ソフトバンク・チームジャパン早福和彦総監督インタビュー・前編

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 来る5月26日、バミューダで「第35回アメリカズカップ」クオリファイヤーズがはじまります。わたしたちが気になるのは、日本から出場するソフトバンク・チームジャパンの現状、進水間近のニューボート(AC50)、そして日本選手の活躍ではないでしょうか。そんな疑問に答えるべく、バルクヘッドマガジン編集長が、ソフトバンク・チームジャパン早福和彦総監督を単独インタビューしてきました。(BHM編集部)

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現在バミューダではソフトバンク・チームジャパンの新艇開発が進んでいます。写真はテストボートのAC45S。本番ではAC50(ACC=アメリカズカップ・クラス)が採用されます。photo by Matt Knighton / SoftBank Team Japan

2月下旬進水予定のソフトバンク・チームジャパン新艇。
アメリカズカップは「ドライセーリング」が勝敗を決める

BHM編集長:昨年11月、福岡大会を最後にワールドシリーズが終わり、アメリカズカップの戦いは本拠地となるバミューダへ移動しました。5月後半までの約6カ月間、アメリカズカップのレースイベントはありません。各チームにとって、今はどんな時期なのでしょうか?

早福和彦総監督:AC50(2017年アメリカズカップで採用される50フィート枠のフォイリングカタマラン)の開発。これに全力を注いています。テストボートのAC45Sに乗り、AC50へつなげるシステムの開発をしています。

BHM:先日、先陣を切ってランドローバーBARがAC50を進水しました。ソフトバンク・チームジャパンの新艇はいつごろ進水する予定ですか?

早福:2月下旬を予定しています。まず、エミレーツ・チームニュージーランドのプロテストが認められたブラックアウト(新艇をニュージーランドからバミューダへ移動する期間は練習できない)が終わるタイミングを待ってからになります。ほとんどのパーツを45Sから50に移行するため、出来る限りAC45SでセーリングをしてからAC50に移るのが好都合と考えています。

BHM:それは、過去のアメリカズカップにあったような、お互いの手の内を見せない「情報合戦」も含んでいるのでしょうか?

早福:テストセーリングからデータを集めたいのが理由です。一度、進水してしまうとレジストレーションが済んだとみなされる。特に、チームとしては、ダガーフォイルの選択のためテストセーリングを重ねてデータを増やしてから決めることを考えています。

BHM:レースでは、何枚のダガーフォイルを使えるのですか?

早福:4枚(左右舷で2セット)です。このダガーフォイルをバミューダのどの風域に合わせるのかが重要になる。たとえば、オールパーパースを1セット用意するとして、もう1セットを微風寄りのダガーにするのか、強風寄りのダガーにするのか。ダガーの選択はレース当日の朝に決定します。微風用のダガーをセットして、4〜6ノットの風域は速いけれど、8ノットになったらパフォーマンスが落ちる、ということがあるかもしれない。この風域をどう考えるか。テストセーリングするなかでパフォーマンスを解析しているわけです。

BHM:ソフトバンク・チームジャパンは、オラクルチームUSAと技術協力の関係にあります。テストセーリングで得たパフォーマンスデータはお互いシェアしている、と考えてよいですか?

早福:そうです。お互いの解析データを見られます。ただ、セオリーは同じでもレースに対する細かい考え方が違うので、同じフォイルを使うわけではありません。ただ、相手がどんなフォイルを使って、どんなパフォーマンスが出ているのかを検証しています。これは、レイトエントリー(出場チーム中、もっとも遅い参加表明でした)したソフトバンク・チームジャパンには願ってもないことです。

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早福和彦。1965年新潟生まれ。1995、2000年にニッポンチャレンジ、2003年ワンワールド(USA)、2007年BMWオラクルレーシング(USA)でアメリカズカップに挑戦。ソフトバンク・チームジャパン総監督。photo by Junichi Hirai

BHM:昨年の夏、ソフトバンク・チームジャパンがフォイリングタックを成功させました。チームのセーリングの技術は、どこまで成熟しているのでしょうか?

早福:どんどん磨きがかかっています。われわれは、ドライレース、ドライセーリングと呼んでいて、フォイリングしたままハルを水面につけないセーリングをこころがけています。これは近い将来現実になると思います。フォイリングタックの成功率もどんどん上がってきている。タックは、フォイリングの角度、ダガーを降ろすタイミング、ボートをまわすタイミング、全部が一致しなければなりません。ただ、これは練習を重ねれば達成できることなので、時間の問題だと思います。

BHM:ハイスピードボートでマッチレースするアメリカズカップは、どのような戦いになるのでしょう。なかなか想像できません。

早福:AC45Sの最高速度は約43ノットでした。これよりもAC50はスピードアップすることに間違いありません。ひとつのミスで大きな差になってしまうこともある。非常にシビアな戦いになると思います。

BHM:アメリカズカップは、スピードで勝負が決まってしまうのでしょうか?

早福:1月、バミューダで4チーム(オラクルUSA、ソフトバンク、BAR、アルテミス)でマッチレースのトレーニングをしました。スピードで決まることもあれば、接戦になることもありました。スピード勝負でタクティカルな面がなくなるかというとそうではなく、クルーは常に先を読んでいかなければなりません。レースエリアのエッジを考えると、たとえば、右のゲートをまわれば、何回タックが必要になるのかも予想できる。これをレース前に理解し、クルーはレース中もそのようなことを考えて乗っています。

※ソフトバンク・チームジャパン早福和彦総監督インタビュー・後編へ続きます

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バミューダでオラクルチームUSAとトレーニングするソフトバンク・チームジャパン。6月のバミューダは軽風中心という過去データがあります

参考:アメリカズカップ本戦へのロードマップ
1. ワールドシリーズ(予選)
2015〜2016(終了)
参加6チームにより世界を転戦するヨットレースで、11月福岡大会を最後に全9戦おこなわれた。1位イギリスが2点、2位アメリカが1点を獲得。得点はクオリファイヤーズへ持ち越される。

2. クオリファイヤーズ(最終予選)
2017.5.26〜6.5
ACクラスによる1対1(マッチレース)の総当たり戦が2回おこなわれる。挑戦艇内で4チームがプレーオフに進出する。アメリカが1位だった場合は、決勝で挑戦者代表にマイナス1点を与えらえる。

3.プレーオフ(準決勝)
2017.6.7〜12
挑戦艇4艇による準決勝でマッチレース形式で戦う。先に5勝したチームが上位へ進み、最終的に勝ち残った1チームが挑戦者代表となる。

4. アメリカズカップ(決勝)
2017.6.17〜27
防衛艇であるオラクルチームUSAと挑戦艇によるマッチレース。先に7勝したチームが勝者となり、第35回アメリカズカップを獲得する。

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