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豪雨の中で初心者が悪戦奮闘。バーカップ!

 日本列島を台風が駆け抜けた週末。9月15日、バルクヘッドマガジン編集部は「第4回芦屋・西宮バーカップ」を取材してきました。毎年記事で紹介している大会ですが、実際に観戦するのははじめて。バーカップは、これまでのヨットレースとはちょっと違ったコンセプトのイベントなのです。(BHM編集部)

台風襲来直前に行われたバーカップ。レースは各クラス1レースのみ。選手は本部船で船を乗り換えます。風は5〜8メートル程度ですが時折強いガストが入ります。photo by Junichi Hirai

 名前が、バー(BAR)カップというだけあって、大人の社交場であるカフェバーが企画の発端です。ずっと海辺に住んで、働いているのに、海に出ることはほとんどない。「海に出てみたいね。それならヨットに乗るのはどうかな?」という、カウンターのたわいもない雑談からスタートしました。

 そこから話が進み、近所のバーやレストランのお客さん、働いている人でチームを組んで戦う「お店対抗戦」がこのバーカップ。スポンサーは、芦屋・西宮の商店街が中心で、お店自慢の品々を持ち寄ってBBQしたり賞品に当てられます。大会のスローガンは「ぼくたちの街に海の文化を取り戻そう」。今年で第4回を迎え、地域活性化イベントとしても定着してきました。

 と、ここまでは成り立ちこそ違え、当日のヨットレースは普通におこなわれそうなもの…。でも、バーカップはバルクヘッドマガジンで紹介しているヨットレースとは雰囲気が正反対なのです。

◎バーカップの特長
(1)初心者しか出場できない
 そもそも誰もヨットレースをやったことがない場面から始まった企画です。経験者は「上手い」から出場できません。初心者の定義は、過去2回バーカップに出た人はダメという至って簡単なもの。ただ、大会が4回を迎え、当初のメンバーが上達してきたことから、バーカップクラスの他に、上位クラスのバーテンダークラス、オープンクラスが設置されました。しかし、メインはバーカップクラスなのです。

出艇時から大変なことになってます。初心者限定のバーカップクラスはみんなで手伝って出艇しますが、すぐさま沈する選手も。photo by Junichi Hirai

(3)外野がサポートしてもちょっとなら問題なし
 通常のヨットレースでは外部援助としてルール違反とされる部分ですが、バーカップは真逆です。応援サポーターは、防波堤から大きな声で援助します。「メイン出してー」「のぼりすぎー」「ヒラハラさーん、もうレース終わってる(DNF)みたいだよー」と、こんな感じで声援が飛び交うわけです。運営艇も風に流されていった船を救助にいき、えい航したままスタートさせるという良い意味で「適当」感があるのです。そもそも全員、夏から初めて2カ月程度のヨットレース初心者。ルール違反だと咎める人はいません(一応、大会規則ではダメってことになってますが)

レース海面は芦屋の兵庫県立海洋体育館前。防波堤に囲まれた安全な海域です。防波堤からはサポート部隊が選手に声援を送ります。photo by Junichi Hirai

(3)レース後は持ち寄りBBQ
 レース後はバーベキューがはじまります。ここでは芦屋、西宮界隈にある大会を応援するスポンサーが持ち寄った食べ物(精肉店ならお肉、パン屋さんならパン等)、飲み物がふるまわれます。これが大会協賛金代わりです。バーベキューからの参加者も多く、前回は総勢200名以上を集めました。スポンサーにとって効果的なアピール方法といえるのではないでしょうか。

(4)バーカップ特別ルール
 初心者ゆえ、選手はヨットレースのルールを知りません。そこで大会実行委員会は、事前に超最低限の海に出るのに必要な一般規則を説明します。それは、

◎基本原則
1.スポーツマンシップ、2.危険な状態の人・物の救助(義務)、3. レースをすることの決定(自己責任)
◎最優先事項
1. 人命第一、2.接触の回避、3. スーターボードタック優先

 ということ。当たり前のことですが、編集部は目からうろこが落ちました。ヨットレースの経験を積んで競技志向に進んでいくほど、大切なことを忘れがちになります。この夏、このバーカップと極端にある、インターハイ、OP、インカレを取材してきたので、改めて海の基本の大切さに気付かされました。

船を操る選手はレースどころではなさそうでドタバタですが、時には白熱した戦いも!。photo by Junichi Hirai

 船を速く走らせたり、上手にマークを回るのは何のため? かと言われたら、「ヨットレースで勝つため」だけではありません。操船技術が上がる、知識を増やすということは、海の世界では「遭難者をいち早く助けてあげるため」。うまくマークをまわれることは、安全に救助者に近寄る技術を持っていることを意味しています。

 こと船に関して言えば、技術を向上させることは「自分の命を守ること、誰かを助けること」につながる重要事項です。そのひとつとして、わたしたちはヨットレースを目標に練習しているのです。バーカップの背景には主催者のこのような思いも隠されているんだなと感じました。

レース海面は土砂降りの雨に

 レースが始まると雨が降り始め、次第に海面は荒れ模様に。選手たちは何度も何度も沈をして起こしてを繰り返します。風も上がってきて、300メートル以上離れた橋げたまで流されてしまう選手もいました。当然、選手の顔は真剣そのもの。船を走らせようとしている一生懸命な姿が印象的でした。きっと翌日は筋肉痛に悩まされることでしょう。

 レースは初心者のバーカップクラスとバーテンダークラスだけおこなわれ、オープンクラスは強風雨のためにキャンセルに。陸に上がると豪風豪雨がやってきて、第4回バーカップは終了しました。

 地域一体型、初心者限定のバーカップ。こんなヨットレースイベントが全国で増えていったらたのしくなるのではないでしょうか。みなさんの地域でも、ぜひ既存のルールにとらわれないヨットレースイベントを考えてみてはいかがでしょう。また、「こんなおもしろいヨットレースをやってるよ」という情報があれば、編集部へお寄せください。

◎バーカップ(FACEBOOK)
https://www.facebook.com/BarCup

艇長会議で吉田レース委員長と杉原実行委員長からひとこと。「ちょっとぐらいならフライングしてもオッケー。ちょっとならね(笑)」とレース委員長。photo by Junichi Hirai
使用艇はオープンビック。日本では江の島と西宮を拠点に乗られているジュニア、ユース向けのディンギーです。日本は毎年世界選手権にも挑戦している注目のボートです。photo by Junichi Hirai
バーカップはお店ごとにグループになって戦う対抗戦。仲の良いバー仲間が集ってチーム結成。この夏に猛練習して挑みました。photo by Junichi Hirai
第4回バーカップ成績

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