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デストップニュース/2013年2号


 キャプテン・オーディホーンなる船長のケープホーンをまわる時のアドバイス(?)からはじまった「デストップニュース」最新号です。年をまたいで開催されている世界一周ヴェンディグローブのトップ〜中位集団は、すでにケープホーンを順調に回航。しかし、年末年始にかけてヴェンディグローブで大きな事件がありました。(BHM編集部)

 事件の主人公は、スイス人のバーナード・スタム(50歳)。ヴェンディグローブには三度目の出場となります。スタムの艇〈Cheminées Poujoulat〉は、昨年12月、水力発電装置が故障のため、風を避けるためにニュージーランドの小島近くへ一時避難して、修理を余儀なくされました。


外部援助による失格→再審となったバーナード・スタム。しかし、水力発電機の故障からケープホーンでリタイアすることになりました。photo by BERNARD STAMM (SUI) / CHEMINEES POUJOULAT

 発電機の修理は思うようにはかどらなかったようです(参加艇の多くは、この水力発電機の故障に悩まされています)。12月23日、艇の近くにロシアの科学調査船がアンカリングしました。

 その後、しだいに海が荒れてきて、スタムのアンカリングが抜けてしまい走錨してしまうハプニングに。緊急を考慮したスタムは、ロシア船に助けを求めて相手船に係留しようと決めた後、作業をしているうちに、ロシア船員がヨットに飛び乗り、ロシア船にもやいました。

 その後、スタムは修理を完了しレースに復帰。しかし、この報告を受けたレース委員会はプロテスト。インターナショナルジュリーは、レース公示3.2、帆走指示書11.2にもとづき「ロシア船からの外部援助にあたる」としてバーナード・スタムを失格としました(1月1日)。

 すぐさまスタムは失格に対して不服を申し立てます。スタムの言い分によれば「ロシア船との係留は不可抗力だった」「ロシア船長の証言を求める」(※その後、ジュリーはロシア船長より証言を書面で受け取る)などを理由として、再審を請求。さらに、出場選手からのスタム擁護意見と再審要求書の提出、フランスセーリング連盟(Fédération Francaise de Voile)会長をはじめとするセーリングファンから、ジュリーに対して失格としたことへの避難と、スタムへの励まし、応援がはじまってひとつの騒動に。

 第三者から見るとスタムの主張は、いまひとつ弱いもののように思えますが、ジュリーは失格の判決を保留し、再審することを決定しました(1月5日)。

 しかし、レースに復帰したスタムですが、ツイていません。ケープホーン手前で「見えない何か」に衝突し、水力発電機が使えない状況に(発電機がないとオートパイロット、無線、造水機、航海計器ほか電装系すべてが使えず、レース続行は不可能に近い)。結局、1月10日にバーナード・スタムは、自らの意思でリタイアすることになりました。

 今回の焦点は、「オフショアレース中の審問で、外部援助の有無を判断すること」になるかと思います。レース中のスタムは、フィニッシュ後の再審を要求しました。その状況の調査をするにもスタムは1カ月以上レースを続けなければならないし、時間がたてば当時の細かい状況はあいまいになってしまうでしょう。

 世界一周レースのような特殊な状況で、どのような手順でどのように審問がおこなわれるのか、とても興味深かったのですが、スタムがリタイアしたことで、残念ながら、事実関係がはっきりすることはなくなりそうです。また、スタム擁護でわきおこった世論も影響したのかも個人的には気になりました。読者のみなさんは、どう思われますか?

 ちなみに2011年のシドニーホバートレースでも、トップ艇の選手が取材ヘリと交信し、相手艇の揚げているセールを質問して回答を得、その行為が「外部援助」にあたるとしてレース委員会から艇に対して抗議が出されました(その抗議は却下されました)。

 さて、今回のデストップニュースでは、ヴァーチャル・ヴェンディグローブ、アルゼンチンSOTO33選手権なども紹介されています。

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