全日本学生女子ヨット選手権 結果と総括 (2)
スナイプクラス&総合
初日の3レースを終えて首位に立ったのは10-3-1着 14点と尻上りに調子をあげた龍谷大・塩田艇。続く2位には1-2-12着 15点の甲南・善本艇、3位には新艇に乗って気合を見せる東京海洋・舩原艇が15点タイで並ぶ。4〜5位も19点タイで関大・藤井艇、関学・樫原艇と続いた。以下も、9位までが首位とは10点以内という早くも混戦模様となった。(文/外道無量院)
2日目は、470とは異なり、1本(第4レース)のみが良い風の中でのレース実施となった。のこりの3本は軽風。第4レースは、ジャストスタートを決めた明治・山口艇(初日36点・10位)がスタート直後から大きく飛び出して第1マークから独走してトップフィニッシュを決めると、続く第5レースも連続でトップフォーンを鳴らし、第6レースも4着と猛チャージだったが、第7レースで15着(前にDSQがいて14点)と失速。
一方、初日トップにたっていた龍谷・塩田艇は10-13(前にDSQ艇がでて12点)と今ひとつの後の第6レースで、チャーリー・「C旗」が上がって変更になった第2上マークを間違えて旧マークを回り、痛恨のDSQで完全に脱落した。
初日2位の甲南・善本艇は3-11-11-7着、同3位の東京海洋・舩原は5-19(前にDSQ艇が出て18点)-9-19着、同4位の関学・樫原が15-3-5-4着となって上位陣が全く安定しない。第4、第5レースを6-9着とまとめた早稲田・山口艇も第6、第7レースを23(前にDSQがいて22点)-1着と大波賞なみのデコボコ。
一方、初日の3レースで40点 13位と大きく出遅れた関東チャンプ艇の日大・持田艇が7-2-3-3着と一挙に浮上してきた。第4、第5レースを13-18(前にDSQが出て17点)着と崩れた関大・藤井艇も、第6、第7レースは1-6着と息を吹き返す。
結果、押し出されるように首位にたったのは、関学・樫原艇で46点、2位には甲南・善本艇・47点、3位日大・持田艇・55点、4位・関大・藤井艇・56点、5位・明治・山口艇・56点、6位・早稲田・山口艇・62点という状況で最終日の1レースを残す形で終った。
ここで陸に上がってから、運営役員側から初日の470アンカーロープ・0.5mmの件に続き、残念に思う行為があった。レース委員会から、首位を1点差で追う甲南・善本艇に対し、何とも不可解な「プロテスト」が出たからだ。
その内容は、「マークタッチ後、ペナルティー解消のための360度回転中、後続艇の進路を妨害した」と言うもの。その「妨害された艇」からは、その時に「プロテスト」の声も掛けられず、また上陸後にその艇から善本艇へのプロテストも出されていない。
マークタッチしてペナルティーを解消しないまま行ったならともかく、「妨害された」とする艇からは何のプロテストの手順(『プロテスト』と声を掛ける」〜「フィニッシュ後に運営艇に申告する」〜「抗議書を提出する」)もなされていない。
このレース委員会の不可解な「プロテスト」は却下となったが、そのおかげで、当然に夜遅くまで無駄な待ち時間を含む審問になり、1点差で優勝を争うナーバスな場面で翌日への影響が心配された。
さて、雨の最終日。首位に立つ関学・樫原艇は、自身のクラス優勝とともに、3連覇がかかる総合を考えると前を行く470クラスのスピンの並び順も気になる状況だ。また、一方で1点差で追う甲南・善本艇は前日の審問で疲労困憊か?
そんな中、第1マークをトップで回ったのは明海・田上艇。続いて関大・田中艇、関大・加藤艇、早稲田・山口艇、関大・藤井艇、甲南・善本艇など。首位に立つ関学・樫原艇は10番手と、クラス優勝とともに、関大、早稲田に7点差と追い詰められた総合優勝争いでも苦しい展開になった。このままの順位でフィニッシュすると、クラス優勝は甲南・善本に、そして総合優勝も関大の逆転優勝となる。
総合では、早稲田にまで抜かれて3位転落までの悪夢も脳裏をよぎったに違いない。しかし、コース引きから状況判断まで担当するクルーの末繁が冷静だった!?
この艇を見る限り、スキッパーの樫本は、風に合わせて舵を引くだけのヘルムスマンに徹し、あとの事はクルーの末繁が引き受けているように見えたからだ。無理に前の甲南・善本艇に仕掛けず、「7点差」ある総合の方を考えてコースを引いたように見えた。ようは、関大や早稲田がトップで入ろうと、7着以内で入れば総合は1点差で逃げ切れると冷静に考えたのだろう。
スナイプ級優勝の樫原/末繁(写真左)。photo by なまちゃん
結果、目論み通りに7着で入ると同時に、クラス優勝を争う甲南・善本艇が9着と自滅してくれたおかげで、思いもよらなかったクラス優勝という「オマケ」まで付いてきたのだ。
女子インカレ史上初の「総合3連覇」が、関西学院により達成された。スナイプ優勝が「オマケ」というのは、私のカングリ過ぎだろうか? いや、トップフィニッシュもなく、8レースで53点・1レース平均で6.625着という何ともハイスコアの優勝である。クラス優勝よりも総合優勝を考え、「堅く堅く」走った結果、クラス優勝というご褒美が転がり込んだのではないだろうか?
総合は、優勝した関学から2点差で2位・関大、さらに2点差で3位・早稲田という稀にみる大接戦であった。21年に及ぶ全日本女子インカレも、「ダイヤモンド」がかかるクラス優勝争いとともに、「総合」でも各校が年間目標とするに値する戦いになっていた、と実感した次第であった。
念願の「ダイヤモンド」を手中にした470クラス優勝の早稲田、総合3連覇達成とスナイプの優勝旗を2年ぶりに取り戻した関西学院の諸君、おめでとう。
また、1年間の活動自粛・休部状態に耐えて健闘した関大は、両クラスで複数艇が入賞するという快挙を成し遂げた。甲南・善本艇は最後日の最終マークまで母校に「初の全日本タイトル」の夢を見させてくれる健闘を見せた。
来年の全日本女子インカレは、蒲郡で開催される。海陽ヨットハーバーで会おう!
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