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風の動きを知るいくつかのヒント

※サンケイビジネスアイ紙で連載していたコラムを紹介します。


冬の海は空気が澄んで景色が明瞭になる。冬の相模湾では富士山が美しい。撮影 平井淳一

コラム(75)
風の動きを知るいくつかのヒント

 セーリングで大切なのは風の変化を知ること。風とは空気の移動。風そのものを見ることはできないが、その周りにあるものから風の移動を推測できる。水辺にある情報を集めると、目の前を通りすぎていく風の流れが、不思議と見えてくる。ある有名なセーラーは「風に色がついて見える」と言った。経験を積めば、無形である風を見分けることができるという。

 上空の雲を見れば、そこに流れる風と進行方向がわかるだろう。また、丘の上に立つ煙突の煙や、前方を走っているヨットも参考になる。また、風によって作られたさざ波からも予測できる。目を凝らして水面をみつめていると、表面を風が通り去る時に小さなさざ波が立っている。水の表面(色濃く変色する)のさざ波を見て、風の流れていく方向や強さがわかるのだ。

 こうして周囲のヒントを集めると、何もない海の上にある風の流れを、ある程度予想できるようになってくる。セーリングでは、この風の方向や強弱にあわせて、コントロールロープを出し入れして、エンジンの役割をするセール(帆)に風がうまく流れるように整えるのである。

 風は風向(東西南北)と風速に分けられる。風速の単位は、日本では「m/s」(メートル毎秒)が使われる。風速5メートル毎秒とは、1秒間に5メートル進むことを意味する。しかし、メートル法を使用しない国もあり、国際的には「kt」(ノット)を使うのが一般的だ。1ノットは0.514メートル毎秒。1ノットは1メートル毎秒の約半分と覚えておけばいい。

 風速34ノット(17.2メートル毎秒)以上の熱帯低気圧は台風と呼ばれる。台風のような荒天のなかでセーリングするのは非常に危険だ。ヨットの種類にもよるが、10〜15ノット程度が最適なセーリングの風域といえるだろう。

 しかし、同じ10ノットの風でも、冬と夏ではその重さが違ってくる。空気は同じ体積であっても温度が低いほうが、密度が濃く比重が大きくなり重くなる。温かい空気をともなう風と、冷たい北風で、同じ風速であっても受ける感覚が異なるのはこれが理由である。実際に、30度の気温で吹いている風は、同じ風速であっても腰が弱く、頼りない印象で、10度以下の気温で吹く風は、セールからコントロールロープを通じて手に伝わる感触がズシンと重くなるのがわかる。

 冬に吹く風は、カラダの芯まで突き刺さすように冷たく重いのが特徴的だ。西高東低の典型的な冬の気圧配置は、日本海側には大雪をもたらし、太平洋側は乾燥した強い北風が吹く。手がかじかんでしまうような冷たい風の中でセーリングしていると、楽しくもツライというのが本音。それでも、いい風でセーリングすることは、セーラーにとって最高の贅沢なのである。(2012.1 文/平井淳一)

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