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全日本ミドルボート選手権を振り返る(3)

ミドルボートにみるアマチュアリズムとプロセーラーの必要性

 全日本ミドルボート選手権を取材していて感じたのは、選手たちのヨットレースに対する高い向上心です。ミドルボートクラスの場合、選手たちのほとんどは社会人。以前、コラムにも書きましたが、選手たちは普段は会社員として働き、週末の時間をセーリング活動にあてる熱血サラリーマンです。(BHM編集部)


ブイまわり上下ソーセージ2周、1レグ1.2〜1.5マイル、1レース約1時間というコースの特長からマーク回航で差がつく場面もありました。写真は総合5位、Bクラス優勝の〈デッセ〉(YAMAHA33S)photo by Junichi Hirai

 これは、日本の大多数を占める社会人のセーリングスタイルで、土日練習、限られた有給を使って年に1度の長期ヨットレースに出場する、という方も少なくないでしょう。ミドルボートクラスは、社会人のアマチュアリズムが根底にあります。

 全日本ミドルは、“全レースインショア上下ブイまわり”というコースの特長から、マーク回航のクルーアクションがポイントとなる場面もありました。特にヘビージブまで風のあがった2日目は、ボート同士がニアミスしたり、プロテストの声があがったり、スピネーカーのアップ、ダウンでトラブる船もありました。

 回航アクションは、練習するほか上達の道はありません。反対に、繰り返し練習さえすれば、総合順位は必ずあがるものなので、出場チームには一層の成長を期待したいところです。大人数が一致団結しておこなうマーク回航は勝敗を左右します。チームワークでその壁を乗り越えることは、クルーザーレース特有の醍醐味といえるでしょう。

 また、選手たちとの会話のなかで、「あのチームにはプロがいるから、勝って当然…」という話しを何度か聞きました。出場した選手のなかには、どこに誰(プロ)が乗っているのか、に注目していた人も多かったでしょう。文頭に書いたミドルボートクラス=アマチュアリズムならば、セーリングを職業とするプロフェッショナルはミドルボートに不要では? という議論があってもおかしくありません。または、例えば、全員プロで固めたチームとアマチュア主体のチームがあったなら、レベル差がうまれることは否定できないでしょう。

 でも、バルクヘッドマガジン編集部は、日本にはプロセーラーが必要だし、もっと多くのプロが登場し、ミドルボートだけでなく、いろいろなセーリング、ヨットレースの現場に入ってくるべきだと考えています。いまのところ、チーム全員がプロとなるような状況は、その数が圧倒的に少ない日本では考えにくい現状があります。

 個人的には、高い技術と経験、知識を持つプロセーラーは、自身の意識を高く持ち、日本をけん引する役目を担ってほしい。逆に、契約するオーナーは、きびしい視点でプロセーラーを正しく評価していただきたい。当然、実力の足りない人は淘汰されることになりますが、ゆくゆくはプロの持つ技術や知識が選手たちに広がり、全体の向上とヨットレースの魅力につながると考えられます。

 では、プロとアマはどのように区別されるのでしょうか? 国内では「セーリングが上手で、いくつかのチームから声がかかる助っ人」を総称してプロと呼んだする曖昧なものです。しかし、国際大会では明確な規定があります。これはISAFが認定するセーラークラシフィケーションで、ISAFのウエブサイトからいくつかの質問に答えて進むと登録されるものです(無料)。

 グループ1・アマと3・プロがあり、プロの人数制限されるレースでは登録が義務付けられています。ちなみにオリンピックに出場した選手は、五輪後セーリングと関係のない仕事に就いたとしても5年間はプロとして扱われる新規定が加わりました。詳しい説明は省略しますが、この規定のなかでは、セーリングの経歴だけではなく、【契約内容と報酬】が重要なポイントになっています。

ISAF Sailor Classification
ISAF Sailor Classification FAQs(PDF)

 このプロ・アマに区分されることになった理由は、想像できると思いますが、海外のグランプリレースでは、お金に糸目をつけない何人かのオーナーが、勝ちたいあまりに腕利きのクルーを囲ってしまい、フリート内でレベル格差を生んでしまったことがあります。格差が生まれると、下位グループはそのフリートに魅力を感じなくなり、やる気を削がれてチーム撤退、数年後にはフリートは衰退する、の繰り返しがありました。

 フリートを持続させるために、クラスルールとしてプロの乗艇人数に制限を設けたり、ワンデザインクラスでは1年間に作れるセール数を決めたり、また、ヘルムスマンをオーナーやアマチュア(グループ1)に限定するといった規定が組み込まれるレースが増えてきました。この背景には、「そのフリートで、できるだけ長くヨットレースを楽しみたい」という意図があります。

 ミドルボートクラスがアマチュアリズムを尊重するのならば、プロ規定を用いてもいいように思えます。プロがチームに加わることで、ある部分では大きく進歩することは間違いないし、情熱のあるチームほど、短期間で効果が現れるでしょう。また制限されることでチーム間の平等性がある程度保たれます。プロ規定の導入意見は、あくまで編集部の個人的なアイデアですが、いずれにしても、復活した全日本ミドルボート選手権を継続させ、盛り上がるための意見を全国から集めてみるのもおもしろいかもしれません。ミドルボートクラスは、発展する部分が大いにあると思います。

◎2012全日本ミドルボート選手権
http://www.tosc.jp/mb/

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