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大学生マッチの世界選手権、ユニバーシアードを終えて

9月25〜9月30日まで、オーストラリアのパースで大学生マッチの世界選手権・ユニバーシアードに出場してきました。ユニバーシアードは大学生の世界チャンピオンを決める大会で今大会では9か国が参加し、予選ラウンドロビンでは各国と2回ずつ対戦することによって順位を競い合いました。私たちの結果は7位で終わり、日本チーム一同、マッチレースの世界との実力の差を感じ、反省も多く課題の残る大会となりました。(レポート・写真提供/小倉隆寛 立命館大学)

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学連ヨットの世界からキールボート、マッチレースへ活動を広げているユニバーシアード日本代表チーム

初日
レース初日はオーストラリアチームの対戦から始まり、ラウンドロビンで7カ国と対戦。2勝5敗と厳しいスタートを切りました。内容としては、36フィートという大きさの船をコントロールしきれず、他国のボートコントロールに差を感じました。スタートのマニューバで船を止めてしまって、前半が有利な展開でもコントロールポジションを取られるといったシーンが多くみられる初日となりました。

2日目
強風で最高25ノット程の風でしたが、初日の反省を活かし、レースの合間を使ってメンバーで息を合わせ、前日にSam Gilmour氏にアドバイスを頂いたこともあり、ボートコントロールの面では初日に対しはるかに良くなっていきました。

第9フライト、オーストラリアのBoulden(初日1位、最終2位)とのマッチではスタートから先行し、下マークまで勝っていましたが、スコールのような雨雲とともに風が不安定になり、シフトと走らせ方が合わず、抜かれてしまうという惜しい場面が印象に残っています。

3日目
微風〜中風で迎えたラウンドロビン最終日。フランスのFollin(世界ランク15位)との一戦が印象に残っています。スタートでセパレートし、ファーストブローを掴んで、相手をフォープレスに持って行きました。下マークまで差を開かせるも、逆に2上レグではワンシフトで大きくゲインされ、その後タッキングマッチでスピードをなくし、2上で負けるという展開となりました。

また、ラウンドロビン最終レース、イタリアのGlattiに対し、スタートから先行し、シフトとタックでのポジショニングを上手く運び2上まで先行を守り切りました。

そこで、ポールセットし、オフセットマークを回ってホイストせず相手のスピンアップを確認してから下にオーバーラップしラフィングする戦略を取りました。相手はスピンが上がっているため対処するだけの時間は十分与えながらラフィングしたと自認していたのですが、レッドフラッグによるペナルティを受け敗北しました。

フランスとのマッチではセーリングストラテジーと未熟さ、イタリアとのマッチではルール内での攻撃・守りの甘さを痛感したレースでした。

4日目
4日目は10ノット前後の微風の中で順位決定戦を行い、チリのZhouとの戦いでした。これまで2回戦ってきた感覚でボートコントロールにはアドバンテージがあるのもわかっていたため、スタートから船を止めないことを意識し、タックマッチ等で差をひらかせることができ、連勝2勝して7位に決定しました。

以上が大会総括です。続いて今回のメンバー各々が自己紹介並びに大会を通じて感じたことまとめましたので、ぜひご一読下さい。

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スキッパー 山田剛士
1994年2月27日生まれ、175cm/62kg、同志社大学ヨット部OB

経歴
2008年 OPアジア選手権大会出場
2009年 九州選抜大会 優勝
2010年 沖縄高校総体 個人・団体ともに優勝
2011年 秋田高校総体 団体優勝
2012年 全国学生ヨット選手権大会 優勝
2013年 全国学生ヨット選手権大会 優勝
2014年 全国学生ヨット選手権大会 準優勝
2015年 全国学生ヨット個人選手権 優勝
2016年 All Japan Youth Matchrace Championship 優勝

今回の大会ではAndy Fethers氏、Peter Gilmour氏など多くの世界の最前線で奮闘してきた選手と関ることができました。しかし、聞きたいことも私たちの英語では聞きれない部分も多くあり、語学力の足りなさを痛感しました。

マッチレースの経験値で言えば、学生マッチ、伊藤園マッチ等の国内大会をはじめ、国内屈指のマッチのベテラン、シエスタチームとの練習、メンバーの国際大会出場など、学連ヨットを卒業してからマッチレースを始めてから、練習を積んできましたが、今大会を通じて一番感じたことは「場数の少なさ」です。

各国の選手は普段から30フィートを超えるボートに乗り、マッチを練習する日々を過ごしています。今の自分たちに何ができるのか。時間、資金、環境をメンバーと相談し、次のチャレンジに向けて動き出していきます。

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メインセールトリマー 小倉隆寛
1994年8月9日生まれ、174cm/66kg、立命館大学4回生

経歴
2012年 国民体育大会山口国体出場
2014年 関西ミドルボート選手権準優勝、全日本ミドルボート選手権優勝、X-35全日本選手権準優勝、全日本ボードセイリング選手権団体戦8位
2015年 大学対抗&U25ヨットマッチレース5位、Nantes University Sailing Cup出場、Asia Pacific Student Cup出場、関西ミドルボート選手権優勝、全日本ミドルボート選手権準優勝、X-35全日本選手権準優勝
2016年 All Japan Youth Matchrace Championship3位、Matchrace Thailand出場

今大会、私自身はマッチレースでの海外レースは5回目、かつキールボート経験もチーム内で最も多いということもあり、ディンギーでは輝かしい成績を収めてきたもののまだこの分野での経験は浅い他のメンバーを、マッチレースやキールボートの面において全力で補うボートマネジメント、レースが問題なく行えるよう大会側やセーリング協会とのやり取りを綿密に行うチームマネジメントの2点に重点を置き取り組みました。

こうした役割を任され、責任を持って仕事を行う経験はセーリング面・人間面の両面において大きく成長させてくれたと感じております。

さて、この大会に出場して感じたことは、率直に「優勝したAUSはじめこの海外勢を相手に勝っていくためには、人生を賭けてヨットをする以外ないのではないか」という事です。

予選ラウンドロビン終盤では、入賞チームたちを相手に互角にレースし、先行してレース展開するところまではきましたが勝ち切れなかったというのが現状です。大会期間中チームはぐんぐんと成長し、非常に大きなやりがい・楽しさを感じましたが、「あと一歩」に大きな壁を感じたことも事実であります。

この壁を打ち破るためにも、出場が決定した1月末にオーストラリア・パースで開催されるWarren Jones Youth Regattaでは何としてでも足掛かりにある結果をと考えています。また、今後も継続してチーム一丸となり、より良い競技環境を構築すべくヨットに対して真摯に取り組んでいく所存であります。

まずは自分たちが何を目指すのか・どういった計画で活動を進めていくのか等を固め、全力で取り組んで参りますので、どうか皆様からもアドバイス・ご指導いただきたく思います。何卒宜しくお願い申し上げます。

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ヘッドセールトリマー 山下剛
1993年12月6日生まれ、178cm/72kg、同志社大学ヨット部OB

経歴
2010年 全国高校選抜優勝、近畿総合体育大会優勝
2014年 全日本インカレ準優勝、ナショナルチーム選考会5位
2015年 全日本個人インカレ6位、ナショナルチーム選考会4位
2016年 All Japan Youth Matchrace Championship 優勝、J/24世界選手権8位

まず初めに我々の今レガッタの挑戦を応援し、支えて頂けた全ての方々に感謝の気持ちを申し上げます。本当に、ありがとうございました。今回の大会で私の立場から感じたことをまとめます。

1. 大会初日、我々が宿泊施設に到着した時に驚いたのは体格の壁でした。そこにいたのは例えアジア系であったとしても75kgは少なからずあるであろう選手たちでした。

対する私たち日本チームは重くて75kg。チームの総合体重は全チームでワースト2位と言う現状でした。幸いな事に、艇種にも救われて強風下のクローズホールドであまりに大きな差を見せられるような事はなかったのですが、別の艇種だとどうだったでしょうか。海外選手は無駄のない学生の体付きでこの現状ですから、今後を見据えて各個人80kgを目標にトレーニングに励まなければなりません。

2. マッチレース技術の基礎の欠落。ルール然り、艇の裁き然り、タクティクス然り、ストラテジー然り、まだまだ学生ディンギーセーラーレベルを抜け出せていません。上記項目のどれか1つの欠点がレース中に露わになり、勝てたゲームも落としてしまいました。

例えば最後のイタリアチームのGaratti選手とのマッチ。2上マークを先行して回るも、回航後に過度なラフィングマッチを仕掛けて自分たちがペナルティを受けました。もったいないレースを今後しないように、1つ1つ課題をしらみ潰ししていきます。

3. どんな艇種でもすぐに最高のスピードを出せる事の重要性。私はFJ、470、J/24、Platu25、X35、J70、YAMAHA30といった艇種に乗ってきました。それぞれに個性があり、乗るたびにその艇のベストをヘッドセールトリマーというポジションから引き出そうとしますが、毎度その個性に困らせられます。

今大会で使用したFoundation36は大型艇の割には軽風域においてスピネーカーにパワーをしっかりと持たせないと、スワンリバーの平水面でもすぐに止まるなどの一面を見せてくれました。こうした特徴をすぐにつかめるように感覚を研ぎ澄ます事や、艇の下調べでどんな特徴があるかを予測できるようなセーラーになりたいと思いました。

私たちの挑戦は続きます。次戦は10月22、23日のオータムマッチ、そしてWarren Jones youth regattaを予定しています。今回の大会を必ず次に繋げられるように、しっかり反省し努力します。今後とも変わらぬ支援とご声援のほど、よろしくお願いします。

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バウマン 尾崎玄弥
1994年3月22日生まれ、177cm/74kg、甲南大学OB

経歴
2011年 全国高等学校選抜ヨット選手権大会優勝、近畿高等学校ヨット選手権大会優勝、全国高等学校総合体育大会5位、国民体育大会山口国体5位、国際420級JOCジュニアオリンピックカップ準優勝
2012年 420級アジア選手権大会出場、420級世界選手権大会出場
2014年 スナイプ級ジュニアヨット選手権大会優勝、ヨット西半球&東洋選手権出場

私は、今回バウマンを担当致しました。FOUNDATION36自体にも全く乗ったことがなく、キールボートもこのメンバーの中では一番乗艇回数が少なかった。そんな不安もある中、とりあえず初日の練習でどれだけつめられるか、そして、日々改善できる点はないか、を考え毎日レースに挑みました。

初日の練習前不安であったのではバウマンとしての役割の確認です。「バウマンはこの仕事をしていたらいいのかな」と自分で処理するだけでなく「メンバーにこの役割は自分がするから、このサポートはお願いします」と役割分担し確認しました。

次に、スピンアップの流れのスムーズ化、スピンダウンの流れのスムーズ化を意識しました。私自身このポイントがバウマンとして一番重要なポイントだと感じました。どれだけ早くスピンを張らまし、どれだけギリギリまでスピンを張ることが可能になるか、そのカギを握るのがこの瞬間だと感じました。

そんな中、一番悩まされていたのが、スピンダウンでした。必ず、回航中にスピンをしまう作業を行っていました。そこで、スピンダウンを始めるタイミングを早めるという考えもありましたがそうしてしまうと、早くにスピンをつぶしてしまうというロスが発生していました。

この課題は最終日まで持ち込んでしまいました。ですが、2日目の夜、チームとミーティングを行い、バウハッチの中でのスピンダウンを行うと今まで以上のスピードでスピンダウンを行うことができました。そして、最終日のメダルレースでは、オーストラリアのスピンアップの動画を収め、自分と全くスピンアップのスピードが違うことに圧倒されました。全身を使ってのスピンアップには練習が必要だと感じました。

今大会、学ぶことが多く個人としてチームとしてかなりレベルアップしました。海外チームのベストパフォーマンス、海外コーチからの指摘を受けれたことをとてもうれしく思っております。ありがとうございました。

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ピット 中川健太
1994年1月13日、176cm/75kg、同志社大学ヨット部OB

経歴
2012年 全日本個人インカレ優勝、全日本インカレ優勝
2013年 全日本インカレ優勝
2014年 全日本インカレ準優勝
2015年 スナイプジュニアワールド選手権6位
2016年 All Japan Youth Matchrace Championship優勝

今回のユニバーシアードを通して感じた事。
1. 海外チームに対してクルーワークの完成度が足りていなかった。
今回のレースでは海外の有力選手に相手に先行する場面もあったが、タックやジャイブ、スピンアップ・ダウンのクルーワークのミスでチャンスを逃す場面が多かった。私自身ピット兼テーラーとしてレースに臨んだが、慣れない船での動作ではミスが多く、船を上手くコントロールできていなかった。

スピン関連の動作に関してもまだまだ動作の正確性、およびスピードのアップが必要だと感じた。オーストラリアなどの上位チームは特にスピン関連の動作が素早く、クルーワークでのロスが少なかった。今後は今回手に入れた上位チームの動作の映像などを基に練習を積み、バウマンとのコンビネーションを向上させる必要があると感じた。

2. マッチレースに対する知識、経験が足りなかった。
私自身マッチレースの経験は3回と浅く、レース中相手の動きに対して自分たちがどうすればいいのかわからない場面が多かった。今後はメンバー一同、積極的にマッチレースに参加して経験を積むことでマッチレースに馴れ、知識や技を身に着けていく必要があると感じた。

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以上を持ちましてユニバーシアード総括レポートの締めくくりとさせていただきます。みなさまには、多くの応援をいただきましてありがとうございました。そしてこの大会をスタートとし、今後も続いていく私たちの活動を今後とも応援いただきますよう重ねてお願い申し上げます。

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