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世界一周レースを10万人のセーラーと競う

※サンケイビジネスアイ紙で連載していたコラムを紹介します。


10万人以上と世界一周をゲームで競うボルボ・オーシャンレースゲーム

コラム(71)
世界一周レースを10万人のセーラーと競う

 11月にスタートしたボルボ・オーシャンレース第1レグは、艇体トラブルにより、6チーム中3チームがリタイアする波乱の幕開けとなった。世界一周レースの場合、リタイアしても、船を修理するだけではなく、次のスタート地点まで船を運搬しなければならない。大きな港が近くにあれば対処も早いが、今回の〈プーマ・オーシャンレーシング〉のように大西洋の真ん中でリタイアしたら最悪だ。陸路や空路で移動というわけにもいかず、結局、次のスタート地点まで、海から向かわなければならない。

 ボルボ・オーシャンレースでは、ファンのためにいろいろな催し物が用意されている。ウエブサイトでは、出場艇の航海計器のデータを受けて、リアルタイムの走行状態を公開したり、フェイスブックやツイッターを使って、海を走っているチームから直接情報が発信されたり、時にはライブ中継もおこなわれる。

 そのなかでも、ファンの注目を集めているのが、ボルボオーシャンレースゲームという、ヴァーチャル世界一周レースゲーム。前大会では最終的に10万人が参加したこのゲームは、パソコンやスマートフォンを使い、本当のレースと同じ時間にスタートし、同じコースで世界一周を競う。今回は第1レグが終わった時点で約9万人が登録した。全航程が終わる第9レグまでには、前回大会を大きく上まわるファンがこのレースに参加するだろう。

 このゲームの魅力は、仮想ゲームとはいえ、参加者に与えられるボートがレースで戦うものと相応の性能を持っていること。セールはオプションで6種類も用意され、風向や風の強さに合わせて自らの判断で交換する。また気象条件は12時間ごとに更新され、現地で吹いている本当の風が反映されている。赤道では無風帯となり、南氷洋に近づくと強風が吹き荒れるのだ。荒天でセールの選択を誤れば、スピードは落ちるし、破けてしまうこともある。天気予報もあり、先の天候を読むなど航海そのもの。また、時々その天気予報がハズれてしまうのも実際とよく似ている。

 10万人以上が参加するとあって、ゲームにもかかわらず大会にスポンサーがつくことになった。賞は各航程ごとに用意され、スポンサーの高級腕時計やアラブ首長国連邦への旅行、総合優勝者にはボルボ社の車が贈られる。

 だれもが行けるわけではない世界一周の夢をボルボ・オーシャンレースゲームが叶えてくれた。さらに同じ夢でつながる世界10万人のセーラーと戦うのも魅力的だ。実際の海で10万人とヨットレースすることは不可能なのだから。(2011.12 文/平井淳一)

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