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2016クリアウォーター49er&FX&ナクラ17三艇種合同世界選手権開催

 2月9〜15日、フロリダ西海岸クリアウォーターで49er級世界選手権、49erFX級世界選手権、ナクラ17級世界選手権が開催されました。リオ五輪イヤーとなる今年は、開催国のアメリカをはじめ数カ国で国内代表選考となる大規模なイベントとなりました。日本からは49er級に牧野幸雄/高橋賢次、FX級に松苗幸希/原田小夜子が出場しました。(BHM編集部)

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49erワールド4連覇を達成したピーター・バーリング/ブラー・チューク。Photo by Jen Edney / EdneyAP / 49er Class

 本大会はヨットレースの世界選手権には珍しく、3艇種が合同開催されました。49er男女は毎年同時開催されていますが、ここにナクラが加わったのは初の試みです。1月マイアミワールドカップから連続して行えたこと、USセーリングの活動地としても知られるクリアウォーターだからできたことでしょう。

 本大会のトピックスは、まずピーター・バーリング/ブラー・チュークが同クラス4連覇を達成したことです。予選からトップを連続して奪取、最終的にダブルスコアで優勝を決めました。ご存知のようにバーリングとチュークは、アメリカズカップチームであるエミレーツ・チームニュージーランドに所属して、オリンピックやモスでも活躍しています。現在25歳のバーリングは高校生(17歳)で北京五輪470級に出場しました(クルー)。21歳で出場したロンドン五輪49er級では銀メダルを獲得。当然、リオ五輪の49er級金メダル有力候補です。

 一方の大注目選手、アルテミスレーシングのヘルムスマンを務めるネイサン・アウタリッジ/イアン・ジャンセン(AUS。ロンドン五輪金メダル)は、一時2位まで上昇しましたがメダルレースで失格(OCS)があり総合6位へ。49erでもモスでも、そしてアメリカズカップでもバーリングに差を広げられてしまう結果となっています。

 また、49erFX級はスペインのトマラ・エシュゴエン/ベルタ・ベタンゾス・モロが初優勝。エシュゴレエンはロンドン五輪女子マッチレース金メダリスト、ベタンゾスは470級でロンドン五輪へ出場した経歴があります。ナクラ17級はビリー・ベッソン/マリエ・リオウ(FRA)が4連覇を達成しました。

 これまで何度も書いていますが、オリンピックイヤーの世界選手権はもっともハイレベルな大会になります。選手たちがブラッシュアップしている最中の世界選手権と、五輪が終わった来年の世界選手権では選手の技量やレース内容に雲泥の差が生じます。この世界選手権を追っていて、オリンピックを半年後に控え、どの種目も活躍するトップチームが固まってきている印象を受けました。

49er世界選手権成績
1. NZL Burling / Tuke 40p
2. AUT Delle Karth / Resch 81p
3. GBR Fletcher-Scott / Sign 88p
4. POL Januszewski / Nowak 95p
5. DEN Warrer / Thomsen 99p
6. AUS Outteridge / Jensen 99p
20. 牧野幸雄/高橋賢次(トヨタ自動車東日本) 177p

49erFX世界選手権成績
1. ESP Echegoyen / Betanzos 62p
2. DEN Schutt / Schutt 75p
3. GER Jurczok / Lorenz 76p
4. NED Bekkering / Duetz 77p
5. ITA Conti / Clapcich 79p
6. BRA Grael / Kunze 83p
33. 松苗幸希/原田小夜子(ガルフネット)

Nacra17世界選手権成績
1. FRA Billy BESSON / Marie RIOU 63.0p
2. DEN Allan NORREGAARD / Anette Viborg ANDREASEN 121.0p
3. ITA Vittorio BISSARO / Silvia SICOURI 126.0p
4. AUT Thomas ZAJAC / Tanja FRANK 127.0p
5. AUS Jason WATERHOUSE / Lisa DARMANIN 137.0p
6. GBR Ben SAXTON / Nicola GROVES 148.0p

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43艇が出場したナクラ17級。アメリカのリオ五輪代表はモスのワールドチャンピオンでもあるボラに決定しました。photo by Laurens Morel – www.saltycolours.com

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49erFX級のスタート。日本男女はリオ五輪の出場権利を掛けて3月のアブダビで開催されるASAFアジア選手権で戦います。Photo by Jen Edney / EdneyAP / 49er Class

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49erFX級1位スペイン、2位デンマーク、3位ドイツ。Photo by Jen Edney / EdneyAP / 49er Class

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Nacra17優勝のビリー・ベッソン/マリエ・リオウ(FRA)。photo by Laurens Morel – www.saltycolours.com

◎49er、49erFX class Association
http://49er.org/
◎Saillife(大会オーガナイズ、成績等)
http://www.saillife.com/

情報のパッケージ化。ヨットレースのウエブサイト連動プログラムが進化してきた

 最後にBHM編集長が注目していたのは、49erクラスの解析面を昨年から担当しているSAPのプログラムです。みなさんは、あまり気にしていないかもしれませんが、大きなヨットレースのウエブサイトが年々変化してきています。これまで別々に動いていた、選手のエントリー、ノーティス、成績、トラッキング(航跡)、ライブ中継、写真、プレスレポート等が、すべて連動して公開されるようになってきたのです。

 なにが進化なのかというと、いままでこれらのプログラムは別々に運営されていました。たとえば、アメリカのヨットレースシーンを例にすると、大会公式サイトがあり、選手のエントリーや成績は「Yachtscoring」、トラッキングは「TracTrac」、ライブ中継や動画は「T2P」という会社や組織が契約することが多く、それぞれ独自のサイトを通じて配信していました。

 それが、編集長の記憶では、2013年ISAFセーリングワールド前の「SALTI」が登場したあたりから“情報のパッケージ化”が進んだように思えます。SALTIはスペインを中心に欧州で使われているヨットレースに特化したウエブプログラムです。昨年の唐津420級世界選手権の英語版サイトにも使われていたので、みなさんも見たことはあるはずです。大きな大会ではプリンセスソフィア杯のウエブプログラムで、国際470/420級協会も契約しています。

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SAP Sailing Analyticのウエブサイトではレース中の選手のセーリングデータが見られます

 49er級世界選手権では、昨年のアルゼンチン、そして今回のクリアウォーターワールドで「SAP Sailing Analytic」(http://www.sapsailing.com/)という解析プログラムが採用されました。SAPはキールウィークやエクストリームセーリングシリーズで使われていたようで、このデータ部分がよく出来ています。

 注目点はレース艇のデータ(レース毎、1レグ毎のスピード、走った距離、SOG等)、レース海面の風やコンディションがリアルタイムで公開されます。これを見ると、どんな走りをしていたのかが、分かる仕組みになっています。

 上記の解析データだけでは目新しさはないのですが(過去になかったわけではありません)、これが、ライブ中継のグラフィックと成績表と連動していることに編集部はおどろいたわけです。ちなみにISAFワールドカップでは、トラッキングとライブ中継は別々に公開されて閲覧しにくく、編集長の経験ではデータがスタックしてしまい見られないことが多いように思います。

 観客席のないヨットレースは、商業的に成功しにくいスポーツイベントと言われています。開始時間は風次第、というテレビ中継にはもっとも適さない要素もあります。これまでセーリング関係者は、その壁を乗り越えるべく、テレビ中継やトラッキングをウエブサイトを通じて公開することにつとめてきました。ボルボ・オーシャンレースやヴェンディグローブのように「レース情報を世界へ広める」という意味では成功している例もあります。

 今回の49erワールドは、盛り込みすぎといえるほど、セーリング競技にできる可能性を実行した大会だったように思えます(USセーリングの気合いも感じられました)。

 長年の努力もあって、ヨットレースのデータをエンターテインメント性をもって公開することは可能になりました。そして、「SALTI」や「SAP Sailing Analytic」等をつかって、情報のパッケージ化もできるようになりました。そして、次は「その情報をどのような手法で見せるのか?」という段階へ進んでいくように思えます。

 ただし、問題もいくつかあります。情報発信過多によりファンを混乱させ、正しい情報がつかみにくくなっていること。特にSNSの乱立を見ていると正直に言ってうんざりします。大会メディア側は、「たくさん情報をアップするから好きなモノを受け取ってね」というスタンスなのでしょうが、情報の受け手は、そこまで頭を使いたくありません。セーリングを広めたいと努力している情報発信側にしたら、悩ましい部分でもあります。


世界選手権メダルレースライブ中継(再放送)

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