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五輪選考、欧州国同士の熾烈な戦い。プリンセスソフィア杯4日目

3月31日、「第47回プリンセスソフィア杯」4日目。マヨルカ島パルマ・デ・マヨルカ沖は本日も風に恵まれ、ゴールドフリートのレースはスケジュール通りにおこなわれました。470級男子の土居一斗/今村公彦はメダルレース進出手前の11位へあがり、女子の吉田 愛/吉岡美帆はトップと差を詰め、6点差4位につけています。予選は残り1日。予選終了時点のトップ10艇が最終日のメダルレースへ進出できます。(BHM編集部)

第7レースで本大会2度目のトップフィニッシュを決めた吉田 愛/吉岡美帆。photo by Junichi Hirai

◎オリンピック・ヨーロッパ選考にみるアジア選考との違い

 プリンセスソフィア杯では、種目によってリオ五輪の欧州大陸枠選考、また国によって国内代表選考がおこなわれています。欧州選考となっているレーザー級などは、予選が終わった時点で(ゴールドフリートに残れず)敗退した国や選手がいて、当然のように後半戦出場をキャンセル。荷物をパッキングして帰途につくという場面も見られます。たったの予選4レースでオリンピックの夢が絶たれるとは、あまりにも悲しい状況ですが、それが現実です。

 リオ五輪では、五輪出場国選考方法に「大陸選考」が組み込まれました。リオ五輪の出場国選考は3段階に分かれていて、2014年世界選手権、2015年世界選手権、そして最終選考が6大陸でおこなわれる大陸選考になります。

 アジア大陸選考は、昨年の9月青島(470、ナクラ17、フィン)、今年3月アブダビ(レーザー、ラジアル、RS:X、49er、49erFX)となり、日本は、ナクラ17級、レーザー級に挑戦するも出場を逃しました。

 アジア選考と同じような大陸選考が、ヨーロッパ、オセアニア、アフリカ、北アメリカ、南アメリカでおこなわれています。このシステムは、世界の国、人種の差別なく出場のチャンスを与えるという、オリンピック精神にもとづきます。アジアは、このシステムの恩恵を受け、全種目に出場できます。

 選手層の違いから欧州とアジアの選考は同じようにはなりません。たとえば、アジア選手の少ないフィン級の選考には10艇が出場しました。しかしその内訳は、中国9艇、イラン1艇で、その結果、中国選手同士の戦いとなりました(余談ながら、イランの選手はその後、アブダビ選考でレーザー級に出場して敗れました)。

 広い視点でいえば、オリンピック出場のチャンスを世界各国に広げたいというワールドセーリングの意図は理解できます。しかし、地域によって、向き・不向きがあるのがセーリング競技の現状です。さらに、青島のフィン選考のように「極めて弱い風」のなかでレースがおこなわれたら、体重の軽い、極端な選手が選ばれてしまいます。

 この大陸選考システムがはじめて採用され、不具合も見えてきたように思えます。次回東京五輪でも同じような大陸選考が採用される、という話も聞きました。しかし、開催国となる日本は選考部分においては安泰です。すべての種目で出場権利を持つ日本は、選考に関わることはありません。

 ただ、白熱するヨーロッパ選考を傍観していて「これで良いのかな?」と感じたのは事実です。日本は関係ないからどうでも良い、という問題でもなさそうです。

本大会のレーザー級には、約2週間前、アブダビ・アジア選考で敗れた瀬川和正(米子産業体育館。26歳)が出場しています。悔しさはありますが、気持ちを早々に切り替え、東京五輪を目指してキャンペーンを開始しました。日本ナショナルチーム外だった彼は、援助のない自費活動をおこなっています。昨年までは欧州の「Sail Coach」というレーザー級トレーニング集団に参加して実力をつけてきました。
「アブダビ選考で勝ったらパルマに行こうと計画していました。負けてしまいましたが、(選考レースで)自分を信じて戦えなかった部分に悔いが残った。もう一度挑戦してみたい気持ちがあり、それなら東京の活動はいますぐにでも始めたほうがいい、と考えてこの大会に出場しました。今回はじめてシルバーフリートに入れました(これまでは下位グループのブロンズフリートでした)。次はもう1つ上のステージにあがれるようにしたいです。今年は5月の世界選手権を目標に活動します」
メダルレース出場手前まで追い上げた土居一斗/今村公彦。photo by Junichi Hirai
第7レースで7位を取って21位まで上昇した市野直毅/長谷川孝。photo by Junichi Hirai
パルマ沖には写真のような風速計が設置されていて、大会サイトでは各海面の詳細な風情報が掲載されています。photo by Junichi Hirai
今年はカイトボード種目は採用されていませんが、海岸線ではたくさんのカイトが飛んでいます。レースよりもファンセーリングとして世界に普及するカイトボードは東京五輪の候補種目になっています(カイトボードはジュニアオリンピックの採用が決まっています)。また、五輪うわさ話としては、ナクラ17級のフォイル化に続き、RS:X(ニールプライド社)のフォイルボードが発表され、海外ジャーナリストの話では、五輪ウインドサーフィンもフォイルに変わっていくだろうとのことです。photo by Junichi Hirai


大会4日目ダイジェスト。映像提供:レイラインメディア

◎第47回プリンセスソフィア杯
www.trofeoprincesasofia.org
◎バルクヘッドマガジン・フェイスブック写真集
PRINCESA SOFIA Day4 photo
PRINCESA SOFIA Day3 photo
PRINCESA SOFIA Day2 photo
PRINCESA SOFIA Day1 photo

第47回プリンセスソフィア杯 4日目成績
470級男子 77艇参加
ゴールドフリート
1. AUS Mathew Belcher / Will Ryan 11p
2. GRE Panagiotis Mantis / Pavlos Kagialis 29p
3. ESP Jordi Xammar / Joan Herp 20p
11. JPN 土居一斗/今村公彦 62p
21. JPN 市野直毅/長谷川孝 107p
シルバーフリート
48. JPN 高山大智/木村直矢 112p

470級女子 66艇参加
1. BRA Fernanda Oliveira / Ana Barbachan 24p
2. NED Afrodite Kyranakou / Anneloes Van Veen 26p
3. GBR Amy Seabright / Anna Carpenter 29p
4. JPN 吉田 愛/吉岡美帆 30p
33. JPN 山口祥世/畑山絵里 145p

レーザー級 参加152艇
ゴールドフリート
1. NZL Andrew Maloney 26p
2. NOR MILLSY Kristian Ruth 40p
3. CRO Tonci Stipanovic 42p
シルバーフリート
85. JPN 瀬川和正 191p

RS:X級女子 62艇
ゴールドフリート
1. RUS Olga Maslivets 22p
2. POL Maja Dziarnowska 25p
3. ITA Flavia Tartaglini 26p
シルバーフリート
53. JPN 伊勢田愛 140p

RS:X級男子 85艇
1. GBR Tom Squires 17p
2. POL Pawel Tarnowski 19p
3. FRA Thomas Goyard 24p
78. JPN 工藤 輝 230p

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