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アメリカズカップの規範「ディード・オブ・ギフト」とは?

 これまでアメリカズカップの解説で何度も登場する贈与証書(ディード・オブ・ギフト)。1851年のワイト島一周レースでアメリカが勝利したあとに制作された贈与証書は、アメリカズカップの規範となるもので、2021年第36回アメリカズカップもここに記載されたルールに基づいておこなわれます。(BHM編集部)

アメリカズカップと贈与証書は1851年のワイト島一周レースで勝利した記念に作られました

 贈与証書が作られたのは1851年にアメリカ号がイギリス艦隊を破った「ワイト島一周レース」の後、ニューヨークヨットクラブのパーティーで、勝利した記念にカップを制作しようという話になったことに始まります。

 このカップに添えられた署名付き法的文書が贈与証書(1852年に制作されましたが、署名者であるGEORGE L. SCHUYLERが亡くなったため、改訂された1857年版がオリジナルとされている)です。その後、贈与証書はアメリカズカップのルールとなり、時代ごとに修正が加わり、現在バージョン3(1956年改、1985年改)になっています。

 この贈与証書の解釈をめぐり、アメリカズカップでは大きな裁判が二度おこなわれています。一度目は1988年大会で、マーキュリーベイ・ヨットクラブを有効な挑戦者と認めるか。サンディエゴ・ヨットクラブが挑戦を受け入れる必要があるかどうか。また、サンディエゴ・ヨットクラブの防衛艇(カタマラン)が贈与証書の条件を満たしているかどうか。

 また、2010年大会ではスイスのソシエテ・ナウティコ・デ・ジュネーブ(アリンギチームが、アメリカカップのためにつくられたというクラブ)が、有効なヨットクラブとして認められるかも、法廷であらそわれましえた。

アメリカンマジックのテリー・ハッチンソンがニューヨーク・ヨットクラブをたずね、贈与証書のオリジナルを見学しました

【アメリカズカップ贈与証書】一部抜粋
・1本マストの場合、水線長44以上〜90フィート以下でなければならない。
・2本マストの場合、水線長80以上〜115フィート以下でなければならない。
・挑戦するクラブは、レース開催日まで10カ月以内に書面でレース日程を申し入れなければならない。
・書面には所有者氏名、身分証明、挑戦艇のリグ形式、寸法(水線長、船幅、喫水の最大値など)を記載し、船舶登録証を提出する。
・センターボード、スライディングキールの制限、制約はない。
・11月1日から5月1日まで北半球でレースはおこなえない。
・5月1日から11月1日まで南半球でレースはおこなえない。
・挑戦クラブと防衛クラブは、相互の合意で日程、コース、レース数、帆走規定、その他対戦条件を双方が満足する形で変更できる。
・相互の合意が得られない場合:3レースおこない、2レースの勝者がカップ獲得となる。レースは岸に遮られない海でおこなわれる。レースコースは22フィートの船舶が走れる水深があること。第1レースは20マイルの上下コース。第2レースは大三角形39マイルコース。第3レースは20マイルの上下コース。レースとレースの間は1日あけること。防衛艇はすべてのレースに参加しなければならず、各レースは7時間以内に完了すること。

◎第36回アメリカズカップイベント
ワールドシリーズ(前哨戦)
 2020年4月23〜26日 イタリア・カリアリ大会 ── 中止
 6月4〜7日 イギリス・ポーツマス大会 ── 中止
 12月17〜20日 ニュージーランド・オークランド大会

プラダカップ(予選・挑戦艇決定)
 2021年1〜2月 ニュージーランド・オークランド

アメリカズカップ・マッチ(決勝・防衛艇対挑戦艇)
 2021年3月 ニュージーランド・オークランド

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