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2021年開幕、第36回アメリカズカップを学ぼう。基本編(1)

 2021年3月、ニュージーランド・オークランドで「第36回アメリカズカップ」が開催されます。来年の本戦にさきがけ、今春からワールドシリーズが開幕。これから1年間、世界のセーリングニュースはアメリカズカップでにぎわうことでしょう。この波に乗り遅れないよう、アメリカズカップの基本をおさらいして、前回から大きく変更された第36回大会について予習します。

第35回大会(2017年)でニュージーランドがアメリカを破り、アメリカズカップを奪還。次回アメリカズカップは2021年にニュージーランド・オークランドで開催されます

◎アメリカズカップは世界最古のスポーツトロフィー

 アメリカズカップは、1851年から続くヨットクラブ対抗の国際ヨットレースで、近代オリンピックより45年古く、サッカーワールドカップよりも79年も古い世界最古のスポーツトロフィーです。

 ことの由来は、1851年に開催された英ロンドン第1回万国博覧会でのことです。記念行事としておこなわれたロイヤル・ヨット・スコードロン主催ワイト島一周レースに出場した外来艇〈アメリカ号〉が勝利し、優勝杯を獲得しました。

 以来、この杯を奪還するために、英国をはじめ各国が挑戦しましたが、アメリカはことごとく打ち負かします。こうした戦いの中で、この杯をアメリカズカップ(銀製の水差し型の杯)と呼ばれ、杯をかけて戦うヨットレースそのものをアメリカズカップと称するようになりました。

 アメリカは、セーリング最強国としてその名を世界に広め、1983年に敗北するまで132年にわたって防衛を果たしました。はじめてアメリカを倒したのは、オーストラリアのロイヤル・パース・ヨットクラブです。

 しかし、1987年に開催された翌大会でアメリカがカップ奪還に成功。その後、カップはニュージーランド、スイス、アメリカと世界をめぐり、現在はニュージーランドが保持しています。

現在、アメリカズカップ(もともと上部の水差し部分だけだったようです)は、前大会で勝利したロイヤル・ニュージーランド・ヨットスコードロンに保管されています。2019年12月撮影
カップが保管されるロイヤル・ニュージーランド・ヨットスコードロン。オークランドの市街地近くにあるヨットクラブです
ニュージーランドがカップを奪還したことで、アメリカズカップ予選シリーズの名称がルイ・ヴィトンカップからプラダカップに。カップのケースもルイ・ヴィトンからプラダ製に変わっていました

◎フォイルによるスピード革命。アメリカズカップはテクノロジーの戦いに

 アメリカズカップの魅力のひとつは、莫大な資金を投じて開発される艇の建造にあります。

 アメリカズカップのルールは、1857年につくられた「贈与証書」(ディード・オブ・ギフト)が元になっていて、艇には、全長や全幅、重量、素材など大枠だけが決められているボックスルールが設けられ、開発・建造に関して自由度を残しています。

 この部分に各チームは費用を投じ、造船工学、建築工学、流体力学、航空力学、気象学、情報技術などのテクノロジーを駆使して、だれよりも速い艇を作り上げることに力を注ぐわけです。

 近年では、第34回大会(2013年)から採用された「フォイリング」という水中翼(ハイドロフォイル)による技術革新が目覚ましい発展を遂げています。水中翼で揚力を発生させ、水面から浮き上がって走ることで水の抵抗をなくし、スピード革命ともいうべき高速セーリングが可能になったのです。

 世界を転戦するグランプリレース「SailGP」で採用されているF50は、第35回大会(2017年)で使われたアメリカズカップ艇を改良したもので、時速50ノット(約92キロ)をこえるハイスピードを可能にしました。一般的なセーリングクルーザーの最高時速が15〜20ノットですから、「フォイリング」によるスピード革命を理解できるでしょう。

 次回の第36回アメリカズカップでは、35回大会と比べてさらなる発展がみられます。艇がカタマラン(双胴艇)からモノハル(単胴艇)となり、全長が50フィート(15.2m)から75フィート(艇体20.7m+バウスプリット2.0m)に巨大化されることになりました。75フィートの巨大ヨットがフォイリングで戦うヨットレースは、世界で例がありません。(BHM編集部)

第36回アメリカズカップで採用されるAC75のプロモーション映像
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