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連載第13回 空飛ぶ日記「ノーズダイブを繰り返した後、天国への扉をノックする」

 みなさん、春です。編集長の冬限定ひとりモス合宿は、残りわずかとなりました。この冬は可能な限り海に出てフォイリングを堪能しました。海に出られない日はバルクヘッド号の修理や改造。これもまた楽しいものです。フォイリング・テクも始めた頃に比べたら少しは上達したかな、と思います。これだけ時間使って成長しなかったら、やってらんねー。(BHM編集部)

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冬季限定のひとりモス合宿は2月いっぱいまで。この冬はよく練習しました(と思います)。photo by Junichi Hirai

 思えば、モスに乗り始めたのは、2015年の1年間で2回しかセーリングできなったことがきっかけでした。1年間、ほとんどの週末を海の上にいるにも関わらず、たった2回です。それも撮影のためカメラを構えながらセーリングしただけ。発作的に「これでは、いかん」と思いました。

 ヨットレースがオフになる冬だけではありますが、おおむね満足に乗れています。しかし、残念ながらモスという船がトンガリすぎていました。とにかくよく転びます。セーリングのびっくり映像で、バウ先が波に突っ込んでノーズダイブ、人間が吹っ飛ぶシーンがありますが、それは特別なことではありません。ノーズダイブですら慣れてくるから不思議。慣れたくないのに。

 さて、関東地方に春一番が吹いた翌日。吹き返しの北風が強く吹いていますが、徐々に落ちてくるという予報を見て、ハーバーへ向かいました。海上は「おれの風」(北東風・10〜14ノット)のようにも見えますが、吹いているようにも見える。相模湾の北の強風は、想像以上に強いブローが入ることがあり、モスの出艇可否の判断はむずかしいものなのです。

 先日、20ノットの強風で調子に乗って海に出たら、湾内から出られず救助される、という失態を犯したばかりです。この時は、本当にキツかった。沈を起こしてもブローに吹き倒され、走りだすことすらできない状態でした。失敗をして自分の限界を知っていくのですが、その失敗は海に出てみないことには分からないのだから、必ず1回以上はひどい目にあうことになります。

 で、いざ出艇。風速は14ノットぐらいでしょうか。時折20ノット近くのガストが入ります。北風のブローはパワフルで、メインシートを引き込むと同時にフォイリング。スピードが1秒毎に倍増していく感じです。そんな中、走ってはダイブ、走ってはダイブを繰り返しました。

 スピードアップが怖いから、船を風上にのぼらせて適当にしのいでいたところ、遠くのボートから声が聞こえます。「おい、勇気を出してベアしろ。オーバーヒールを上らせて対処していたら、成長しない。とにかくベアしろ。スピードは慣れる。勇気だせ」。危なげな編集長を見かねて、別件で海に出ていた村木コーチがアドバイスしてくれたのでした。でも、怖いんですけど。。。

 よーし、勇気だ、勇気。ティラーを引けば、いいんでしょ。いくぞ。ズガガガガー。ギャガガガガー。ズギャズガジェヴェゴヴァヴァ××××××。ん? なんだこの音は? セールのリーチからでしょうか。いままで聞いたことのない異音が聞こえてきます。しかし、セールを凝視できず。肩越しから襲ってくるブローをよく見ていないと一瞬で吹き飛ばされてしまうからです。

 この強風の北風の中で「勇気+激走+沈」を数十回繰り返して、本日の練習はお腹いっぱい。1時間ほどで体力の限界を感じたので終わりにするとします。帰港して最近搭載しているGPSスピードメーターを見て驚きました。なんと最高29.6ノットと表示されているではありませんか。

 自己最高速度を更新です。きっと沈する直前、なにかのタイミングで偶然出たスピードなのでしょうが、そのスピードを体験したことに違いはありません。天国(30ノット以上の世界)への扉をノックしてきたようです。どうりで怖かったはずだ。。。


江の島に向かって飛ぶ編集長。村木コーチが撮影してくれました


風が強くて出艇できない日、バルクヘッド号を改造してアジャスタブル・ワンドを取り付けました(ノーマルタイプは動かない)。このワンドの先端が水面につくことでモスの高さを調整します。ああ、早く使いたい

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編集長のベロシティック製プロスタートが29.6ノットを表示。本当か?photo by Junichi Hirai

連載 バルクヘッドマガジン編集長の空飛ぶ日記
第1回「編集長の空飛ぶ日記、はじまります」
第2回「神様ありがとう、編集長は空を飛んだよ」
第3回「海に出たいのに出られない」
第4回「ものすごいスピードでドカーンと飛ばされる」
第5回「肩の靭帯が切れて凹む」
第6回「編集長、沼から地獄に流される」
第7回「海外のモス野郎にパーツを奪われる」
第8回「ペットボトルがつかめない」
第9回「飛べばハッピー。フォイリング幸福論」
第10回「スターボードタックで飛び続けたら江の島に着いた」
第11回「モスに乗り始めて1年が経ちました」
第12回「ジュニアヨットからヒントを得た、かもしれない」

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