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海の乗り物はすぐに止まれない

港に入港してくる大型貨物船。大型船はすぐに停止できないことを知っておきたい。撮影:ESMERALDA

サンケイビジネスアイ・コラム(33)
海の乗り物はすぐに止まれない

セーリングクルーザーやボート、水上バイクのような海の乗り物は、クルマやバイクとよく似ていて、ステアリングホイールやハンドルなどの操舵装置がついている。アクセル(スロットルレバー)や前進後進のギアがついているのも同じだ。しかし、その操船方法はかなり違う。陸の乗り物と大きく違うのは、停止したり減速するためのブレーキがついていないこと。船はクルマのようにすぐに止まれない。

それでは、船はどうやって停止するのか。その方法のひとつは、まずアクセルをニュートラルへ戻すこと。船は惰性で進んでいくが、速度を落としてやがて停止する。急ブレーキの代わりにギアを後進に入れる方法もある。しかし、クルマとは違って停止するまでに時間と距離が必要になる。

タンカーのように大型貨物船では、停止するまでに数十分も掛かる。30万トンの大型タンカーが16ノット(時速30キロ程度)で進んでいる場合、エンジンを後進に入れて急ブレーキを掛けても停止するまで15分、さらに3キロほど進んでしまう。左右に方向転換するのも、船が大きくなるほどクイックに動くことはできない。

エンジンを持たないセーリングディンギーはどうやって停止するのか。ディンギーの場合、まず走る原動力となるセールから風を逃がすために、コントロールロープをゆるめる。そして舵で船を風上に向ける。風を正面から受けることで速度が落ち、しだいに停止するというわけだ。

船の性能を知っていないと、さん橋から出着艇できないし、海で船と接触しそうな時に避けられないだろう。海には海上衝突予防法という交通ルールがあるが、船の大きさや種類の特性を知っていないと事故につながりかねない。「船はすぐに止まれない」のである。(2011.3 文/平井淳一)

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