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完全優勝!石井/伊藤。2019ファイアーボール全日本レポート

11月2〜4日の3日間、江の島で「ファイアーボール級全日本選手権」が開催されました。前年度優勝の石井/伊藤、新コンビにて初めての全日本を戦う石橋/鶴本に対して、22年ぶりに出場の“レジェンド”中野/安藤が絡む中でどんな展開になるのか。3日間9レースの長い戦いが幕を空けました。(レポート・写真提供/日本ファイアーボール協会)


江の島で開催されたファイアーボール全日本

 初日、朝方空を覆っていた雲は抜けて、晴れ間がのぞく微風の中でレースは幕を明けました。風は左振れて30度、右に振れては90度、オンデッキからフルトラピーズまで自由奔放な風の中、レースはスタート時刻を迎えます。

 第1レース、レースコースは、トライアングル〜ソーセージ〜トライアングルで下マークを回航後、上マークへの上りレグを持ってフィニッシュ、という長いレースコースです。

 第1上マークをトップで回航した石井/伊藤が先行しレースを展開。しかし、石橋/鶴本も数艇身以内にピッチリつけたまま追いすがりました。最終上りレグの直前、第3下マーク回航の直前、振れを伴ったブローを味方につけた石橋/鶴本が先行する石井/伊藤の風下側を猛然と突破。オーバーラップを振り切り、逆転で下マークを回航しました。

 石井/伊藤は大きく右側に展開。石橋/鶴本もなんとか安全圏に自艇を位置づけようとします。しかし、最後の最後で、大きな右振れのブローを掴んだ石井/伊藤が再逆転。1艇身の差で辛くもトップフィニッシュ。勝利を収めます。3位には松嶋/佐藤。普段とは異なるペアでの出場ではありますが、個々のスキルの高さを見せ、中野/安藤を振り切りました。

 第2レース、このレースも石井/伊藤がトップで第1上マークを回航。2位に石橋/鶴本が付け、緊張感の中でレースを展開します。このレースでもリーチングに速さを見せる石橋/鶴本が2回目の上サイドとなるリーチングレグで逆転。……と思いきや、ここでも最終上りレグで石井/伊藤が再逆転。悔しさの残るレース展開に、フィニッシュ直後の石橋/鶴本から大きな声が。思わず運営ボートからも苦笑いがこぼれました。

 第3レースは石橋/鶴本が第1上マークをトップ回航。先の2レースとは異なり石井/伊藤は少しクローズホールドのボートスピードが見劣ります。それもそのはず、後に明かされた談話として、実はこのレース石井/伊藤はサイドステーに大きなトラブルがあり、ありあわせのシートでボートとステーを結び合わせて帆走していたとのこと。ところが、上りレグのコース取りで優位に立つ石井/伊藤はトラブルをものともせず、ラルに突っ込んだ石橋/鶴本を逆転し、そのままトップでフィニッシュしました。

 結果は、石井/伊藤が1-1-1位、石橋/鶴本は2-2-2位で、初日の3レースを終えました。中野/安藤が4-3-3で3位につけます。初日は1レース約60分で3レース実施。振れ回る風の中で残り2日、2位以下の奮起が期待されます。


僅差で上マークを回航します

 続く2日目は、初日とは変わり、生憎の雲が空を覆います。しかし、振れ回る北風は健在。運営・選手共に、その日1日の苦労を確信しつつ、レース海面に向かいました。

 経験値のある中野/安藤はもちろん、個々のスキルの高さをペアとしてうまく調整してきた松嶋/佐藤もスタートやクローズホールドのスピードに磨きをかけ、レースは一層の混戦模様。

 この日実施されたレースの第1上マークは全て異なる艇がトップ回航を勝ち取り、加えて、4艇すべてが数秒毎に順次回航していくような大接戦となります。しかし、初日同様振れ回る風に圧倒的な強みを見せる石井/伊藤がやはり強い。

 第4レースも石井/伊藤がトップフィニッシュ。第1上マークをトップ回航した中野/安藤が粘りを見せますが、リーチングレグで振り切った石橋/鶴本が2位に。

 第5レースは、第1上マークをトップ回航した石橋/鶴本がトップでレースを展開しますが、ランニングレグでブローを掴んだ石井/伊藤が辛くも振り切りまたもトップフィニッシュ。

 第6レースは、石井/伊藤が第1上マークをトップ回航、その後、盤石なレース展開で圧巻の走りを見せます。第5レースの展開も相まって、心を折られたのか石橋/鶴本はまさかの4位でレースが進行。

 フィニッシュレグ、石井/伊藤がトップフィニッシュした直後にスッと落ちた風。残りの3艇はオンデッキまで落ちた風の中、がまん比べのようなレースを迫られました。一見、心折れたかに思われた石橋/鶴本が3艇の一番右側に位置づけ、その後の右振れをつかみ、まさかの大逆転。3位に入った松嶋/佐藤とはその差わずか半艇身の勝負でした。

 最終日、選手の表情にもさすがに疲労の色は濃く……。しかしながら、この3日間で一番晴天の中、残る3レースを実施します。

 第7レース、石橋/鶴本はこのレースの第1下マーク、スピン収納時にスピンセールが大きく破損。マーク回航でも大きなロスを見せてしまい、4位でフィニッシュ。

 なんとかつながっていた心は、ビリビリのスピンをおまけに付けて、バキバキに折れてしまったことでしょう。トップは石井/伊藤、2位には正規ペアであり、かつ、この日1日のみの参加でフレッシュな状態のヘルムスマン中村選手と出場する中村/佐藤が入ります。

 第8レース、既に最終順位は確定している中でも石井/伊藤がトップフィニッシュ。2位には石橋/鶴本。

 ビリビリのスピンを果敢にホイストし、バキバキの心を奮い立たせて帆走しました。3位には中野/安藤、体力的にフレッシュなはずの中村/佐藤はファーストレグでの振れを掴み損ねて大きく後退してしまったことが響きました。心がバキバキであろうが、体力的にフレッシュであろうが、振れとブロー次第で順位は良くも悪くもなりえる。この3日間の気まぐれな風を象徴するようなレースとなりました。

 第9レース、最終順位が確定した石井/伊藤はこのレースをパス。バキバキの心をつなぎとめるトップフィニッシュという薬が欲しいだけの石橋/鶴本が第1上マークをトップで回航し、盤石なレース展開に持ち込みます。

 2位には中村/佐藤、3位に中野/安藤。このレース、最終順位で安藤/中野を逆転するためには、中村/佐藤はトップフィニッシュするしかありません。運命のフィニッシュレグ、石橋/鶴本も必死にカバーリングしますが、大きな右振れを掴んだ中村/佐藤がこれを逆転! 最終順位で安藤/中野を逆転しました。

 レース委員長・小阪氏の大会終了時の談話「伊藤が行った方に有利な風が吹く」にもある通り、ベテランクルー伊藤選手の風の読みがさえわたる3日間となりました。同時に、そのような振れ回るきまぐれな風の中で、全てのレースを目標レースタイムの±5分以内で設定した運営の技術にも目を見張る大会ともなりました。

 レース終了後は、恒例の打ち上げ。石井/伊藤は優勝カップに満たした勝利の美酒に酔いしれます。選手・運営メンバーの疲れた体に、レースの振り返りを最高の肴に、アルコールが染み渡る席となりました。


優勝の石井/伊藤


2019年ファイアーボール全日本選手権成績

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