バルクヘッド編集部が挑戦!モス試乗記

  • 23
  • Oct

 さて、浜名湖で開催された全日本モスの大特集は、まだまだ続きます。最後はバルクヘッドマガジン編集長でもある、わたくし平井のオンボードレポートです。10年ぶりに着たウエットスーツに違和感を覚えながらも、湖上での軽やかなテイクオフを夢見て、がっつりと試乗してきました。(BHM編集部)


出艇前のわたくし。顔がこわばってますね。photo by SAILFAST

 自由奔放、危険を顧みないモス乗りたちは「烏合の衆」といっても間違いではないでしょう。彼らは、わたくしの顔を見るたびに「モスに乗ってみろ。乗れ、乗れ」と強烈に誘ってきます。あれ、この体験は、何かに似てる…。むかし、藤沢辻堂の公民館で数十人を相手にウクレレの先生をしていた頃、生徒のおばあちゃんグループから「これ食え、これ食え」と山盛りのオカシを渡されたときを思いだしました。

 昼食後、「よーし、いっちょ乗ってみるか!」と言った途端、「船はこれ使え」「ブーツはコレ」「ウエットも貸しますよ」「グローブもしたほうがいいよ」「ライジャケはぼくのを使ってください」。といった風で、あっという間にモスに乗る準備が完了したのでした。

 実はわたくし、自慢するには程遠い話ではありますが、結構なディンギー経験があるのです。これまで乗ったことあるのは、49er、29er、トーネード、14フッター、レーザー、テーザー、シーホッパー、ホビー16、ホビーキャットシリーズ、OP、オープンビッグ、トッパー、ファイアーボール、アクセスディンギー、スナイプ、470、RSディンギーなど(他にもあったでしょうが、忘れてしまいました)。どの艇種も乗せてもらった程度ですけれども。

 というわけで、巷で話題のモスには以前から挑戦してみたく、また当日はポカポカ陽気でもあり、「もしや、飛べるんじゃないか? レースを撮影していた感じだと、みんな余裕で飛んでるし」と思い、鼻歌まじりでウエットスーツに着替えたのでした。

 まずは、YOUTUBEでさんざん見たセーリング映像を思い出してイメトレ、イメトレ。「それでさあ、飛んだ後はどうすればいいの? ジャイブ?」と言ったら、それまで優しかった選手たちから冷たい視線が突き刺さりました。あれれ? どうしたことでしょう、だれも相手にしてくれませんよ。

「平井さん、大丈夫です。きょうは乗るだけで終わりますから。その先のことは何も考えなくていいです」と冷静に意見してくれたのは阪間選手です。「とにかくアンヒールですよ。オーバーヒールさせちゃだめ。アンヒール、アンヒール」と助言とも呪文ともとれる“アンヒール”の言葉だけを頼りに湖上へ出陣しました。


頭に描いていたイメトレのシーン。こんな感じのアンヒールで飛ぼうと思ってました。photo by Junichi Hirai

 いざ、サポートボートへ。モスの出艇方法は水面にセールを倒してメインシートを引き込みながら、サイドデッキ(トランポリン)に飛び乗ることになります。出着艇がむずかしいため、スコウからフォイラーまでモスのすべてを知り尽くした小倉選手に沖まで出ていただき、いい案配の風のなかで乗り換えるというビギナー試乗コースをセッティングしてもらいました。

 海面はフラット。風は4、5メートルぐらいでしょうか。サポートボートからトランポリンに飛び乗ると、それだけでアタフタです。「なんだこれ、全然安定しない」。印象としては、同じスキフの49er級をさらに不安定にした感じでしょうか。細い丸太の上に乗っているような印象です。とにかくカラダの重心をどこに置けばいいのかわかりません。

 風上側のフットベルトに足を通し、ティラーを持って、メインシートをググッと引き込んで華麗にテイクオフ(のつもり)。サポートボートから「メインシートを出して!ティラーは動かさない!」と鈴木晶友コーチの声に答えるまもなく、あっけなくオーバーヒール沈。脳裏に描いたシーンとは程遠いファーストセーリングとなりました。

 一体なにがあったの? そんな感じです。走りはじめたのは覚えています。その後、フッと浮かび上がったなと思った瞬間にバランスを崩してノックダウン。水中に投げ出されてしまいました。沈おこしするなんて何年ぶりだろう…。ひさびさに浸かる水中の心地よさに感慨深いものを感じたのもつかの間。なんとその後、10分間で10回も沈する(!)とは思ってもみませんでした。

 這々の体で沈をおこし、腹ばいのカタチでメインシートを引きながら、トランポリンにのぼります。態勢を整え直してメインシートをイン。ボートが快調に走りだし、いい感じで船体が浮上しそう、という場面で、オーバーヒールして沈。を、10回以上も繰り返しました。

 オーバーヒールとともにメインシートを投げ出さんばかりに出しているのですが、そのタイミングではすでに遅い。船の「ここまでは大丈夫」「ここから先はもうダメ」を知るのが、自分に課せられた第1ステップなんだと想像しながらも、手強い相手(モス)はまったく心をひらいてくれません。そんなことを繰り返して、試乗時間は過ぎて行きました。

 たぶん20分程度の試乗だったと思いますが、「船が浮いた」という感覚はあったものの、「飛んで走った」にはほど遠く、スピードの感動を得られるまでに至りませんでした。その代わり沈おこしのツラさを数十年ぶりに思い出しました。

 ただし、モスに触れてみて、絶対に飛ぶのは無理、という結論には至っていません。最初の壁を超えれば乗艇可能なボートだ、という認識を持ちました。その後、まっすぐ走れるのかどうかは、いまのわたくしには想像できませんが、飛んでる人は本当にすげー。最大の尊敬に値することに間違いありません。

 モスを操ることは、それだけの試練を越えた人だけが得られる至上セーリングといえるでしょう。はじめてモスに乗った感想は「とにかく乗れないのは悔しい!」のひとことです。次こそ飛びます!

◎日本モスクラス協会
http://moth-japan.org/

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