白熱!大学マッチ最終日レポート
3月11日、愛知県西尾市・日産マリーナ東海で開催された選抜大学対抗マッチ最終日。朝から冷たい北西が吹く西尾沖は、学生たちに最高の舞台を用意してくれました。風は12ノット前後、時より15ノット近いブローが入るコンディションです。ボートの動きも昨日より素早くなり、またクルーワークも試される1日となりました。(BHM編集部)
まず、予選第9フライトの注目は、早稲田対慶應の「早慶戦」です。早慶戦は野球やラグビーでおなじみですが、ヨット版早慶戦も関係者を中心に大いに盛り上がるビッグイベントです。今回はマッチレースというこれまでにないジャンルですが、選手たちはもちろん特別の意識を持って戦っています。前日、両校に話を聞いたところ「(OBから)早稲田だけには(慶應だけには)負けるな、と言われて来ました」とズバリ。宿命のライバルは種目を変えても気持ちは同じのようです。
先攻したのは慶應大です。アーリーエントリー(時間前にエントリーしてしまった)した早稲田大に、あっけなく1ペナルティーが与えられました。しかし、早稲田大は落ち着いています。うまく慶應をコントロールして先攻スタートしてすると、その差を保って上マークへ。
大接戦で盛り上がった早慶戦。右が早稲田大です。photo by Junichi Hirai
しかし、ダウンウインドで後方の風をつかんだ慶應大が、一気に早稲田大に追いつきます。両者とも並んでマークへ近づき、至近距離で同時にスピンダウン。しかし、ダウンの瞬間、慶應大のスピンが風下側の早稲田大に接触してしまいました。早稲田はペナルティーを取り返してイーブンに持ち込むことに成功し、さらに先行してフィニッシュ。大学マッチ早慶戦の軍配は、早稲田大にあがりました。
予選で気を吐いていたのは吉田工作チームです。同志社大・西村とのOP時代から続く因縁の対決を制して、全勝でラウンドロビンを終えました。吉田チームは昨年のオーストラリア、ロシアの海外遠征メンバーを含む神戸大、甲南大の仲間とチームを組んでいます。
2位で予選を通過したのは、安定したドライブが際立った金沢大(勝山大輔スキッパー)です。マッチレースの技術はないながらも、素直なセーリングで勝ち抜いてきました。全日本インカレで“国立大旋風”を巻き起こしている金沢大は、4年とOBのチーム構成で、女子ふたりが乗艇しています。本大会には、日本経済大に2人、吉田チームに1人、慶應大に1人、日本大に2人の女子が乗り込みました。みな男子以上に元気で、重要なポジションを任されていたのが印象的でした。
午後からはじまった決勝では一旦風が弱くなるものの、安定して吹き続け、マッチ経験の豊富な吉田に有利なコンディショに。ボートをうまく操り、金沢大をあっさりとカタメてスタートラインのエリア外へ。その後も有利な位置をキープして先攻し、その差を広げていきます。吉田チームは、金沢大にマッチレースをさせる隙を与えず、2連勝し、大学マッチ優勝を決めました。
予選から決勝まで全勝優勝を果たした吉田セーリングチーム。吉田工作、土井航平、善本万里子、有馬忠嗣、山下大吾。photo by Junichi Hirai
「風が弱くなれば、みんな上手いのはわかっていたので、風の読み、コース勝負になったら互角の戦いになると予想していました。ぼくたちは、いかに“マッチレース”に持ち込めるかがポイントで、きょうはぼくたち向きの風が吹いてくれたと思います。大学に入ってマッチの世界に入り、お兄さん、お姉さんセーラーから、マッチレースを教えてもらったり、海外遠征に出させてもらったり、いろいろなことを教えてもらっています。そういうおもしろいヨットレースもあることを大学生に知ってもらいたい。マッチをはじめたときは、(大学生同士で戦う)こんな大会ができるなんて思ってもいませんでした。出場校には、ジュニア、高校時代で戦ったライバルいて、もう一度戦えるチャンスをもらえたことに感謝しています」(吉田工作)
選抜大学対抗マッチは、すべての予定を消化して終了しました。マッチレースという学生には慣れないキールボートを使ったヨットレースは、選手たちに大きな刺激を与えたようです。バルクヘッドマガジンが大会を観戦していて思ったのは、日に日に成長する大学生の姿でした。大会初日と2日目では別人のようにセーリングが上達していて、見ていて驚かされました。
これの大会を機ににマッチレース、キールボートの舞台へ進む意欲的なセーラーの登場を願います。大会前から盛り上がりを見せた大学マッチは、来年の開催も予定されています。大学マッチに興味のある学生のみなさん、開催は2013年3月です。日産マリーナ東海で戦いましょう!
インカレ名門校を破って優勝決定戦へ進んだ金沢大。マッチレースの戦術を考えすぎて、自滅してしまった他大学をよそに、風に素直に走るセーリングが印象的でした。大会が終わり、帰着する前に運営艇に向かって大きな声であいさつ(写真)。金沢大は大学マッチでも旋風を巻き起こしました。photo by Junichi Hirai
大会2日間、観覧艇としてグランドバンクスが出艇(三河湾で活動するキールボートチーム〈ガスト〉が協力してくれました)。他にも関係する大学を応援するボートがチラホラ。観覧艇が出るのは大学生の大会ならでは。photo by Junichi Hirai
ラウンドロビンが終わり、本部艇に集められる各大学スキッパー。photo by Junichi Hirai
14時30分すぎには、東日本大震災の追悼行事として、海へ献花、黙祷がおこなわれました。photo by Junichi Hirai
選抜大学対抗マッチ最終成績。予選の成績は5〜8位まで同点。タイを解いて決勝進出校が決まりました
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