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タイガーシャークとフリーマントルドクター

※サンケイビジネスアイ紙で連載していたコラムを紹介します。


ロンドン五輪の出場国を決めるセーリング世界選手権。毎日吹き上がるフリーマントルドクターが最高の舞台を演出してくれた。撮影 平井淳一

コラム(72)
タイガーシャークとフリーマントルドクター

 日本と季節が反対になる南半球は、日本の冬にあたる季節がサマーシーズン。セーラーたちは、あたたかい気候を求めて渡り鳥のように南へ移動する。アメリカ・マイアミ、カリブ、オーストラリア、ニュージーランドといった場所は人気で、毎年大きなセーリングイベントが開催されている。

 西オーストラリア州フリーマントルで、ロンドン五輪の行方を占う、ISAFセーリングワールドが開催された。4年に一度おこなわれるこの大会は、セーラーたちが頂点を目指す世界選手権であり、ロンドン五輪の出場国を決める重要な意味を持つ。出場するのは、80カ国、1200選手。全10種目で850艇が集まり、二週間を掛けて世界チャンピオンを競う。

 この大会がおこなわれるフリーマントルは、セーラーにはとても馴染み深い海辺の町である。その理由は、ここで1987年にアメリカズカップが開催されたからだ。当時、アメリカズカップがおこなわれた港はチャレンジャーハーバーと名づけられ、いまでは海を見渡すレストランや人気のパブが並んでいる。

 フリーマントルで世界大会が頻繁におこなわれる理由は、セーリングに向いた風が吹くからに尽きる。夏になるとインド洋方向から「フリーマントルドクター」と呼ばれるシーブリーズが吹き、この安定した強風がセーリングに最適なのである。どうして風にドクターと名付けられたのか不思議に思い、地元のセーラーに名前の由来を聞いてみた。フリーマントルの夏は40度近くまで気温が上がる。外に出るのも躊躇する猛暑日の午後、海から吹いてくるシーブリーズが気温を下げ、涼しさを運んでくれる。この風を、熱くなった陸地を治療する医者に例えて、フリーマントルドクターと名付けられたのだそう。

 地元のセーラーには最高のサマーシーズンだが、今年は大会が開催される1カ月前に、気にせずにはいられない事故が起きた。体長4メートル以上にもおよぶタイガーシャーク(人食いザメ)が浜辺の近くまで侵入し、2人が犠牲になってしまったというのだ。以前、この場所に来た時、タイガーシャークと格闘したという人の記念写真を自慢気に見せられたことがある。大会期間中にも、防波堤を警備していた人からサメを目撃したという情報が入り、毎日海へ出ている選手や関係者は気が気ではない。タイガーシャークに襲われたら、フリーマントルドクターでも治療はできないだろうから。(2011.12 文/平井淳一)

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