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ヨットレースの食事、取材現場の食事

※サンケイビジネスアイ紙で連載していたコラムを紹介します。


ヨットレースの国際大会では、世界各国のフォトグラファーやジャーナリストがひとつのボートに乗り込む。撮影 平井淳一

コラム(79)
ヨットレースの食事、取材現場の食事

 むかしから船の食事は豪華だと言われている。海に出てしまえば閉ざされた空間といえる船のなかでは、食事も娯楽のひとつ。客船や大型貨物船、帆船、軍艦などでは、いまでも専門の料理人が乗り込み、陸上よりも充実した食事が用意されるそうだ。

 プレジャーボートでも同じように食事には特別気をつかうもので、ヨットには料理をするためのコンロやシンクが備え付けられているし、むかしは、時化のなかでもお米を炊いて立派な食事を作ることが「できる」乗組員の必須条件だった。

 しかし、ヨットレースでは食事を作る時間も惜しまれるため、短時間で済ませることが多くなってきている。長距離レースではドライフーズやレトルト食品が使われ、デイセーリングならおにぎりやサンドイッチで簡単に済ませてしまう。休憩時間にすばやく栄養補給するためにゼリーだけという場合もある。

 仕事柄、海辺を取材するために国内外の海へ足を運ぶ。食事は外国を旅する楽しみのひとつだが、撮影現場ではそれほど楽しんでいる時間がないのが現実だ。ヨットレースを取材撮影する時は、朝から晩までボートで海上へ出ずっぱりということも少なくない。

 こうした場合、ありがたくも大会主催者がランチボックスを用意してくれることがあり、ランチの中身を比べてみるとお国柄がうかがわれておもしろい。

 アメリカでは、大味なサンドイッチとチョコバー、スナックのセット。フランスをはじめ地中海沿岸では、ハムとチーズを挟んだシンプルで大きなバケットと果物。基本的に包装に手間がかからず、片手で食べられる実用性を重視したものが選ばれているようだ。

 中国の大会で用意されたランチはちょっと変わっていた。手渡されたランチ袋のなかには、メインディッシュのパンと真空パックの温泉卵、シナチクのような不思議な食べ物、漬物など。独特の味で、食欲があまり進まなかった。

 日本では、ご飯とおかずを区分けした、いわゆるコンビニで販売されているようなお弁当が主流のようだ。ただし、風が強く、波も高い場合に、ボートの上でお弁当をひろげるのはむずかしい。また、はし袋やビニールなどゴミが出るのを考えると、シンプルなおにぎりやサンドイッチがベストのように思える。

 一度、冬の三河湾で重箱に入った出前のカツ丼が届いたことがあるが、「沖まで出前を届けてくれたのか?」とおどろかされた。いずれにせよ、海の上の食事は、格別な思い出があるものだ。(2012.2 文/平井淳一)

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