Loading

アメリカ東海岸セールニューポートを訪ねて

 昨年J/24世界選手権に出場し、アメリカ東海岸のトレーニング基地「セールニューポート」を訪ねた、JSAFキールボート委員会・中山遼平さんのレポートを紹介します。セールニューポートはロードアイランド州の公共施設で、ジュニアから大人までのセーリングスクールや、キールボート、ディンギーの国際大会が開催されるセーリング基地。無駄なものはなく、必要十分な施設を備えているのが特長です。(BHM編集部)

15.02.23_IMG_0816
国内で同じような施設は思い浮かびませんが、セールニューポートのようなセーラー視点の実用的な施設があれば、もっとセーリングが身近になっていくかもしれません。セールニューポートでは、ハーバー利用、セーリングスクールだけでなく、コーチング指導(コーチ育成)もおこなっているようです。(BHM編集部)

『米国「セールニューポート」視察レポート』
 文・写真/中山遼平 JSAFキールボート強化委員会

 2014年9月、アメリカで開催された「J/24世界選手権」に出場するため、ロードアイランド州ニューポートにある公共ヨットハーバー「セールニューポート(Sail Newport; Rhode Island’s Public Sailing Center)」を視察及び利用しました。

 隣接するニューヨークヨットクラブが、厳格な会員制により成立している一方、セールニューポートはキールボートやディンギーなど様々な艇種、文字通り老若男女を問わない普通のセーラーに広く使用され活況を呈していました。

15.02.24_02
セールニューポートとニューポート湾の地図

1.ハーバー環境
・パブリックスペースである州立公園(Fort Adams State Park)の中にあり、公園内の城塞跡を訪れる観光客やハーバー背後の芝生スペースでスポーツを楽しむ人々が多く見られた。ハーバーが日常的な施設としてボーダーレスに社会に受け入れられ、また景観に溶け込んでいるのが印象的だった。

・100台程度の無料駐車場には、車両のみならず艇や運搬用のトレーラーが置かれ、スペースを利用し大会計測も駐車場で実施された。この他にも200台位の無料駐車場がある。

15.02.24_IMG_0712
湾内に係留されるセールボート

・海上には、クルージング艇を中心に100艇前後が錨泊していたが、大会期間中は陸上の艇整理のため錨泊艇が増加していたとのこと。

・公園の奥には様々なイベントに利用可能な空き地があり、大会のレセプションは特大型のテントを設営し、カジュアル形式で行われた。

15.02.23_IMG_0569
J/24ワールドで立ち並ぶショップ

・公園内に商業施設はないが、大会期間中はヘリーハンセンやハーケンなどウェアやギアの移動ショップが、またレセプション時には出張ピザ屋などが出店し、ビジネスチャンスが生まれていた。

・セールニューポートでは、同じ9月に「J/70世界選手権」が開催されるなど、クラスにこだわらず多くのチャンピオンシップが開催されている。

・個人が所有しているキールボートはこのエリアでは保管されておらず、各々自宅などプライベートスペースで保管するか、ニューポート市内にある有料の保管施設に預け、利用する際にトレーラーを牽引し移動している。

15.02.24_IMG_0817
セールニューポートの受付建物は実にシンプル

2.ハーバー施設
・事務所は簡素な建屋であり、あるのは受付と必要最低限の機器程度であった。

・ディンギー用のかなり幅広いスロープ、ハーバー奥には3tクレーンと2tクレーンが1台ずつ設置されていた。係留用の桟橋はあるが、一時的な使用に限定され、大会期間中はレース艇及び運営艇がフルに使用することが可能であった。広さとしては、70艇のJ/24が(横舫いを取りながら)係留可能なものであった。

・陸上スペースはそれ程広くないが、駐車場を活用し一時的な艇置スペースを確保し、塩出し用の水道やセールを広げるための芝生スペースは十分あった。マストを抜くためのキールボート用ジグも設置されていた。

・J/24が入るサイズの艇庫があり、セールや備品の置き場として使用され、セール計測も艇庫で実施した。シャワー室が併設されていた。

15.02.24_IMG_0328
コーチボートやキールボートの上下架で必須の一点吊りクレーン

3.ハーバー運営
・10名程の職員が運営に携わり、元J/24世界選手権チャンピオンであり、プロセーラー ケン・リードの弟でもあるブラッド・リードがマネージャー(Exective director)としてハーバーの管理・運営を委任されていた。

・レース運営は基本的にボランティアスタッフが行い、レース運営以外にもセーリングスクールや体験講習会を開催していた。今大会には現地のJ/24フリートが全面的に協力。

15.02.23_IMG_0488
ニューポート湾内で練習するOP

・トレーニング艇はOPからJ/22まで複数艇ずつ用意されており、大会期間中もジュニアやユース世代のセーラーがコーチの指導を受けながら練習していた。こうした環境の下、年齢とともに自然と多様な艇種に乗り,その中で自分に合ったセーリングスタイルを各人が築いているということを実感した。

・(少なくともJ/24世界選手権では)大会スポンサーを募集しておらず、タイアップの商業的イベントなどは行われず、コンパクトかつ淡々と大会運営している印象を受けた。

・ハーバー経営のコスト削減、スリム化が経営の持続性を担保し、利用の活性化を生んでいると考えられる。

セールニューポート
http://www.sailnewport.org

======================================
わたしたちは走り続けるセーラーを応援します
BULKHEAD magazine supported by
リスクマネジメント・アルファ
ベイトリップ セーリング
ベストウインド
パフォーマンス セイルクラフト ジャパン
SAILFAST
ウルマンセイルスジャパン
ノースセールジャパン
フッドセイルメイカースジャパン
アビームコンサルティング
トーヨーアサノ
日本ORC協会
Velocitek
コスモマリン
Gill Japan/フォーチュン
JIB
一点鐘
エイ・シー・ティー
ファクトリーゼロ

CATEGORY:  COLUMNNEWS