脇永達也、二連覇達成!浜名湖モス全日本
10月20、21日、静岡県浜名湖で「第45回ZHIK全日本モス選手権」が開催されました。水中翼を備えたフライングモスが大きく話題になったのは、2000年オーストラリア・パース世界選手権でのこと。バルクヘッドマガジン編集部もはじめてワールドの映像を見た時、音もなくスタートするシーンを見て「なんだこりゃ」と衝撃を受けたのを覚えています。(BHM編集部)
モス全日本二連覇を決めた脇永達也選手。photo by Junichi Hirai
今年のモス全日本に集まったのは全国の腕利きモスラー13艇。浜名湖北西にあるビーチスマリーナを拠点に開催されました。選手の顔ぶれを見渡すと「2011年度ヨット馬鹿大賞」を獲得した後藤浩紀・日本モスクラス協会会長をはじめ、モス歴ウン十年のベテランから、マッハ2(現在主流のプロダクト製品)で乗り始めた選手までさまざまです。
ただし、どの選手にも共通の特長があって、全員が重度の「モスおたく」。驚異的なスピードに魅了されたクレイジーなセーラーばかりです。また、困ったことに、限定規格級(一部分だけルールがある、スピードを追求した自由度の高いクラス)という艇種だけあって、選手の自由度も高い。たとえば……、
「アメリカズカップみたいなアビームスタートって面白そうだからやってみない?」
「もう疲れたから、先にハーバーに戻ってるよ」
「次のレースは、下マークをゲートにしたらどうだろう?」
「アビームスタートは、面白いけど危なかった。いちばん最初に回航する選手が沈したら全員衝突するから。次はアップウインドのスタートに戻そう」
といった具合に、レース期間中でも選手の意向でコースが自由に変更してしまう、レース運営泣かせの集団といえます。これも、少人数でおこなわれるフリートのなせるワザで、運営するにもモス乗りのキモチがわかっていないとできません。とにかく選手たちは「自由」なんですから。。。
さて、大会初日は、風が弱く1レースのみ成立。2日目は北西風が8メートル近くまであがる絶好のフライング・コンディションとなりました。
上位を走るのは、事前に浜名湖入りしてトレーニングを積んだ3名です。アメリカズカップ、オリンピックセーラーであり前年度優勝を果たした脇永達也。31.4ノットの世界最速記録を持つ後藤浩紀。そして、SAILFAST社に所属し、メキメキと“モス力”をつけてきている鈴木晶友。
さらに、スタート〜1マークまでは最高のパフォーマンスを見せる大西隆浩、紅一点の河合潤が千葉稲毛より参戦。ジュニア時代から活動し、最近ではメルジェス24にも乗り込む中川剛志。49erからビッグボートまで、マイアミ仕込みの天才肌・阪間俊文。そして、船橋、橘、小倉、古谷(69歳!)の全日本王者組。高い向上心で挑む鈴木、クリントン両選手に加えて、2日目は会社の運動会(!)のため欠席した高橋洸志。と、ひと癖、ふたくせある、セーラーたちが集まりました。
モスのレースは、20分程度のショートコースが採用されています(1レグ600〜800メートル)。そのため、風がありさえすれば、そして選手の体力が続けば、1日10レース以上おこなうことも可能です。大会2日目は午前3レース。一旦ハーバーに戻って休憩し、規定時刻の午後3時までに3レースをおこない、選手たちは満足の1日となりました。
優勝は、2日目で横綱相撲を見せた脇永達也。木曜日から浜名湖入りして事前練習、うまくセッティング調整できたこともあり、大会2連覇を飾りました。
「アットホームなビーチスマリーナの雰囲気、浜名湖のすばらしコンディション。最高の全日本でした。今年は世界選手権に行けず、夏場から1カ月間まともにモスに乗れてなかったんで、前入りして練習しました。今回はしっかり風が吹いてくれてぼくに有利だったし、ノースセールジャパン製のセールもうまくマッチして、いいボートスピードが得られました。きょうの最高スピードは25.5ノット。セッティングを詰めていけば、もうちょっと速くなれると思っています。来年は三連覇を目指します」(脇永選手)
さわやかな秋晴れとなったモス全日本。いま日本で増殖中の種目だけに、次回のモス全日本(浜名湖開催予定)はさらなるエントリーが予想されます。これだけ見ていて迫力のあるヨットレースも珍しく、スピードセーリングの最先端をいくこのクラスに注目しているセーラーは少なくないでしょう。また、今年のワールドチャンピオンは若干21歳!日本でも10代、20代の若手の登場が期待されます。
脇永 vs 後藤のトップ対決。完敗を喫した後藤選手(写真左)は、閉会式で「来年は脇永選手の参加できない全日本スケジュールを計画したい」と自虐的スピーチ。しかし、負けた悔しさは相当のもので秘策を練っている模様です。photo by Junichi Hirai
大会の拠点となったビーチスマリーナ。1980年オープンのマリーナでのんびりしたプライベート色のある雰囲気は、まさにモス向きです。photo by Junichi Hirai
今回のモス全日本では、一部でアメリカズカップ・ワールドシリーズを模してアビームスタートが採用されました。相当あぶないですが、それを実際にやってしまうあたりはモス乗りならでは。photo by Junichi Hirai
クラブハウスの壁には、1984年に開催された浜名湖世界選手権のポスターが飾ってありました。高橋唯美画伯が描いたイラストには、なんと当時は存在しなかったフライングモスが! タダミさんは預言者? このイラストは海外でも話題になっているそうです。photo by Junichi Hirai
表彰台にあがる全日本トップ3。左から準優勝の後藤選手、優勝の脇永選手、3位の鈴木選手。photo by Junichi Hirai
◎日本モスクラス協会
http://moth-japan.org/
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