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微風から強風まで苦しい戦いが続いた3日間。全日本オプティミスト選手権レポート

 11月23〜26日、東京江東区・若洲海浜公園ヨット訓練所で「第49回全日本オプティミスト級セーリング選手権」が日本オプティミストディンギー協会(JODA)・東京都ヨット連盟の共同主催(大会運営:夢の島ヨットクラブ・江東区立小中学校セーリング部)のもと開催されました。(レポート/レース委員長 髙橋祐司)

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若洲でおこなわれた全日本OP。前半2日は微風、最終日は強風という極端な風に選手、運営も泣かされました。photo by Junichi Hirai

大会初日/受付、計測、開会式

 前日から降り続いた雨の中、艇搬入作業と大会計測を実施。大会計測では重量計測を行うため水分を拭き取ることが必要でしたが、OP卒業生が選手と一緒に作業をしてくれたおかげで、予定通り大会計測を完了。

 夕方からは雨も上がり、開会式・スキッパーズミーティングを実施後、恒例のレセプションを開催しました。選手には1F艇庫で毎年大人気のピザをはじめ、築地から大間の本マグロを取り寄せ、刺身、寿司が振る舞われました。

 また、「セールナンバーくじ大会」では、多くのスポンサー様からご協賛いただいた賞品を当てた選手の笑顔であふれていました。

 一方、2階では指導者・サポーター懇親会が行われ、ご協賛いただいた賞品のジャンケン大会では選手に負けないほど盛り上がっていました。

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若洲ヨット訓練所艇庫でおこなわれた開会式。photo by Adamo Aono

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レセプションではピザ&マグロ尽くし。セールナンバーくじ大会もあり盛り上がりました。photo by Adamo Aono

大会2日目/レース初日

 天気予報では午前中は南、午後は東、夕方は北となっていたものの、朝の時点では昨夜からの北風が残っていた(20〜30度、5ノット)ため少し様子を見て、出艇を予定よりも遅らせましたが、10時半過ぎには南に振れると予想し、9時15分にD旗を掲揚。

 若洲はスロープが狭いことに加え、荒川の航路横断があり、原則えい航での出艇となるため、ディビジョンに関係なく、クラブ単位で3つのグループに分けて出艇。初めての試みだったため混乱が予想されましたが、支援艇にスムースに曳航していただき問題なく出艇完了しました。

 選手がレース海面に着く頃には、北風が弱くなり東風が入ってくるものの南風になるまで様子見するため、9時55分にAP掲揚。予想していた時間より多少遅れたものの11時前には南風が安定して入ってきたため、190度でコース設定しました。

 前日のスキッパーズミーティングでも潮が強い、雨の影響で川の流れがあると説明したため、多くの選手が潮を測りに来ますが、若洲では奇跡としか思えないほど潮が止まっていました。

 そして、11時25分に黄色フリートがオールクリアでスタート。引き続き赤色フリートも11時35分にオールクリアスタート。1Rのトップフィニッシュは黄色フリートは西田帆七選手(葉山町セーリング協会)、赤色フリートは東道すず選手(江の島ヨットクラブジュニア)でした。

 1R終了後は予報通り南風が続かず、東に振れ戻ったためコース設定を120度に変更し、13時01分に黄色フリート、引き続き赤色フリートも13時11分にオールクリアでスタート。

 風向・風力とも安定しない中、黄色フリートは中島拓海選手(横浜ジュニアヨットクラブ)がトップフィニッシュ。引き続き赤色フリートトップ艇が3マークを回航しフィニッシュに向かうも風が止まり、その後レース海面内の風向が北、南、東と3方向から入っていたため13時54分に赤色フリートのみN旗を掲揚。

 その後、風の吹き出しをウォッチするも風向が定まらず。日没時間が16時30分であることから15時までにスタートできないと厳しいため、14時50分にAP・A旗を掲揚し翌日の風に期待することにしました。

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序盤はレースキャンセル、風待ちする場面が多く見られました。photo by Junichi Hirai

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微風から強風まで成績をまとめた嶋倉選手が優勝を決めました。photo by Junichi Hirai

大会3日目/レース2日目

 前日のコーチ・ミーティングでレース日程を協議して、最初のレース予告を30分間早めて8時25分にD旗掲揚。

 40度設定で赤色フリートから9時30分にオールクリアでスタート、黄色フリートも9時40分にオールクリアのスタートしたものの、無風状態に陥り両フリートとも10時20分にN旗が掲揚されました。

 11時過ぎに風が入ってきたためコース設定し、赤色フリートからスタートをさせようとしましたが安定しなかったため、APを掲揚し、2日連続の風待ちとなりました。

 この日の海面は同じ風が30〜45分くらい続いたのち、数10分は無風になって、次の風がどこから吹くのか読み切れない海面でした。不幸中の幸いは、この2日間は11月後半にもかかわらず気温も高く、選手が海上待機するには過ごしやすかったことが救われた。

 12時を過ぎたころに南東〜東南東の風が入ってきたため、120度設定で赤色フリートを12時48分にUFD適用ありでスタート。1分以上前からラインを出たままの艇がいたことで、ライン全体が上がってしまい、14艇もの失格艇が出ました。

 引き続き黄色フリートは、12時58分にオールクリアでスタート。赤色フリートは葉山カトル選手(横浜ジュニアヨットクラブ)、黄色フリートは池田海人選手(江の島ヨットクラブジュニア)がトップフィニッシュ。風が長続きしないことから、このレースでは両フリートともにDNFとなる選手が出てしまいました。

 その後、またもや風が不安定になったものの南東の風が安定してきたため、145度で赤色フリートを14時44分にスタート。しかし、2Rと同様に1分前から飛び出ており、ライン全体が上がってゼネリコ。2回目のスタートは黒色旗を起用したものの、やはりライン全体が高く6艇がBFD適用で14時51分にスタートしました。

 この時点で、黄色フリートが3レース成立。赤フリートは3レース実施中であり、黄色フリートの4レース目を実施するかどうか議論が行われましたが、NOR、SI上、各フリートのレース数を期間中に調整する記載がなく、レースをあえて実施しない根拠がないため、黄色フリートの4Rを実施しました。

 これままで、黄色フリートはオールクリアでしたが、今回は赤色フリート同様ラインが高く、12艇のUFDありで15時03分にスタート。

 赤色フリート3Rは、和知健太郎選手(江の島ヨットクラブジュニア)、黄色フリート4Rは3Rに引き続き池田海人(江の島ヨットクラブジュニア)が着順1位でしたがUFD適用のため、嶋倉照晃選手(真野浜セーリングクラブ)が1位になりました。

 最終日にフリート分けができるよう15時45分までなら赤色フリートの5Rを実施させる方向で調整していましたが、赤色フリート3R目の後半から風が落ちた上、風向も定まらないことから15時43分にAP・A旗を掲揚し最終日もフリートの入れ替えがないことが決定しました。

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最終日は最大30ノット強の強風レースとなり、リタイア艇、トラブル艇、DNF艇が相次ぎました。photo by Junichi Hirai

大会最終日/レース3日目

 予報では昼前から南西の風が吹きあがるため、吹き上がった際には海上計測艇、ジュリーボートもレスキューに専念することを運営ミーティングで確認。コーチミーティングでも数字旗8を掲揚する可能性があることを説明し、8時25分にD旗を掲揚しました。

 海上に着き次第レースを実施する予定でしたが、210〜290度の風がブローごとに異なるためコース設定に手間取り、280度設定で予定よりも遅れ9時50分にオールクリア・スタート。

 しかし、南西のブローの数が増えてきたため、3マークで短縮(チャーリー)を決定。一方、黄色フリートのスタートは南西に振れたためできないと判断し、赤色フリートがフィニッシュするまで待機しました。

 その後、南西の風が平均で23ノット、ブローで28ノットが入ってきたことに加え、波高が高くなってきたため数字旗8を掲揚。

 吹き上がったことで赤色フリートでは多くのリタイア艇があり、またレース前の黄色フリートでもリタイア艇が続出する中、赤フリートは森皇翔選手(B&G兵庫ジュニア海洋クラブ)がトップフィニッシュ。

 風が吹き上がってからは、220度で安定したため、黄色フリートは11時20分にオールクリアでスタート。赤色フリートも11時30分にオールクリアのスタートしました。

 黄色フリートは前日の4Rに続き嶋倉照晃選手(真野浜セーリングクラブ)、赤色フリートも4Rに続き森 皇翔選手(B&G兵庫ジュニア海洋クラブ)がトップフィニッシュ。

 5Rは黄色が15艇、赤色は9艇しかフィニッシュできていない状況に加え、沖にさらに黒いブローが見えてきたためこれ以上海上にいると安全に帰着できない可能性があると判断し、AP・A旗を掲揚。

 その後予想通り30ノットを超えるブローが断続的に入ってきたことに加え、川の流れと干潮に対して南西のうねりがぶつかり、河口付近の波が高くなっていたため、曳航をあきらめゴムボートの上にOPを抱える形での帰着も数艇あり。また、海上に放置されたOPは運営艇でも回収しました。

 本大会では、GPSのトラッキングシステムを導入していたため、艇の位置がリアルタイムで把握できたことも功を奏したことに加え、各クラブの指導者が迅速に全選手・全艇無事帰着の確認をしていただいたことで、運営艇も全艇帰着。

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女子優勝の北原選手(江の島)。photo by Junichi Hirai

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総合3位、安永選手(B&G福岡)。photo by Junichi Hirai

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総合2位、和知選手(江の島)。photo by Junichi Hirai

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最終日の強風レースでニ連続トップを取った森選手(B&G兵庫)。photo by Junichi Hirai

全員安全に帰着

 帰着後、審問が長引いたことで表彰式の開始が遅れ、またナショナルチーム最終選考会出場選手も確定しなかったことから恒例の発表はできず。なお、審問の結果、表彰式後に2位と3位が入れ替わる事態になったことで、ご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。

 本大会で見事優勝した嶋倉照晃選手、おめでとうございます。また、上位41人(1人は中学3年生のため辞退)に入った選手は3月に開催されるナショナルチーム最終選考会へ出場します。

 平均23ノットとなった最終レースの成績だけを見ると、41人中半数以上の21人もDNS、RET、DNFとなっているのは非常に残念な結果と言わざるを得ません。

 今回は昨年に引き続き最終日以外は軽風でしたが、もし強風シリーズであったら順位は大きく変わっていたことが予想されるので、日本の代表候補としてぜひ強風を克服し、世界で活躍することを期待しています。

 惜しくも40位以内に入られなかった選手、また自分の目標が達成できなかった選手は、まず結果を受け入れるためにもレースを振り返ってほしいです。おそらく普段ならやらないようなミスをしていたことでしょう。

 運営として見ていて一番もったいないミスは、艇体トラブルでリタイアした選手が数名いたことです。ヨットは道具を使うスポーツであり、その道具に一番接しているのは選手なので、コーチ、保護者にばかり頼るのではなく、ぜひ選手自らの目で、選手の責任でチェックをしてレースに臨んでください。

 そしてレースを振り返った後は、次の目標を定め、目標達成に向けた取り組みまで落とし込んだら、あとは自身を信じ、自分の設定した目標に対して練習に励んで欲しい。そしてその過程を楽しんでいただきたい。皆さんの未来に大きなエールをおくります。

 最後になりましたが、この大会を支えていただいたスポンサー(特別協賛・協賛)様・後援団体・協力団体の皆様方に心から御礼申し上げます。

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最終日の荒天時、選手、艇体の位置確認にGPS(スマホでヨット)が大活躍しました。photo by Junichi Hirai

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OP全日本2017 最終成績

第49回全日本オプトミスト級セーリング選手権
https://sites.google.com/view/49th-japan-op-championship/

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