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中東アラブ諸国の華やかなセーリング事情

※サンケイビジネスアイ紙で連載していたコラムを紹介します。


1月、アブダビでおこなわれたダウ船によるレース風景。撮影 PAUL TODD/Volvo Ocean Race

コラム(81)
中東アラブ諸国の華やかなセーリング事情

 西アジア・中東アラブ諸国のセーリングが注目されている。近年、アラブ首長国連合、オマーン、カタール、バーレーンといった国ではセーリングの国際大会が頻繁に開催されるようになった。前回のボルボオーシャン世界一周レースの寄港地は、アラブ首長国連合のアブダビである。

 寄港地を誘致するには巨額の費用が必要とされ、都市は世界一周レースによる観光、広報、その他の宣伝効果をみこして名乗りをあげる。その効果が見込めない日本はこれまで立候補したことはなく、これまでアジア圏ではアブダビ、インド・コーチン、中国・青島、中国・三亜が寄港地に選ばれている。

 ヨーロッパで生まれ、王室や貴族から広まったヨットは、一見アラブ諸国と接点がないように思えるが、アラブの海には古い帆船の歴史がある。インド洋、アラビア海、ペルシャ湾周辺では、ダウ船と呼ばれる独特の木造ヨットが紀元前より走っていた。

 1本か2本のマストに大きな三角帆をつけたダウ船は、釘を使わず、紐やタールで組み立てるのが特長で、約500人乗りの大型船まであったようだ。交易のための運搬船として栄えていたが、いまでは同水域の富豪たちの豪華ヨットとして人気があるという。今年1月には全長18メートル以上のダウ船75隻が集まり、セーリングフェスティバルが開催された。

 また、アラブ諸国ではセーリング競技も盛んになってきている。アジア版オリンピックと呼ばれるアジア大会が2006年にカタール・ドーハで開催され、2010年にはオマーン・マスカットで2年に一度おこなわれるセーリング種目の国際大会、アジアビーチゲームズが開催された。

 また、大迫力のハイスピード・カタマラン(双胴艇)によるワールドサーキットにオマーンが参加しているし、今年2月には、ペルシャ湾の4カ国の7つの都市を転戦する、セーリング・アラビアツアーが開催された。

 イスラム圏では、女性の服装が制限されるため「セーリングは男性のもの」という現状がある。しかし、この風潮も少しずつ改善されていくのかもしれない。

 女性スポーツそのものを禁止しているサウジアラビアのような国は別にして、オーマンでは女性のためのセーリングスクールが開講して話題になっている。スカーフと帽子、長袖のシャツで肌を隠してディンギーを操る姿は見慣れないものだが、中東の女性セーリングははじまったばかり。今後、イスラム圏から多くの女性セーラーが登場することを願いたい。(2012.2 文/平井淳一)

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