Loading

メルジェス32ワールドを分析する(1)

◎メルジェス32世界選手権を振り返る

 アメリカ・ニューポートで開催されたメルジェス32世界選手権が終了しました。この大会に日本から6チームが出場。これは先にも書きましたが、地元アメリカに次ぐ参加艇数で、日本のみならず世界的な話題となりました。バルクヘッドマガジンは、現地からレースレポートをお届けしていましたが、一段落したところで、毎日のレポートでは書ききれなかった部分を数回に分けて紹介したいと思います。(BHM編集部)


9月にニューポートで開催されたメルジェス32世界選手権。ボートの性能については、これまで記事で紹介してきましたが、実際の世界選手権はどんなムードで開催されてきたのか? フリートの雰囲気は? その辺を数回にわたって紹介していきます。photo by Junichi Hirai

「このクラスはとてもハードだよ。上位のドライバーはみなディンギーセーラーで、そのフィーリングが必要になる。キールボート出身のオーナードライバーにはハードルが高い。例えば、3年ぐらいレーザーに乗ったりするとか、ディンギーのトレーニングが重要だよね」(ケン・リード)

 レースが終わった後、〈エスメラルダ〉にタクティシャンとして乗艇したケン・リードさんと話していた時、メルジェス32というボートに対して上のようなことを言っていました。その感覚は、メルジェス32に試乗したことのある人なら、よくわかるでしょう。

 メルジェス32は、軽排水量によるハイスピードボートというカテゴリーから新世代キールボートと位置づけされています。メルジェス姉妹には、ほかに4〜5人乗りのメルジェス24、3人乗りのメルジェス20がありますが、32は2005年に登場後、アメリカ、ヨーロッパ(地中海側)で人気となり、両エリアを中心に活動がおこなわれています。

 デザイナーは、グランプリレースボートTP52の設計で人気のライケル/ピュー。シンプルなデッキレイアウト、バウポールを備え、巨大なジェネカーを使った迫力のあるダウンウインドセーリングが特長で、ボートスピードが20ノット前後に達することも少なくありません。このダウンウインドのスピードが、この艇種最大の魅力といえるでしょう。

 このクラスには数々の制限が加えられているのも特長です。厳格なワンデザインルール、クルーウエイト(最大629kg。平均78kgのクルーが8人乗るのがスタンダード)、セールの年間制作枚数が決められています。しかし、これらの特長はこのクラスを語る場合、それほど重要ではありません。いちばん特別であり、注目しなければならないのは、ヘルムスマンが「アマチュア・オーナー」であること。そして、ISAFクラシフィケーション・グループ3のプロ選手が、3名までと決められていることにあります。(……続く)


ケン・リード(Ken Read)。ボルボオーシャンレースでは〈PUMA〉スキッパーとして2回の世界一周を果たしたアメリカのスター選手。7月に世界一周を終えたばかりですが、94年からつきあいのある古巣の〈エスメラルダ〉のキャンペーンに快く参加。ビッグネームすぎて、メルジェス32ワールドでは少々浮いている感じはありました。「メルジェスには、はじめて乗るんだけどね…」とも。船に来るなり軽量化のためにマストトップのウォンド(風向風速等を測る計器)を取りはずし、水中に面したエンジンルーム・カバーのガタをなくすため、ボートマネージャーのチャーリーを何度も潜らせて修理させ、その徹底ぶりに驚かされました。「マストトップに風見を取り付けたい」という植松オーナーの要望に対して、「I hate」と一蹴。軽くひと悶着ありましたが、そこはオーナーの意見が勝って、風見を取り付けることに。艤装品ひとつ取り付けるにも一苦労です。「次のボルボオーシャンはどうするの?」と聞いたら、「うーん、まだわからない。今度の火曜日にPUMAと超重要な会議があるんだ」と言っていました。

バルクヘッドマガジン・メルジェス32世界選手権特集
2012メルジェス32世界選手権写真集

======================================
わたしたちは走り続けるセーラーを応援します
BULKHEAD magazine supported by
SAILFAST
ウルマンセイルスジャパン
丸玉運送
ネオネットマリン
ノースセールジャパン
アビームコンサルティング
トーヨーアサノ
SWING
コスモマリン
葉山セーリングカレッジ
Gill Japan/フォーチュン
JIB
一点鐘
VELOCITEK
パフォーマンス セイルクラフト ジャパン
エイ・シー・ティー
ハーケンジャパン
ファクトリーゼロ
CATEGORY:  INSHORENEWS