世界一のドラマ。ラジアル級を中国が制する
終盤を迎えたロンドン五輪9日目はレーザー級、レーザーラジアル級のメダルレースがおこなわれました。ラジアルは中国のリーシャ・シュー、レーザー級はオーストラリアのトム・スリングスビーが優勝を飾りました。(BHM編集部)
晴れ渡るウエイマス沖は15〜17ノット。ヨットレースは風でおこなわれる競技ゆえに、時には不平等が起きることもあります。しかし、ロンドン五輪中のウエイマスはおおむね満足の風が吹き続け、選手にすれば戦う舞台として申し分ないでしょう。
注目されたラジアル級メダルレースは、中国、オランダ、ベルギー、アイルランドのトップ4が、1点差内でひしめきあうという稀にみる激戦となりました。得点が2倍になるメダルレースで1点差はないに等しく、先にフィニッシュした順番でメダルを手にするというストーリーです。
中国のスタートはベストには程遠く、バッドエアを避けてタックするとほぼ全艇の後ろを通って右海面へ。艇団は(なにかのセオリーがあるのでしょう)まとまって左海面へ向かうため、中国の右展開は、一見捨て身の策のように見えました。しかし、答え合わせは間違いどころか大成功です。
ポートアプローチするアイルランドに続いて2位で上マークを回航すると一気に追い抜いて首位へ。しかし、第2レグの中盤で42条違反を取られ、回転ペナルティを施行しますが、それでも神がかり的なスピードでトップを死守します。
また、ダウンウインドで驚異的なスピードを見せたオランダが、1上マーク7位から3位へ浮上。また、ライバル・ベルギーも上位に上がって来ました。強風コンディションとあいまって、メダルレースは大迫力の展開となります。
中国は右展開を取り入れ、後続を寄せ付けません。トップをキープしたまま、最終レグへ。右手を大きく上げながらフィニッシュラインを通過して、金メダルを獲得しました。リーシャは、銅メダルを獲得した北京に続いてに大会連続のメダルです。
続いておこなわれたレーザー級は、金メダルを確実視されていたオーストラリアのトム・スリングスビーが、2位のキプロスをスタート前から執拗すぎるほどにマーク。マッチレースさながらの追い込みで、キプロスに前を走らせません。オーストラリアは北京五輪でも大本命でしたが、プレッシャーに押しつぶされてしまい、メダル獲得に失敗した経緯があります。しかし、圧倒的な強さで金メダルを獲得して汚名返上です。フィニッシュ直後、目頭を抑えるトム・スリングスビーは何を思ったでしょうか。
日本選手の活躍も見所がありました。49er級の牧野/高橋が上マークをトップ回航。確実に順位を守りますが、王者・オーストラリアに追撃されて2位へ転落。しかし、順位を保守して2位フィニッシュを果たしました。今回の最高順位であり、本人たちも満足のレースができたことでしょう。続く、49er級最終レースでも10位を獲得し、最終成績を18位とし、ロンドン五輪を終えました。
大会10日目は、470級男女のフリートレース、さらにRS:X級男女のメダルレースがおこなわれます。本日もライブ中継が放映されます。世界最高峰のヨットレース、選手たちの超絶した技術、そして世界一のヨットレース・ドラマをぜひ御覧ください。次回は4年後でしか見られません!
◎NHK ネット生中継(過去のダイジェスト映像もみられます)
http://www1.nhk.or.jp/olympic/live/
フィニッシュの直前、握りこぶしを大きく上げて歓喜する中国のリーシャ・シュー(24歳)
激戦のラジアル級スタート。風下位置のアイルランド、オランダが好スタートを切りました
メダルを逃し、コーチボートに泣き崩れるアイルランド。photo onEdition
49er級第14レースでポートスタートから右海面を使ってトップ回航。2位フィニッシュを決めた牧野/高橋。あっぱれです
牧野コメント「今回は相手の戦力、自分たちの戦力を分かった上でレースに出てるので、これぐらいの風だとこれくらいかなと思う反面、自分の気持ちとしてはもう少し戦えるつもりでいた。これが実力かな…。本番前はなかなか走りも良かったが、なかなか厳しい戦いだった。3年半やってきて、自分達がまだできてない部分もあって、これが実力かな…。このコンビを組んだ時は、ネイサンのように最終日をまたなくても優勝つもりで始めたので悔しいです」
高橋コメント「牧野くんのが言ったことが全てで、これが現実で、気持ちとしてはもっと行けるつもりでいたが、これが僕らの全てだった。オリンピックでこのような結果になるのは自分たちの実力がこのレベルだったからだと思う。ただ、自分達も全力でいけたので悔いはない」
レーザー級のメダリスト。左からキプロス、オーストラリア、スウェーデン
ラジアル級のメダリストたち。左からオランダ、中国、ベルギー。極限までアスリート化するレーザー、ラジアルのメダル争いに、日本選手が入り込む日は来るのでしょうか? 両クラスのメダルレースはそれほど衝撃的で、圧倒的な力がぶつかりあう戦いとなりました
◎ロンドン五輪成績
470級女子 参加20艇
1. GBR (6)-1-4-6-1-6- 18.0p
2. NZL 2-6-2-5-(10)-4 19.0p
3. NED 1-8-6-4-2-(18) 21.0p
11. 近藤/田畑 9-4-17-(19)-11-9 50.0p
470級男子 参加27艇
1. AUS 3-(9)-2-1-1-1-3-5 16.0p
2. GBR 2-1-4-2-3-4-1-(6) 17.0p
3. ITA 6-(26)-1-8-6-13-8-4 46.0p
18. 原田/吉田 19-12-(25)-12-7-11-21-17 99.0p
49er級 参加20艇
1. AUS 8-1-2-4-2-1-(10)-6-9-5-4-1-1-1-3 48.0p
2. NZL 9-7-1-7-3-5-9-11-7-2-1-2-(15)-6-6 76.0p
3. DEN 2-4-14-6-(16)-15-5-7-13-6-16-4-4-3-9 108.0p
18. 牧野/高橋 16-13-17-14-(18)-11-18-16-18-18-14-15-6-2-10 188.0p
レーザー級 参加49艇
1. AUS Tom Slingsby 43.0p
2. CYP Pavlos Kontides 59.0p
3. SWE Rasmus Myrgren 72.0p
4. CRO Tonci Stipanović 77.0p
5. NZL Andrew Murdoch 87.0p
6. GER Simon Grotelueschen 92.0p
7. GBR Paul Goodison 93.0p
8. URU Alejandro Foglia 106.0p
9. GUA Juan Ignacio Maegli Aguero 108.0p
10. FRA Jean Baptiste Bernaz 119.0p
レーザーラジアル級 参加41艇
1. CHN Lijia Xu 35.0p
2. NED Marit Bouwmeester 37.0p
3. BEL Evi Van Acker 40.0p
4. IRL Annalise Murphy 44.0p
5. GBR Alison Young 60.0p
6. LTU Gintare Volungeviciute Scheidt 82.0p
7. FIN Sari Multala 94.0p
8. USA Paige Railey 104.0p
9. CZE Veronika Fenclova 105.0p
10. MEX Tania Elias Calles 116.0p
32. 土居愛実 29-32-31-27-26-(36)-30-22-27-29 253.0p
RS:X級男子 参加38艇
1. NED 1-1-1-3-1-2-1-2-1-DNF 13.0p
2. GBR 5-7-5-1-(10)-1-2-3-9-2 35.0p
3. GER 3-3-4-9-2-5-6-1-(15)-13 46.0p
28. 富澤慎 25-25-25-29-24-26-(34)-30-21-4 209.0p
RS:X級女子 参加26艇
1. ESP 2-1-1-1-5-2-3-DPI-6-3 24.0p
2. ISR 1-3-7-2-2-(11)-2-1-9-11 38.0p
3. FIN (8)-7-3-4-4-4-8-2-5-1 38.0p
21. 須長由季 19-23-22-22-22-(24)-22-20-18-12 180.0p
フィン級 参加24艇
1. GBR Ben Ainslie 46.0p
2. DEN Jonas Hogh-Christensen 46.0p
3. FRA Jonathan Lobert 49.0p
4. NED Pieter-Jan Postma 52.0p
5. CRO Ivan Kljakovic Gaspic 55.0p
6. SLO Vasilij Zbogar 63.0p
7. NZL Dan Slater 83.0p
8. ESP Rafa Trujillo Villar 86.0p
9. SWE Daniel Birgmark 90.0p
10. FIN Tapio Nirkko 92.0p
スター級 参加16艇
1. SWE Fredrik Loof / Max Salminen 32.0p
2. GBR Iain Percy / Andrew Simpson 34.0p
3. BRA Robert Scheidt / Bruno Prada 40.0p
4. NOR Eivind Melleby / Petter Morland Pedersen 63.0p
5. NZL Hamish Pepper / Jim Turner 70.0p
6. GER Robert Stanjek / Frithjof Kleen 70.0p
7. USA Mark Mendelblatt / Brian Fatih 71.0p
8. POL Mateusz Kusznierewicz / Dominik Zycki 72.0p
9. FRA Xavier Rohart / Pierre-Alexis Ponsot 86.0p
10. IRL Peter O’Leary / David Burrows 95.0p
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