れるわけではない。長い航海は続く。Yann Riou/Groupama Sailing Team

コラム(78)
世界の危険地帯を走る、海の超人

 2011年11月にスペインをスタートした「ボルボオーシャンレース」が第3レグに進んでいる。この大会は世界9カ所に立ち寄りながら、約9カ月かけて世界一周を競う地球規模のヨットレース。第3レグの航程は、アラブ首長国連邦アブダビから中国海南省三亜まで4600マイルを走る。

 危険を伴う海域を走る第3レグは、1月中旬、緊張感漂うなかをスタートした。アブダビを出港して最初の難関はホルムズ海峡である。ここはイランによる海峡封鎖が警戒されているため、スタート直前まで大会そのものが中断してしまうのではないかという恐れがあった。

 さらに、アラビア海はソマリア沖に代表される海賊が出現する海域から「ステルスゾーン」とし、レース艇の位置情報を非公開とした。大会ウエブサイトでは、毎日写真や動画がアップされるが、どのチームがどこを走っているのか分からないという、ファンからすれば肝心な部分が抜けた、拍子抜けの報道がおこなわれたのである。

 しかし、海賊問題はヨットにとって深刻である。2010年2月には中東オマーン沖でアメリカ国籍のヨットが海賊に襲われ、4人が命を落とす事件という事件があったばかり。それを考えると、レース艇が位置情報を公開することは極めて危険であり、インターネット時代の世界一周ヨットレースのむずかしさを考えさせられた。

 ボルボオーシャンレースは、アラビア海を越えた所でステルスゾーンが終わり、通常のレースモードへ移行。艇団はスリランカ沖からインドネシアへ向かい、マレー半島に沿ってマラッカ海峡を南下した。

 細長いマラッカ海峡は、漁船や大型船の航路でもあり、レース艇は周囲の船との接近も警戒しなければならない。現地に詳しい人から聞いた話では、この水域は浮遊物(ゴミ)も多く、特に夜間は細心の注意を払うという。また、マラッカ海峡は、海賊が出現する場所としても知られている。

 1月末日の段階で、トップグループはシンガポール海峡を越えてマレー半島を回航、針路を中国へ向けて走っている。前回大会も同時期にこのコースを走ったが、50ノットの猛烈な嵐に見舞われ、3チームが船を破損するなど大荒れの展開となった。

 前回大会は、中国青島が寄港地だったが、今回は青島より南にある三亜であるためシンガポールからの距離は短いが、油断できない海域である。世界一周レースは常に困難の連続で、時には信じられないトラブルが起こる。このような困難を乗り越えて目的地へ向かう屈強なセーラーは、まさに海の超人といえるだろう。(2012.1 文/平井淳一)

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