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大西洋横断ルートデュラムへ挑む白石康次郎インタビュー

 11月6日、フランス最大規模のシングルハンド外洋ヨットトレース「ルートデュラム」がスタートします。フランス語で“ラム酒の道”と訳されるこの大会は4年に一度開催され、北西部のサンマロからカリブ海グアドループまで3543マイル(約6562km)を競う大西洋横断ヨットレースです。(BHM編集部)

11月6日にスタートするルートデュラムに出場するため、10月26日に仏ロリアンからサンマロへ回航した白石康次郎。ルートデュラムは自身初出場となるひとり乗り大西洋横断レースです

 ルートデュラムの種目はウルティム(=Ultim。全長32メートル/幅23メートルのモンスターマルチハル)、ヴァンデ・グローブのIMOCA、オーシャン50、クラス40、一般モノハルなど6クラス。本大会には過去最高となる138艇/14カ国がエントリーしています。

 日本からは、2024年ヴァンデ・グローブを目標にフランスで活動する白石康次郎〈DMG MORI Global One〉が出場します。白石選手がルートデュラムに出場するのははじめて。いったいどんなレースなのか、またどんな心境なのか、バルクヘッドマガジン編集長がインタビューしました。

3543マイル走るルートデュラムのコース図。ヨーロッパへラム酒を運ぶルートをたどるコースです。これまでの最短記録は2018年にフランシス・ジョインが記録した7日14時間21分57秒
IMOCAクラスに出場する〈DMG MORI Global One〉。今回のルートデュラムでは〈PRB〉、〈CHARAL〉〈V and B – Monbana – Mayenne〉〈INITIATIVES COEUR〉〈BIOTHERM〉〈Malizia – Seaexplorer〉などが新艇で続々登場します
100フィートを超える(全長32メートル)モンスター・フィオリング・マルチハル、ウルティムクラスには8艇がエントリーしています
フランス北西部のサンマロの港に138の参加艇が集まりました。ルートデュラムのスタートは現地時間6日13時2分です
白石康次郎(DMG MORI セーリングチーム)。前回ヴァンデ・グローブ2020-21年大会でメインセール破損を修理しながら完走。現在、フランス・ロリアンを拠点に2024-25年大会出場を目指しています

目標はしっかり完走すること。はじめてのカリブ上陸を楽しみにしています!

バルクヘッド編集長:日本ではあまり馴染みのないルートデュラム。大西洋横断するこのレースはいったいどんなヨットレースなんでしょうか?

白石康次郎:これは驚くほど大規模のヨットレースです。4年前は観戦に来たんだけれど規模がさらに大きくなっている。26日には海上パレードがあって、船をドッグに入れて、その両脇に観客スタンドがあって、大型スクリーンがあってね、みんなが船を見学できるようになっている。フランスヨット界の底力を見ました。

編集長:ルートデュラムのエントリー数は2014年88艇、2018年123艇、そして今回は138艇です。増え続けている理由はどんなところにあるのでしょうか?

白石:フランスでは外洋レースの人気が以前よりも高まってきています。ウルティムやぼくたちIMOCAクラスもそうだけれど、多くはこのレースを新艇のお披露目レースにしている。ウルティムは最速最短世界一周の記録を狙うジュールベルヌ・トロフィー、IMOCAはヴァンデ・グローブが目標になるんだけれど、それのテストセーリングも兼ねているチームが多い。このレースで新艇の弱点を見つけだそうという考えです。※IMOCAは来年1月15日に始まる世界一周オーシャンレースに出場する艇も出場しています。

編集長:IMOCAは37艇出場しますね。これも過去最高です。ほかのクラスはどうなんでしょう? クラス40には55艇も出場します。ほかにも64フィート以下のマルチハルが16艇、39フィート以上のモノハル14艇出場します。

白石:ルートデュラムは貿易風に乗るレースだから気分がいい。トランスパック(ロサンゼルス〜ハワイ)のような明るいイメージがあります。ヴァンデ・グローブは生きるか死ぬかのシビアな印象があるでしょう。ルートデュラムは一般のセーラーも出場できるし明るく楽しいイメージです。

サンマロの港につくられたビレッジには多くのファンがやってきます。大会はビレッジがオープンする13日間で200万人の来場を予想しています
海上パレードのあとはクラスごとに港へドックイン。ファンを楽しませるアイデアが盛りだくさんです

編集長:白石さんは初出場になりますが、いまどんな気持ちなんでしょうか?

白石:このレースは完走することが重要な大会です。ここで完走して(ヴァンデ・グローブ出場条件となる)マイルをしっかり貯めるのが目標です。それと実は、ぼくはカリブ海の島に行くのってはじめてなんです。

編集長:地球一周、大西洋横断は何度もしているのに、カリブ海には行ったことがない?

白石:そう。5オーシャンズの時もなんども横をかすめたんだけどね(笑)。カリブ海フィニッシュの大西洋横断レースに出場するチャンスがなかった。だからカリブ海の島に上陸できるのをすごく楽しみにしているんです。

編集長:IMOCAの場合、風にもよりますがだいたい12日ぐらいでしょうか。11月6日にスタートしてトップ艇は18日ぐらいに到着しそうです。レースコースのプランはどんなことを考えていますか?

白石:セオリー通りになると思う。序盤は大変かもしれないけれど、南に下って貿易風に乗っていく。いま体の調子もいいし、なにも問題はありません。準備は万全です。

編集長:だんだんあたたかくなるヨットレースだから気持ちもいいですよね。今回はどんなウエアを用意しているんですか?

白石:ヴァンデ・グローブと違って、ルートデュラムはウエアをだんだん脱いでいくヨットレースです。だからハードなウエアは持っていきません。前回のヴァンデ・グローブが終わってからヘリーハンセンと共同開発している、軽くて動きやすいタイプを使います。南に下っていったらそれも脱いでいくと思うけれど。

ルートデュラムは貿易風に乗って大西洋を南へ下るヨットレースです。ウエアは軽くて動きやすいタイプを使用。南に進むに連れてウエアを脱いでいくことになります

編集長:ウエアもIMOCA〈DMG MORI Global One〉になって変わった部分があるんですか?

白石:いまのIMOCAはデッキでしぶきを浴び続けながら作業するという場面はほとんどなくなった。すべてコクピット内で操船ができるようになっていますから。

編集長:たしかに外で作業するシーンは少ないですね。前回の〈Hugo Boss〉は船にビデオカメラをたくさん設置して、コクピット内から常に確認できるようになっていました。

白石:10年前は「寝ているところから飛び起きて、すぐにデッキに出られる」が重要だったのにね(笑)。

編集長:たしかにそうですね(笑)。きょうはありがとうございました。11月6日からはじまるルートデュラムで、白石さんとDMG MORI Global Oneの活躍を楽しみにしています!

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