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全日本女子インカレ展望と解説 470級

 9月21〜23日、葉山港で「第23回全日本学生女子ヨット選手権」が開催されます。昨年開催された蒲郡大会から女子インカレの本拠地・葉山に戻り、3日間の熱戦が繰り広げられます。今回も、外道無量院さんと生ちゃんから歯に衣着せぬ対談「展望と解説」が届きました。まずは470編から紹介します。(BHM編集部)

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今年も日建・レンタコムグループが冠スポンサーにつく全日本女子インカレ。photo by Junichi Hirai

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生ちゃん
 学生全日本戦線第2弾は「全日本学生女子ヨット選手権」だ。今年は女子インカレの聖地、葉山港へ戻り、9月21〜23日の日程で開催。カットレースなしの全8レースで争われる。

 女子インカレの歴史を振り返ってみれば、日建スポンサードの下、1992年(平成4年)から20年以上も継続されてきた。当時は、団体戦などで女子選手の活躍の場がなかったといってもよい時代であった。その活躍の場を広げるために創設されたと私は認識している。

 レベル自体も徐々に上がり、近藤愛(日本大)、鎌田奈緒子(法政大)、田畑和歌子(第一経済大)らのオリンピック代表を輩出するまでになり、特に近年では男子に混じって団体戦でも活躍する女子選手が多くなったのも、この大会があるからで、ますますタイトルとしての価値が上がったことは間違いないだろう。

 この展望も、蒲郡個人戦に引き続き、外道無量院氏と対談させて頂く事にした。外道さん、よろしくお願い致します。

外道無量院
 こちらこそよろしく。生ちゃん、今年のエントリー数は若干少なめ。470級29艇、スナイプ級26艇となってしまった。最大エントリー数は各クラス35艇でしょう? 少し残念だね。

生ちゃん
 はい、私もエントリーを見た瞬間そう感じました。はっきり言わせて頂くと、(大学名は挙げませんが)有力選手が(出場可能なのに)出てこない大学があることは非常に残念です。

 選手数が少ない&経済的な理由だったらまだしも、おそらく団体戦が優先なのでしょう。各大学の方針は自由であるとは思いますが、この大会に限っては、スポンサーに対しても大変失礼なことだと思います。

外道無量院
 その通り。そのことについては昨年もKAZIの記事で松本氏も言ってたな。それに、何と言っても大学の公式戦で優勝した選手に贈られる賞品としては破格のダイヤモンドだからね(笑)。

 女子選手が在籍している大学の監督・コーチは、今一度、この大会の意義を考えて欲しい。何と言っても「大学日本一」という「タイトル」には間違いなく、ヨット部として大学側に大きくアピールできる点を考えるべきだ。

 また、ヨット(セーリング競技)に限らず、五輪競技では全ての種目で女子競技が行われつつある競技スポーツ界全体のトレンドとかも指導者層にはよんで欲しいと思う。今や、ボクシングやラグビー、冬季種目ではスキーのジャンプだって五輪の女子種目になっているご時世だ。

 大学チームの指導者には、そういった社会性とスポーツ界全体を俯瞰する視野を持って欲しいと思うのは私だけではないはずである。

生ちゃん
 現在は大会数が多すぎて、各校、調整がうまくいかないケースも出ているようですが、少なくともこの大会だけは継続しなければならないでしょう。この大会がなくなってしまったら、女子選手が埋もれてしまう可能性も出てきますからね。

 また地方の大学が、(経済的な理由で)参加しにくい事情があるなら、大会側で運送費の補助などを考えなくてはならないのではないでしょうか? 第1回や2回ならまだしも、もう既に23回大会であるからして、フルエントリーにするためにはあらゆる対策を講じる必要があるはずだ、と私は思います。

 説教じみた話から始まってしまいましたが、気を取り直して展望に入ることにします。今年で23回を数える全日本女子インカレでは、様々な記録が生まれている。全て紹介することに致しましょう。

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全日本女子インカレの過去データ

1. 最多クラス優勝
(スキッパー)
近藤愛(日本大)。優勝3回。(第9〜11回。※9回はスナイプ級、10、11回は470級)
増川美帆(関西学院大)。スナイプ級優勝3回(第16、17、19回)
(クルー)
高須 智子(日本大)470級3回(第9〜11回)

2. 各クラス連覇達成スキッパー
山下美香(法政大) 470級。第2〜3回
近藤愛 (日本大)470級第10〜11回(9回のスナイプも入れると3連覇)
岩崎めぐみ(第一経済大) 470級。第14〜15回
増川 美帆(関西学院大)スナイプ級。第16〜17回

3. 完全優勝達成校(470・スナイプ両クラス優勝)
神奈川大学(第1回)※この時は総合表彰はなし
立命館大学(第8回)
日本大学(第10回・12回)

4. 総合連覇記録
関西学院大学 3連覇(第19〜21回)
立命館大学 2連覇(第7〜8回)
日本大学 2連覇(第9〜10回)

5. 総合優勝回数
日本大学 5回
立命館大学 4回
法政大学 3回
関西学院大学 3回

『全日本女子インカレ 展望と解説 470級』

生ちゃん
 昨年の蒲郡大会は3レース成立だったものの、内容的には実力・話題性共に中身の濃いレース内容であった。女子スキッパー三強、後藤沙織、山口祥世、豊田華世は卒業し、今年はどうなっていくのか? 少なくとも関東では、各レース優勝チームが入れ替わる混戦モードに突入している。
おそらく470に関しては、激戦となるような気がしますが、外道さんはどうお考えですか?

外道無量院
 あれ、全日本個選とは異なり、また捨てレース無しに逆戻り? 何ででしょうねえ?

生ちゃん
 これは考え方の違いなんでしょうね…。この大会を団体戦と捉えるのか? それとも個人戦なのか? の問題だと思うのです。

 少なくともこの大会は団体戦ではないですよね。ある意味、インターハイで言うならば「ソロ競技」、総合についても「デュエット競技」に似ていると思います。ですから(現在の流れからすると)カットレースを設けるのは当然でしょうね。

 考え方が色々あるのは仕方ないですが、少なくとも、統一感を持ってやって欲しいと思います(葉山の時はカットなしで、蒲郡ではカットありというのがそもそもおかしな話である)。

外道無量院
 確かに「全日本学連」は何をやってるのか?と言われても仕方がない。でもしかし、名前はともかく、果たしてその実態はあるのか?

 さて、やるたびに勝者が変わる関東勢は決定的に抜きんでた力が無いという事だろうか? 早稲田大の山口優(4年・唐津西)は、クラスが途中で変わったとは言え、1年生からレギュラー級として経験も充分に積んでいるし、永松瀬羅(2年・別府青山)という山口祥世(ノエビア)と組んで五輪キャンペーン中のクルーという強力なペア。

 私には、他の関東勢に比べると有利な立場だと思える。むしろ「勝ちきれない」のは彼女がムラがあるタイプだからなんじゃないだろうか。関東勢では、この早稲田ペアが地力は1番だ。

 反対に入学以来、女子部員の不足から高校時代まで経験のないクルーをしていた日本大の新谷つむぎ(2年・横浜創学館)が、中山由佳(2年・唐津西)とのスキッパー争いに勝ち、スキッパー/クルーを入れ替わって出てくる。彼女には逆に山口優にない「勝負強さ」を感じる。少ないチャンスをモノにして、正規チームでもほぼレギュラースキッパー級だ。

 慶應義塾の長堀友香/武井裕子(3年・青山学院/3年・慶應女子)もスキッパーはレギュラー級なので、クルーのがんばり次第ではチャンスもあるハズ。

 そして、生ちゃん、3艇出てくる明海大勢はどうなのだろうか?

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関東予選会でトップ通過の山口優/永松瀬羅(早稲田大)。photo by M.Hada

生ちゃん
 はい、明海勢は関東春女子インでは又村あすか/又村 彩(4年・大湊)が優勝、林 優季/木村沙耶佳(2年・羽咋工業/2年・磯辺)が3位とさすがは団体戦レギュラーだけに順当だと思われましたが、肝心の関東個人選では、両者共に通過できず涙を呑んでいます。

 外道さんも挙げた、力は同等と思われる新谷、山口優、長堀は通過した訳ですので、何かが足りないのは事実ですよね。ただこれだけは言えますが、強風域なら自信があるのは間違いないと思います。実際結果も出てますしね…。

 さらには女子イン特有の即席コンビではない所は若干有利になるかと思われます。個人戦に出場できなかった悔しさをここで晴らしてくれることでしょう。

 またルーキースキッパーチーム・又村 優/澤田しおり(1年・大湊/3年・大島海洋国際)も健闘しており、どこまで上位進出できるかが楽しみですね。

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関東春女子インカレ優勝の又村あすか/又村彩(明海大)。photo by M.Hada

外道無量院
 九州からは日経大の3艇。今年はレギュラー級のペアを含んでの「真剣勝負」。このタイトルを確実に取りに来たように見える。山本佑莉/畑山絵里(2年・邑久/4年・星林)は、明らかにチーム内女子のベストスキッパー&クルーの組み合わせで勝負気配だ。

 残る2艇、平岡沙希/梅野美月(2年・境/1年・福岡第一)と松田のどか/牟田琴美(2年・本荘/2年・唐津西)も見るたびに上達しており、条件が揃えば優勝を含む全艇の入賞を狙っている気配が漂う。生ちゃん、日経に関しては?

生ちゃん
 はい、確かに山本/畑山ペアは昨年も6位ですし、全日本個人戦にも出場する力を持っている。優勝候補なのは間違いないですよね。畑山は和歌山・星林出身、今年のキーワードは「和歌山」だと私は勝手に思っていますので、彼女にも流れが来るかと…。

 平岡に関しては、昨年は人数不足で出場することができなかったですけど、一昨年の国体少年女子SS級チャンピオン。さらには先日の海の甲子園でも宮川惠子(日大OG・全女も優勝経験あり)に迫る大健闘と、ここでも期待しても良いのではないでしょうか?

外道無量院
 またオカルト発言がでたね!(笑)でもあながち、的外れのことを言っているとも思ってないけどね。

 近北・関西勢では、関西学院の松浦朋美/関友里恵(3年・長崎工業/2年・高松商業)、同志社の平野若菜/金咲和歌子(2年・長崎工業/4年・小林聖心女子学院)、そして一昨年のスナイプや 昨年の470では優勝争いに絡んだ甲南大勢として吉泉葵/奥田菜月(4年・県芦屋/3年・雲雀丘学園)が有力チームと見ている。生ちゃん、どうよ?

生ちゃん
 はい、外道さんが挙げた3チームは団体戦でもレギュラー級。全チームが入賞候補だと思われます。松浦は昨年7位、平野は8位。吉泉はスナイプでしたが、今年は470でも十分な活躍をみせている。異論はないですね。

 そういえば今年は470では有力なルーキースキッパーがいませんねぇ。あ、関西学院にいました! 昨年インターハイソロ準優勝・山下万理/大瀧茉衣子(1年・高松商業/1年・啓明学院)に期待してみましょうか。470では若干苦戦気味ではありますが、力はあるはずです。

 そろそろ結論といきましょうか、外道さんからお願いします。

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優勝候補の一角か?山本佑莉/畑山絵里(日本経済大)photo by 生ちゃん

外道無量院の470まとめ
◎・・・・山本佑莉/畑山絵里(日本経済大)
〇・・・・山口 優/永松瀬羅(早稲田大)
▲・・・・新谷つむぎ/中山由佳(日本大)
△・・・・吉泉 葵/奥田菜月(甲南大)
△・・・・松浦朋美/関友里恵(関西学院大)
△・・・・平野若菜/金咲和歌子(同志社大)
△・・・・長堀友香/武井裕子(慶應義塾大)
特注・・・明海勢の3艇

 本命は順当に評価して山本/畑山(日経大)とした。地元開催を最終学年で迎える山口優の地力発揮に期待して対抗。3番手争いは非常に難しいが、勝負強さがある新谷つむぎに「新勢力」としての期待を込めた単穴評価とした。大抜擢に思えるかも知れないが、名門・日大の正規チームでもレギュラーの地位を固めつつある上昇気運もある。

 以下、ここ2年、あと一歩でクラス優勝を逃している甲南大も狙っているタイトルと考え、次には吉泉艇、総合狙いで上位必須のノルマがあろう関学・松浦艇、女子インに対する姿勢の変化が伺える同志社・平野艇、と慶應・長堀艇の順とした。△印の4艇と明海大3艇にも、「本命・対抗」がもろい一面を出してしまった時には優勝まで含めてチャンスは充分にあるだろう。

生ちゃんの470まとめ
◎・・・・山口 優/永松瀬羅(早稲田大)
〇・・・・山本佑莉/畑山絵里(日本経済大)
▲・・・・又村あすか/又村 彩(明海大)
△・・・・林 優季/木村沙耶佳(明海大)
△・・・・吉泉 葵/奥田菜月(甲南大)
△・・・・新谷つむぎ/中山由佳(日本大)
△・・・・平野若菜/金咲和歌子(同志社大)
△・・・・松浦朋美/関友里恵(関西学院大)
注・・・・平岡沙希/梅野美月(日本経済大)
特注・・・山下万理/大瀧茉衣子(関西学院大)、又村 優/澤田しおり(明海大)のルーキー勢

 外道さんとほぼ同意見なのですが、風域によって変化するほど混戦なのは明白ですよね。山口優、山本、又村、林はどちらかというと強風が得意。逆の軽風シリーズになった場合は、吉泉・新谷・平野・松浦にチャンスがあるのかも?

 その中でも山口優/永松がオールラウンドに対応できるとみて本命にさせて頂きました。以下は甲乙つけがたく、ある意味どのチームでもチャンスがあるのでは? 注意したいのは平岡の動向、ルーキー山下、又村優には期待をこめて特注とした。

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