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キーウエストレースウィークを振り返って

9日間のアメリカレース遠征から戻りました。キーウエストのエメラルドグリーンの海と期待を裏切らない風は、まさに世界で一級品のセーリングゲレンデです。大会そのものを日本で例えると、沖縄の海に集まって行うヨットレースフェスティバル、といったところでしょうか。美しい海でシビアなヨットレースを楽しむ、というテーマがぴったりのイベントです。今回、実際に自分でレースに出場すると、通常の取材とは別の視点でレースがみえてきました。ここでは、バルクヘッドマガジンが感じたことを、とりとめなく書いてみたいと思います。(BHM編集部)

◎無駄を省いた迅速なレース運営
キーウエストレースウィークは華やかな国際レガッタです。アマチュアクラスとプロクラスが明確に分かれ、それぞれの目的でアメリカ南端のリゾートへやってきます。リゾートのレースとはいえ、レース運営はしっかりおこなわれます。メルジェス32の場合は、上マークまで微風で1.3マイル、強風で1.7マイルの距離が取られ、コースも4レグと5レグが行われました。

運営そのものもテキパキしていたのが印象的です。ブラックフラッグの掲揚も早く、1度ゼネリコするとすぐに掲揚されていました。これは世界のディンギーレースでも同じ傾向にあり、ブラックフラッグ掲揚が以前に比べて速くなっています。この背景にはテレビ中継など時間的制約も関係しますが、迅速なレース運営をするためであり、無駄な時間を省くのに選手の不満はないでしょう。また、レース進行の様子やリコール艇は随時国際VHFでアナウンスされます。

係留バースからレース海面までは、約1時間かかります。毎日のスタート時刻が11時30分に決まっていたため、朝は9時頃にハーバーへ向かい、9時半に出港。10時30分から40分ほど海面で走りをチェックするというルーティンでした。レースが終わってバースに戻るのは午後4時頃になります。後片付けをして、壊れたりした部分は、契約しているボートマネージャーに仕事を託します。

◎世界の一流プロセーラーが集まる
この大会は、ミニマキシからJ80のようなアマチュアクラスまで13クラスが行われました。昨年からの変更は、IRC52クラスとFARR400クラスの新設。5艇が参加したFARR400はFARR40(7艇参加)と重なる部分があり、これからFARR400が増えていくのか? それともFARR40クラスが継続していくのか、現時点では予想できません。ちなみに今年のFARR40世界選手権は、9月17〜20日までアメリカ・シカゴで開催されます。

各チームが集めるセーラーはさすがに豪華です。オリンピック関係では、ポール・グッディソン(北京五輪レーザー級金メダル)、ハーミッシュ・ペッパー(スター級)、マーク・メンデルブリック(スター級)といった一流がやってきました。彼らは当然、今週マイアミで行われるISAFワールドカップ「マイアミOCR」に続けて出場するようです。

また、テリー・ハッチンソン、エド・ベアード、バウアー・ベッキン、ギャビン・ブレディ、ブラッド・バタワースといった一級セーラーを始め、グランプリボートにはプロクルーが続々乗艇。ペイドクルーのギャラだけで、1チームにつき1日何十万、何百万かかっているのか想像すると恐ろしくなります。しかし、これがグランプリレースの世界です。オーナーは勝つためにプロを雇い、プロはそれに見合った結果を残します。そこに失敗はありません。失敗したら淘汰されてしまう世界だからです。

次世代プロセーラーの巣窟といえるメルジェス24では、モス級のワールドチャンプでもあるボーラ・グラリとネイザン・ウィルモット(北京五輪470級金メダル)の弟、ジェイミー・ウィルモットが圧勝。また、マッチレース界からも、イアン・ウィリアムス、トーバー・ミスルキーといったスキッパーがビッグボートにタクティシャンとして乗り込んでいました。今後、こうした20代、30代のセーラーが、より大きなグランプリボート、またはアメリカズカップチームへと進出していくのでしょう。

日本のプロセーラーというカテゴリーは非常に小さく、未成熟なものですが、東南アジアを含めて海外には仕事として成立する環境があります。また、ISAFプロアマ規定・グループ1に所属するプロセーラー予備軍もたくさんいます。いわばギャラの安い下積みセーラーですが、このような大会でレースチームに関わっていないことにはステップアップできません。

日本の若いセーラーにもチャンスはあります。しかも、BHM編集部からみると、たくさんのチャンスが転がっているようにもみえます。しかし、自分から手を伸ばし、自らその土俵にあがり、何十倍の努力をしなければ、実現できないことです。ぜひとも、世界に挑戦する日本プロセーラーの登場を願います。

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