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【コラム】ヨットレースにおける運営弁当について考える

 東京オリンピックのニュースが、毎日聞こえてくるようになりました。その前にリオ五輪が待っていますが、しばらく2つのオリンピック計画が同時に進行していくのでしょう。セーリング競技は、江の島ヨットハーバーで開催されます。この流れを受け、江の島だけでなく全国で国際大会が計画されています。(BHM編集部)

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日本のヨットレースでは運営スタッフにお弁当が配られます。写真は韓国アジア大会で用意されていた選手、運営用のお弁当。立派です。photo by Junichi Hirai

 ところで、みなさん、ヨットレースの最中、何を食べていますか? 選手なら消化のよい、エネルギー補給率の高い食事を用意すると思います。ディンギーとクルーザーレースでは、乗り方も食べ方も違うので一概に言えませんが、編集長がクルーザーレースチームのボートマネージャーをしていた時は、インショアレースならシンプルなハム系サンドイッチ(ファミマで売ってた硬いパン生地のもの)、エナジー系ゼリー、パワーバー的なものを用意していました。クルー用に毎回12人分を用意します。

 食事を考える際に最も重要だったのは、まずは「値段」。次に「保管」が効くもの。その次にカンタンに食べられ「ゴミ」にならない、ということでした。ゼリーとパワーバーは買い置きできるので、前もって大量に買っておきます。朝ハーバーに着くまで、コンビニでサンドイッチを買うのですが、これは前日に予約しておきます。

 飲み物もいろいろ試しましたが、レースの時は200mlの小さいペットボトルが使い勝手よかったです。500mlのペットボトルだと一度に飲みきれないんですよね。200mlなら飲み干したら片手でギュッと潰してキャビンの中に投げ込んでおけます。問題は、200mlのペットボトル飲料が、なかなか売ってないことでしょうか。

 で、どうして東京オリンピックの話題から、海の上の食事の話をしたのかというと…。編集長は、日本のヨットレース運営におけるお弁当文化に疑問を持っているからです。プラスティックパックのお弁当では、先に述べた「値段」「保管」「ゴミ」の問題を解決できないと考えています。

 レースに出場する選手の食事を考える必要はありません。各国の選手は好き好きに用意するでしょうから(ストレスのない食事を用意するのも勝つための要因です)。問題になるのは、多くの日本人が携わるだろう運営スタッフの食事です。

 世界のヨットレースを渡り歩いている編集長は、訪問する国でさまざまな「運営の食事」を見てきました。日本のレース運営は、お弁当文化が根付いています。プラスティックの器にメインディッシュ、色とりどりのおかず、ごはん、デザートまでもが区分けされています。陸上のお弁当をそのまま海上へ持ちだしたスタイルです。

 こうしたお弁当形式をとっている国は編集長が知る限り、あまりありません。想像してみてください。あなたがRIBボートに乗って運営をしている時、風がだんだん上がり、波しぶきが立ち始めました。そろそろお昼だと弁当をあけた途端、透明プラスティックのフタが風に飛ばされてしまいます。想像できるでしょう?

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海上運営でベストな食事はなんなのか? について考えてみます。海外では運営艇はマークボートなら多くて2人ぐらい。世界選手権でも日本よりはるかに少ない人数で運営しています。photo by Junichi Hirai

 他国のヨットレース運営は、どのような食事を用意しているのでしょうか。欧米ではサンドイッチが基本です。サンドイッチといっても日本のようにビニール詰めされた種類がたくさんあるパックではなく、かなり大雑把です。20〜30センチぐらいのフランスパンをざっくり半分に割って、そこにハムやチーズ、その他の具材が詰め込み紙やアルミホイルで巻かれています。ビニールは極力使われません。

 これも大きなスポンサーがつく大会になると食事内容が「豪華」になることもありますが、海上で食べるものに関しては、運営作業が優先されます。それほど大きな違いはありません。

 中国に行った時は不思議な昼食を手渡されたのを覚えています。ビニール袋に、あれはなんだろう、理解できない食べ物がたくさん入っていました。パン、くだもの、ゆで卵の燻製?、しなちくのパック?、あとは開けてみなければ分からない食べ物をごちゃごちゃ手渡されましたが、くだもの以外は食べられませんでした。

 「これはなるほど」と感心したのは、デンマークのヨットクラブです。ここでは、運営用の昼食は用意されず、ヨットクラブの厨房に用意された食材で、運営スタッフが各々勝手に昼食(サンドイッチ)を作って、持っていくというもの。1個作る人がいれば、2個の人もいます。具材が用意されていれば、サンドイッチを作るのに5分もかかりません。好きな分を自分で作って持っていくというスタイルは、とても合理的だと思いました。

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これはスペイン・プリンセスソフィア杯のランチ。アルミホイルで包まれているのがポイントで、食べ残しも包み直せるし、食べ終わったら潰してコンパクトに。すっきり。photo by Junichi Hirai

 逆に「これはよくない」と思ったのは、昨年の韓国仁川で開催されたアジア大会です(一番上の写真)。韓国は日本と同じくお弁当文化です。たぶん日本の国体と同じように契約したお弁当業者さんが届けてくれるのでしょう。毎日、選手と運営用に大量のお弁当が用意されていました。

 マリーナのアチコチに「お弁当は午後2時までに食べてね」という張り紙が貼られていました。食べ物は保冷ボックスに入れられていますが、暑いマリーナでは賞味期限が早く、食中毒を招きかねません。実際にアジア大会期間中、サルモネラ菌が検出されたというニュースもありました。

 もうひとつの問題はゴミです。仁川マリーナ屋内の一角がゴミ捨て場となり、毎日大量のゴミと空き箱が残されていました。当然、お弁当のパッケージが大きくなるほどゴミは大量に出てきます。日本でも同じようなことがおこるかもしれません。

 セーリングは環境にやさしいスポーツと言われています。しかし、編集長は、日本は海外に比べると、その意識はまだまだ低いように感じています。海の汚染や環境問題について詳しく知っているわけではないので偉そうなことを言えませんが、セーラーとしてゴミを出さない工夫ぐらいはできそうだ、と考えています。みなさん、いかがでしょう?

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今春、OP級ナショナルチーム選考で訪ねた江の島ヨットクラブジュニアでは、秋に開催される全日本OPの準備として運営弁当について考えていました。パック(ジップロック)に入れることでコンパクトになり運営作業を邪魔しない食事ができます。夕方のミーティングでランチについて意見をもらい翌日改善。すばらしい!photo by Junichi Hirai

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編集長が一番驚いたヨットレースの運営弁当は、冬の蒲郡でいただいた重箱に入ったカツ丼です。できたてのホカホカが届けられました。地元の人たちの心意気が伝わるお弁当でした。photo by Junichi Hirai

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