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メルジェス32ワールドを分析する(2)

◎オーナーによるオーナーのためのフリート

 『オーナーイズム』。このような言葉が正しいのかわかりませんが、メルジェス32世界選手権を取材していちばん感じたことです。このクラスは、オーナーが楽しむために作られたクラスであり、大会はオーナーのために開催されるもので、ヨットレースはオーナーの腕を競う場、ということ。つまり、すべてはオーナーのためにある、というムードを強く感じました。(BHM編集部)


メルジェス32フリートは、オーナーが主役であるということが最大の特長といえます。photo by Junihchi Hirai

 オーナードライブのキールボートでは、共通して、脇を固めるプロフェッショナルクルーの存在があり、各チームは必ず、プロセーラーを要所に配置します(その多くは、タクティシャン、トリマー、メインセールトリマーのポジションです)。彼らは、日当800〜2000ドル以上で雇われるプロで、その肩書は、以前の記事で述べた通り、五輪メダリストやアメリカズカップセーラーがほとんどです。

 たとえば、今回のワールドで優勝した〈Samba Pa Ti〉のタクティシャンは、北京五輪レーザー級金メダリストであるポール・グッディソン。彼だけでなく、五輪に関係する選手は、五輪活動資金を捻出するために、こうしたキールボートチームに参加し、また、将来のキャリアとして世界で活動するオーナーや選手と関係を築いています。

 また、バスコ・バスコット、キャメロン・アップルトンなど今をときめく世界的に有名なタクティシャンは、シカゴ・FARR40ワールド、メルジェス32ワールド、クロアチア・RC44ワールドと三週連続で開催されたビッグイベントを転戦していました。トリマー系のプロセーラーも同じで、プロのグループは同じような日程で、似たようなフライトスケジュールでヨットレースを転戦するという仕事行程ができあがっているのです。まるでプロゴルフのツアーのように。

 プロ以外の4名については、アマチュアとはいえ、玄人はだしのグループ1セーラーを集めています。このアマチュア枠のなかにはサンデーセーラーもいますが、プロ予備軍が大多数。ようするに、オーナーはプロジェクトマネージャーにチーム構成を含めて依頼し、彼の指揮下におかれる、使い勝手の良い若手プロ予備軍がチームに合流するという流れがあります。

 アマチュアである彼らも、わずかながら報酬を得ている場合もありますが、知名度、実力(ここでいう実力とは、セーリング技術だけをさすものではありません)がないことから、アマチュア枠として認定されることが多いようです。もちろん正式にISAFクラシフィケーションの認定を得ています。

 つまり、メルジェス32フリートの場合、オーナー1名+プロ3名+アマ4名といっても、オーナー以外は「失敗のない」プロ集団が乗り込んでいるといっても言い過ぎではありません。ドライブを担当するオーナーは、惜しむことなく費用を使い、サポートを完璧に固め、ストイックなまでに自身のセーリングに専念する。メルジェス32のヨットレースは、このようなベースがあります。

「このクラスは楽しいけれども、お金がたくさん必要だよ。一部のクレイジーなオーナーが、とんでもなくお金をかけている。そうしたことにチャレンジしたいオーナーなら、挑戦する価値はあるんじゃないかな」(ケン・リード)

(つづく)


出場33チーム中20チーム以上が、コーチとサポートボート(プロテクターの見本市のようでした)を用意していました。〈ARGO〉のコーチにはデイブ・ウルマンが担当したり、サポート陣も有名どころが勢揃いです。またほとんどのチームはショア専門のボートマネージャーがいて、ボートの整備も完璧でした。メルジェス32は、このように一大キャンペーンになっています。photo by Junichi Hirai

バルクヘッドマガジン・メルジェス32世界選手権特集
2012メルジェス32世界選手権写真集

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