Loading

インカレ個人戦最終日。土居、西村優勝!

 9月2日、インカレ個人戦最終日。雨、曇天の蒲郡沖は低い雲に覆われて風弱く。選手たちは午前9時の開始を目指して、一旦海に出ますが、スタート前に風が落ちて無風状態になってしまいました。ハーバーに戻って陸上待機が続くと思われた矢先、南東風が徐々に吹き出し、海上は最終決戦にふさわしい舞台が整いました。(BHM編集部)


低い雲に覆われた海陽ヨットハーバーの出艇風景。この雲が風を呼び、インカレらしいドラマを演出しました。photo by Junichi Hirai

 風は6、7メートルで、ブローの強弱ある海面です。注目の個人戦王者決戦は、日経大対決となる、土居/石井対今村/外薗の戦いからはじまりました。両者とも気合十分です。風上有利のスタートで本部船寄りに位置した2艇に緊迫したムードが漂います。スタート直前になって、土居がスルスルと風下にいる今村に近づいていきました。土居は風上後方、今村は風下へ。2艇は近い位置でベストスタートを切ります。

「(相手を)意識していたわけではなく、上有利のプラン通りのスタートです。風上から出て、右海面を使おうと。スタートしてタックして右へ。でも、コースが中途半端になってしまいました。思い切りが足りず、左に返すタイミングが早すぎました。結局、右奥まで行った集団にもやられて…」(土居)

 左海面をめいっぱい使った今村艇は、上マークを5位回航。やや遅れて土居艇が9位回航。今村は大きく膨らむ上〜サイドマークレグを落ち着いてプロパーコースを選択。ここで2艇抜いて2位へ。今村/外薗は、後続の土居の位置を当然確認していたでしょう。彼らにとっては1位を取るしか策はありません。今村は、トップの同志社大を射程圏内に入れるとアップウインドでトップに踊り出ました。

 しかし、土居は得意風域で順位を下げません。下げないどころかグングンと追い抜きをかけます。フィニッシュは今村1位。フィニッシュ後の今村は、後続を振り返ると大きな叫び声をあげました。土居は後続4番目に走っているのが見えます。今村/外薗の逆転ならず。土居/石井の優勝が確定した瞬間です。

 帰着後の今村はどうしても欲しかったタイトルを手に出来ず「悔しいです」とひとこと。しかし、本大会の走りは、日経大リーダー艇の土居と遜色なく、すばらしい走りを見せたことに間違いありません。470級優勝は土居一斗/石井佑典。土居は、昨年に続いて二連覇を達成です。

「最終レースは相手を意識しないという計画でした。風があったんで、普通にいけばいい、と。でも、1上の順位で、かなり焦りました。今村さんたちが、そこからさらに上がっていくことも分かっていたし。勝ててよかったです。今回は、思ったよりいい風が吹いてくれたのが幸いでした。ミスは数え切れないぐらいしたけれど、なんとか。軽風レースが自分たちの課題です。それを(全日本インカレの)琵琶湖までに克服したい。個人戦は来年が最後になります。もちろん三連覇を狙います!」(土居)

 続くスナイプ級の西村/中川(同志社)vs 加藤/櫛田(早稲田大)の優勝を争う戦いでも全日本にふさわしいドラマが起こりました。上マークを3番手でまわった加藤に対して、西村は15番回航。加藤はそこから怒涛の追い上げを見せ、サイド〜2マーク〜下マークでトップに立ちます。しかし、西村も得意の風域で順位を着実に上げてきました。加藤が下マークに到達する頃、西村は8番まで上昇していました。

 「このままでは負ける」と考えた加藤の取った作戦は、自らポジションを下げ、西村とのマッチレースに持ち込むこと(しかし、この時点では勝つためのノルマ(6点差)をクリアしている加藤が有利。西村が追い上げ、6点差以内に必ず入ると読んだ上の行動ということになります)。ここから2艇のタッキングマッチがはじまります。タッキングマッチを仕掛けられた西村は、スタート前から「何かを仕掛けてくるだろう」と思っていたといいます。西村はこのマッチ合戦に競り勝つと、今度は風下側についた加藤がラフィング。大きく避けた西村は、ここで加藤にプロテストを掛けてペナルティーを与えます。ここで勝負はつきました。西村は先行フィニッシュして優勝が確定したかに見えましたが…。

 陸上に戻り、加藤は西村に対して、(ラフィング時の)風下の権利を主張して抗議を提出。審問により決着がつけられることになりました。長い審問の末でた答えは、抗議却下。同志社大、西村/中川の優勝が決まりました。

「2上のタッキングマッチはキツかったです。そして、審問の結果が出るまで本当にドキドキでした。勝ってうれしいです。やっと優勝できました。いままで個人戦には3回出場していて、2年前に5位、去年3位。今回は、同志社大の仲間も走ってくれて、いい結果で終えることができました。同志社はボートスピードに自信があります。琵琶湖対策も練っています。楽しみにしていてください!」(西村)

 日経大の土居と同志社大の西村による、本命チームが優勝を飾ったインカレ個人戦。他校は秋の全日本インカレまでにどのような策を練ってくるでしょうか? 全日本インカレは10月31〜11月4日まで、琵琶湖柳が崎ヨットハーバーで開催されます。

◎全日本インカレ個人戦 最終成績
470級 参加46艇
1. 土居/石井(日本経済大)12点
2. 今村/外薗(日本経済大)13点
3. 岩下/磯崎(日本経済大)41点
4. 山本/高瀬(日本経済大)41点
5. 村田/東野(同志社大)50点
6. 波多江/畑山(日本経済大)57点

スナイプ級 参加46艇
1. 西村/中川(同志社大)17点
2. 加藤/櫛田(早稲田大)20点
3. 横田/船橋(明治大)25点
4. 若竹/末繁(関西学院大)55点
5. 野瀬/杉原(同志社大)65点
6. 鈴木/薄田(鹿屋体育大)75点

シングルハンド級 参加12艇
1. 元津大地(鹿屋体育大)10点
2. 山田佳明(香川大)16点
3. 高橋友海(早稲田大)21点

◎愛知県ヨット連盟(成績等)
http://www.ayf.jp/


470級優勝の土居(右)、石井。クルーの石井は骨折の完治間近の状態で踏ん張りました。「自分は初優勝です。なにより練習量が足りなかったんで、動作の面でも不安がありました。でもスキッパーに支えられて、優勝できてよかったです」(石井)。photo by Junichi Hirai


4年コンビの今村/外薗。「ターニングポイントは2日目の午後だったと思います。セッティングに惑わされて(土居に)得点差を広げられてしまった」(今村)。photo by Junichi Hirai


スナイプ級優勝の西村(右)、中川。1年生の中川は「「体力的な面では、最終日に近づくいて疲れでも出てミスが出てしまった。苦しい戦いだったけれど、優勝できて本当にうれしいです」とコメント。西村は兄の裕司(2005年)に続く兄弟優勝。photo by Junichi Hirai


最後の最後まで勝利に貪欲に戦った早稲田大の加藤/櫛田。審問の結果が出た後、優勝をたたえ、西村と握手を交わした加藤の姿が印象的でした。この悔しさが次につながります。photo by Junichi Hirai


シングルハンド級優勝の元津大地。「来年につなげられるようにと思ってシングルハンドに出場しました。優勝できてよかったです。それに、自分の原点というか、シングルハンドの大切さを思い出すいい機会になりました。ただ、自分のモチベーションは470です。日経大の圧勝を見て、九州予選を突破できたら入賞に近いということが分かりました。鹿屋体育大は、毎日海に出られる恵まれた環境です。これから基礎固めの練習をします」photo by Junichi Hirai


470級最終成績


スナイプ級最終成績


シングルハンド級最終成績

◎バルクヘッドマガジン写真集「2012全日本インカレ個人戦

======================================
わたしたちは走り続けるセーラーを応援します
BULKHEAD magazine supported by
SAILFAST
ウルマンセイルスジャパン
丸玉運送
ネオネットマリン
ノースセールジャパン
アビームコンサルティング
トーヨーアサノ
SWING
コスモマリン
葉山セーリングカレッジ
Gill Japan/フォーチュン
JIB
一点鐘
VELOCITEK
パフォーマンス セイルクラフト ジャパン
エイ・シー・ティー
ハーケンジャパン
ファクトリーゼロ
CATEGORY:  COLLEGEDINGHYINSHORENEWS